すーぱーからしちゃんねる

からしがみたものをまとめたものです。

星組東京宝塚劇場『柳生忍法帖/モアー・ダンディズム』

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【なんかどうしてもムラに行きたい】

そんな時ってあるじゃないですか。ちょうど、3000万人来場者記念でなんか貰えるらしいと聞いて、翌日のチケットを手配しました。同じ考えのお友達と劇場で偶然に出会えて嬉しかったです(笑)
記念品にポストカードを貰って、お祝いの幕が掛かったおめでたいご挨拶も聞いて、ほくほくで帰ってきました。たまにはこういう日帰り遠征が必要な時があるんです。
ということで、1度ムラで観劇してからの東京公演です。

【期待】

忍法帖っていうくらいだから、こっちゃん(礼真琴)は忍者に違いない。と、割と直前まで思っていました。だってビジュアルも忍者っぽかったし、こっちゃんは忍者っぽいし!原作があると聞いていましたが、予習はせずに挑みました。
愛ちゃん(愛月ひかる)の退団発表に、涙目になりながら過ごしていたことを思い出します。愛ちゃんは絶対に1番大きな羽根を背負って、1番最後に階段から降りてきてくれると信じていたので。わたしは長い間ずっと宙担だし、愛ちゃんへの期待はとても大きかったんですよ。だからこそ、「愛ちゃんが大劇場に立つ最後の姿を観に行かなくちゃ」と思い立ったのかも知れません。愛ちゃんの最後の役がラスボスだと聞いて、期待は大きく膨らみました。上級生になって、敵役の凄みが出るようになっていた愛ちゃんの集大成を見なければ。

初演の、真矢ミキさんの『ダンディズム』が本当に大好きで、スカステの映像を何度も何度も何度も見ては、あの癖になる世界観の虜になっていました。『ネオ・ダンディズム』も良いけれど、わたしは初演『ダンディズム』派。今回の『モアー・ダンディズム』がどれだけ初演を踏襲したものになるかわからなくても、とても楽しみにしていました。初日のタイムラインを見て、心の中でガッツポーズをしちゃいました。

柳生忍法帖

3回観て、やっとお話を理解できた、ゆるい頭の持ち主で申し訳ない。何もわからなかった訳ではないのですが、ドラマを理解するのに時間がかかった。難解に受け取ったのは、ゆらの心の動きかなあ。どこで十兵衛のことを好きになったのかが読み取れず、クライマックスの展開に置いて行かれてしまった感。

でも、十兵衛先生はめちゃくちゃ格好良かったよ!ヒーローとはかくあるべしと思いましたね(CHを観た後だったから尚更)最後の「俺だけが弔ってやれる女がいる」とか、本当に格好良かった。こっちゃんの動きひとつひとつから目が離せなかった。腰を落として抜刀した時、どうしても期待に胸が高鳴るんですよね。動く前の一瞬のタメが格好いい。歌いながらの殺陣も、安定感があって格好いい。格好いい。それ以外言えない。格好いい。この公演はわたしにとって、遅れてきた礼真琴ビッグバンとなりました。こっちゃんの見方が本当に変わったよ。

ゆらは、前述した通り、ちょっとよくわからなかった。ヒロインが魅力的に感じられなかったのは残念です。

愛ちゃんの銅伯は、期待以上の迫力でした。長髪のカツラと髑髏柄の着物、人外感溢れるオーラ。どれを取っても惚れ惚れするような男役芸でした。愛ちゃんの、セリフがない時の目の芝居が好きなんですけれど、最後にそのお芝居も堪能できて嬉しかったな。悠未ひろさんがしていたような、悪役の目の芝居を愛ちゃんが受け継いでくれていることが嬉しかった。この男役芸を、今度は誰が受け継いでくれるんだろう。
黒髪の愛ちゃんも格好良かったな。あんなに長い髪で殺陣をしているのに、宙を舞う毛先の全てが美しくて、さすがだなあと思いました。
銅伯をラスボスとするなら、最後に成敗されて、もっともっと派手に倒されてほしかったですね。七本槍より先に倒されてしまうのは解せなかった。わたしが歌舞伎脳になっちゃってるのかも知れませんが。それだけ、愛ちゃんの最後の役に対する期待が大きかったのです。

堀ガールズは、セーラームーンみたいで超かわいかった。それぞれの衣装にカラーがあるのがいいよね!ちゃんと最後まで堀ガールズの復讐劇になっているのが良かった。それでも、十兵衛が主人公としてヒーローとして物語の中心に立っているのも良かった。

七本槍は、一人一人のキャラが濃すぎて。もうちょっとちゃんと見たかったです。みんなメイクも凝っていて、見ていて楽しかった。ちゃりお(碧海さりお)の「わしの目を見ろ〜〜!!」×2が面白すぎてツボった。キワミ(極美慎)のお衣装が桃太郎っぽくてツボった。あかさん(綺城ひか理)の客席に向けた拳法タイムにツボった。

大野先生の作品はいつもそうだけど、キャラクターが多くていいよね!できる限り多くの生徒に登場人物として活躍してほしいという気概を感じます。語り尽くせぬ。

【モアー・ダンディズム!】

■プロローグ
コーラスから始まる演出に鳥肌が立って、ワクワクして吐きそうになりました!映像で観たままの世界観。色彩。煌めき。そしてゴンドラに乗って登場するこっちゃん!!赤が似合う。第一声から心を掴むこっちゃんの歌声。両手を広げた時のトキメキが半端ない。ちょっと癖のある動きが、真矢みきさんを彷彿とさせて、男臭くて本当に格好いいのですよ。
ひっとん(舞空瞳)のキラキラしたソプラノも、こっちゃんの歌声とコントラストがはっきりしていて鮮やか。
もう、ここからは誰を観ていいかわからず(みんな見たいんだよ!)オペラグラスが迷う迷う。こと愛せおのトリオの場面がめちゃくちゃ好きでした。
わたしがよく「宝塚の独特のビート」と言っているものは、まさにこのビートのことを言っています。ベースが8部でリズムを刻んでいて、どっしりと頭にアクセントを置いた手拍子がハマるビートのことです。このビートに乗って、手拍子してる瞬間が、人生のうちで1番幸せな時間。

■薄紫のとばりの向こう
初見では「愛ちゃんの歌をこんなに聴かせてもらえるなんて!」と感激しっぱなしでした。決して歌の人ではなかったと思うんですよ。その愛ちゃんに、歌でこんなに魅せられる日が来るとは。
ゆったりと銀橋を歩いて、ひとりで劇場の空間を埋め尽くせるくらい、大きな男役さんになったことにも感激していました。ロマンチックな、男役らしい薄紫色のお衣装も素敵だった。

■ミッション
星組のダンスのエネルギーは、とても熱くて「ああ、星組観てるなあ」という気持ちにさせてくれるから大好き。こっちゃんとひっとんが、場面をぐいぐい引っ張っているのも、観ていて気持ちが良い。今回のレビューも良かったけれど、こういう、踊りまくり!なショーも観てみたい。

■ビューティフル・ラブ
みんな可愛くって、誰を見るか迷っている間に、場面が終わってしまう。いつもの残念なパターン(笑)
大体、くらっち(有沙瞳)か、あまね(澄華あまね)ちゃんか、下手のブルーのドレスの娘役さんを観てました。大きなツバ広帽子って、乙女の夢だよね!

■キャリオカ
こっちゃんの真矢みきリスペクトが炸裂していて、初演を見ていないのに、飛び上がりそうになるくらいに喜んだよ!インテンポよりやや遅れた、タメにタメた癖になる歌い方をしてたの。それが男クサくて本当に格好良いんですよ。黒燕尾の男役と、シンプルなドレスの娘役が勢揃いする、エレガントな場面なのに、パッションを感じる。これが星組パッションというやつなのですね!

■ゴールデン・デイズ
愛ちゃんとの一方的な思い出が、走馬灯のように脳裏に駆け巡ってくる場面。『モンテ・クリスト伯』の新人公演、『翼ある人びと』のリスト、『王妃の館』の金沢さん、A motionの思い出、『神々の土地』のラスプーチン、『天は赤い河のほとり』のマッティワザ、『WEST SIDE STORY』のベルナルド、『不滅の棘』のエロール……。想い出がいっぱいで、前楽では輝く愛ちゃんを見てズルズルに泣いてしまいました。ということで、この場面では愛ちゃん様しか見ていなかったですね。くらっちを見つめる眼差しの貴公子っぷりに惚れ惚れしました。

■ハード・ボイルド
命がいくつあっても足りないよ。守ってくれよオタクの命。どこを見ても刺激が強すぎて赤面しちゃうよ。
こっちゃんは歌のテクニックの引き出しがあんなに多いのに、歌のうまさでうたている感じが一切ないのが本当に素晴らしい。今回の公演で、礼真琴の魅力に(わたしが)覚醒しました。これからは、もっとちゃんと本気でこっちゃんの歌を聴こうと思いました。
前楽では、噂の前髪サラサラな礼真琴を拝むことができまして、噂通りのセクシーさに悲鳴をあげそうになりました。悩ましげに前髪をかき上げる仕草がたまらなかった。これが礼真琴のダンディズムか!!国宝に指定した方がいい。
伝統ある振付も、本当に格好良くて、誰を見ても赤面しちゃうくらい色気が迸っていて、ハイカロリーな場面でした。なんだあの腰遣い!特にあかさん!けしからん!国宝に指定しろ!

■ザ・ロケット!
この主題歌とても素敵なのに、あんまり使われていないんだよね。もうちょっと聴かせて欲しかったな。クルクルファンタジー

■テンプテーション!
男役のターバン姿は、宝塚ならではのスタイリングで素敵ですよね。個人的には、他の場面の味が濃すぎて、箸休め的になってしまった。
前楽では、銀橋にずらりと並んだ時に、愛ちゃんがオペラなしでも確認できるくらいに特大のウインクを、2階席に飛ばしていたのを確認して、たいへん感動しました。あれは忘れられない。

■ラ・パッション!
せお(瀬央ゆりあ)って、めちゃくちゃ景気がいいよね!なんか、見ているだけで運気が上がりそう。金運とか上がりそう。手拍子してるだけで宝くじ当たりそうだもん。
ロマンチックレビューは、ひとりのスターがたっぷり歌ってくれるのがいいですね。

■アシナヨ
泣きすぎて記憶が曖昧。
でも、「悲しさ」とか「さみしさ」よりも、しみじみと「いいなあ」と思わせてくれるトリオでした。こっちゃんと愛ちゃんの関係性が見えて、その中でひっとんがキラキラ輝いていて、本当に心から「いいなあ」って思ったんです。
お衣装も素敵だった。三人の青が印象に残っています。

■パレード
こっちゃんが降りてくるのを待っている時の「モアー、モアー」っていうコーラスのアレンジが超大好き。照明が薄暗くなって、少しメランコリックな雰囲気があって、ノスタルジックな感傷に浸れて、オルガンの音が聞こえてくる瞬間の多幸感はまるで麻薬のようでした。

【前楽クリスマススペシャル】

前楽は12月25日で、ちょうどクリスマスでした。マチネは友会貸切公演だったので、友会関連のアドリブが多かったそうですが、ソワレはクリスマススペシャルでした。
クリスマスバージョンのレポは、レポが上手な人にお任せして、わたしが如何に星組さんに狂わされたかを記しておきたいと思います。
こっちゃんがゴンドラから降りてきて、頭上にサンタ帽を確認した瞬間に「わはは」と声が漏れ出てしまったよ。ひっとん(サンタ帽)愛ちゃん(トナカイの耳)せお(トナカイの耳)が出てきた瞬間、可愛すぎて客席で暴れた。隣に座っていたお友達ごめん(笑)
ハードボイルドでこっちゃんが出てきた瞬間、客席がザワついてたけど、最初よくわかんなかったよ。白いハットにクリスマス浮かれポンチメガネがついてたよ。最後の掛け声で「受け取って…」と吐息混じりに決めてくるこっちゃんに悲鳴が出そうになったけど、我慢したよ。「グフォ」みたいな声は出た。
ラ・パッションCR瀬央ゆりあは、劇場中の「何かやってくれるに違いない」という期待を背負いながら、景気良くハイテンションに登場。特にアドリブもなく歌い出したので「あれ?何もしないのかな」と案ずる客席の期待を上回ってくるのが瀬央ゆりあという男役である。間奏でジングルベルをぶっ込み、歌って踊るという期待を上回るパフォーマンスに株価は右肩上がりだった。
しあわせで、楽しすぎて、ありがたすぎて、ずっと『5500円しか払ってないんですけど、良いんですか!?」って思いながら見ました。最高のクリスマスになりました。

【2021年観劇納め】

本年の投稿は、この記事が最後になります。今年も、たくさんの楽しい!しあわせ!をブログに残せました。その思い出を、アクセスしてくださった方と共有することが出来て、嬉しかったです。
来年も、たくさんの楽しい!しあわせ!をこのブログに残せますように。そして、来年も『すーぱーからしちゃんねる』をよろしくお願いいたします。

東京建物Brillia Hall 『プロミセス、プロミセス』

【期待】

ハコの評判が悪すぎた。柿落としから暫く経っていると思うのですが、ハコの評判が悪すぎて、宝塚の作品が掛かっても、なかなか足が向かなかった。池袋は家からも近く、慣れ親しんだ街なのですが、とにかくハコの評判が悪くて行く気になれなかった。そして、回ってきた宙組の番。ブリリアが嫌すぎて、ドラマシティまで遠征してしまおうかと思ったのですが、チケットが取れなくて、わたしの初めてのブリリアホール宙組に捧げる事になりましたとさ。駅とアニメイトが近くて良いよね。

実はキキちゃん(芹香斗亜)の主演作を観るのは今回が初めてです。『群盗』を観ていないので。じゅっちゃん(天彩峰里)のヒロインも今回初めて観ます。新公のヒロインは『天河』で観たよ。
原作映画は観ていません。ポスタービジュアルの景気が良くて元気がいい感じに期待が高まりました。近頃、おしゃれな演出が印象的な原田先生と、お気に入りの生徒が多く振り分けされているので、慣れ親しんだ街に宝塚歌劇が来ていること、タカラジェンヌがいることに胸躍らせながら、クリスマスシーズンを迎えた繁華街を歩いて、劇場へと向かいました。

【全体像】

コメディだと聞いてはいたけれど、予想の5倍は笑った。最後の方なんて、笑いすぎてちょっと泣いてた。客席も、お愛想のクスクス笑い、ではなくて、結構ガチの笑いだったと思う。
今作は、ドラマシティで先に上演された作品です。西と東とでは笑いの文化が違うので、しっかりチューニングを済ませた絶妙な間とテンポだったんだろうな。あんなにどっかんどっかん湧いてる劇場空間、こちらではなかなか経験できない。東京の人は気取っているので(※個人の感想です)あんなにどっかんどっかん笑いが起きる、一体感を感じられる劇場空間を作り上げるのって、珍しいんですよ。アメリカのシチュエーションコメディを見ているような気分になった。笑い泣きするレベルに笑った。キキちゃんありがとう(笑)
セットがとても印象的で、高いところにいるスターをずっと見上げているのが新鮮でした。あの位置にドアがあるから更に笑えたんだと思う。エレベーターのランプも。あれが光ると何かが起きる予感がして、余計に笑えるんだよね。笑いに貢献するセットってすごいな(笑)1階席だったので、上の方にあるベッドルームが隠れちゃってよく見えなかったのはもどかしかったな。逆に、何度もいろんな席で見られる人は、見る度に発見があって面白かっただろうな〜。
衣装もビビッドで、目が楽しかった。実は不倫もので、結構リアルでエグい話だったかと思うんですけれども、色彩の鮮やかさで、ポップに受け止めることができました。
音楽は、音響環境が良くなくて、あんまり印象に残ってない。悔しい。でも、クリスマスシーズンにクリスマスソングを聴けるのはしあわせだなって思ったよ。そして、あのタイミングで流れる”オクラホマミキサー”にはめちゃくちゃ笑ったよ。
ラストには、ほっこりした気持ちになって、このシーズンに観るミュージカルとしては、最高だなって思いました。ヒロインがしあわせになって終わるのがいいよね。

【キャスト】

・チャック/芹香斗亜
冒頭のお目覚めシーンで、髭を剃っている姿にめちゃくちゃ萌えたんですけど!!男役って髭は生えてないか、生え揃ってるか、ボーボーかで、髭の存在はあるんだけど、剃られるものとして存在されると急にこんなに萌えるんだ!!自分の性癖が非常に気持ち悪いですね(笑)
キキちゃんの笑いのセンスには、絶対的な信頼を寄せているのですが、今回も裏切られなかった。キキちゃんの笑いの何が好きって、やりすぎないところが好き。めちゃくちゃ笑えるんだけど、とてもお上品なのよね。もっと笑わせようと思えば、もっと出来るところを、作品の雰囲気やキャラクターを壊さないところを見極めて調節している、そのセンスが好き。
フランに全然名前を覚えてもらえないチャック、妄想の弁解をするチャックが突然客席に語りかけるところが、ドキッとして、一体感を生んでいたように思います。よくあるパターンだと思いますが、キキちゃんのお人柄もあって、とても楽しかったです。
あれだけのセリフ量を、軽妙に展開してゆくキキちゃんのエネルギーに、元気をいっぱいもらいました。

・フラン/天彩峰里
感情移入しすぎるとしんどいなあと思いながら見ていましたが、湿度の低いカラッとした役作りで、楽しく観ることができました。特に、キキちゃんと並んだ時のポップさが好きです。
逆に、シェルドレイクとの場面では、終始ジトっとしていてたまらなかった。『夢千鳥』で壮絶な愛憎劇を魅せたコンビが並ぶと、そういう雰囲気が出ちゃうものなのでしょうか(笑)他の不倫カップルにはない雰囲気で、遊びに振り切れない、しんどい空気が漂っているのが良かったです。
お衣装もどれも可愛くて素敵だったな!

・シェルドレイク/和希そら
そーちゃんの所作のひとつひとつが格好良すぎて、匂い立つ男らしさに、オペラが上がりっぱなしでした。こんなに大きいお芝居で、男らしくていやらしい役が出来る様になったのね…!こんなそーちゃんが見られて、わたしは幸せだよ。
クズ野郎のお役なのに、男役しぐさがいちいち格好良くって悔しい!エエ声なのも悔しい!原文が英語ならではの、ちょっと周りくどく感じられる言い回しも、スマートに聞こえる!
結構グッと来たのが、家庭の中で夫とお父さんしているシェルドレイクでした。なかなかエグい姿だったと思うんですけれど、彼の卑怯さとか弱さが見えて、人間臭くて格好悪くてよかったと思うんです。他の不倫野郎たちと比べて、シェルドレイクには弱さとか闇とか、格好悪さが滲んでいて、でもそこがなぜか格好良いっていう、ちょっと複雑な構造のキャラクターが魅力的でした。

・Dr.ドレファス/輝月ゆうま
間が素晴らしすぎてめちゃくちゃ笑わされた。キキちゃんと一対一のお芝居が多かったと思うのですが、本当に今回が初共演!?と思うほど息ぴったりだった。そして、まゆぽんは宙組にいても大きいんだな。長身のまゆぽんが、背中を丸めて初老の医師を演じているのが愛らしくて、もちろん歌も素晴らしくて、専科デビューおめでとう!って思ったよ。

・ミス・オルスン/瀬戸花まり
元不倫相手が今のお相手にちょっとした嫌味と警告を伝えにくると思いきや、しっかりスマートに復習を果たしにくるお役で、せとぅーがめちゃくちゃ格好良かった!このキャラクターがいるから、スカッとした気持ちでフィナーレを迎えることが出来たと思うよ。

・カール/マージ/留依蒔世
苦しくなるくらいに笑った。あーちゃんの存在感ほんっとにスゴかったな。あの場面、勢いがスゴすぎて薄ぼんやりとしか覚えてない。たいへん御御足が綺麗でござった。手足が長すぎて動く度面白いのも、本当にどうにかしてほしかった。「フクロウのコート」って、池袋に掛けたギャグだったんだろうか(笑)
急遽の代役で、二役になったことによって生じたミラクルにも、めちゃくちゃ笑った。
あられちゃん(愛海ひかる)のマージも観てみたかったなあ。元気になって、帰って来るのを待ってるよ!

・ドービッチ/若翔りつ
おじさんを伸び伸び楽しそうにされていて、お髭が可愛かった。重役四十奏うますぎ。
フランとシェルドレイク以外の不倫カップルは、遊びを遊びとして割り切って楽しんでいる感じがして、その対比が良かったです。ドービッチとシルヴィアは完全に遊びで、部屋が借りれなくても諦めなくて、懲りてない感じもあって、それがアホ可愛いのよね。最後、あのタイミングで出てこられた時は、姿が見えただけで大爆笑してしまった。
バーの場面のオネエは、もっと観察していたかったけれど、目が足りなくて間に合わなかった。あと3回はみたかった。悔しい。

・シルヴィア/花宮沙羅
モンロー風のビジュアルと、動きがいちいちプリプリしていて、表情もコロコロ変わるし、目が離せなかった!可愛かったーー!!アホカワイイ雰囲気なのに、「1番高いメニューを頼むのよ!」とあざといセリフもあって、目尻が下がりっぱなしだったよ。
アパートのドアの前で大暴れしている沙羅ちゃんも最高だった。この場面は全てのタイミングが神懸かっていて素晴らしく、最高に笑った。
バーの客の時の黒いドレス姿が素敵でした。背中が綺麗で格好良かった。

アンサンブルに徹していたけれど、真名瀬みらくんはとても目を引く格好良さだった。特に咥えタバコのバーテン役は、真ん中のお芝居が目に入らなくなるほど素敵だった。あまりにもイケ散らかしているので、両の手が震えたよ。

【劇場】

新しい劇場に初めて行ったので、わたしも偉そうに劇場のレビューをしてみたいと思います。
いわゆるドブ沼席ではなかったと思う。1階の10列目くらいの下手ブロックで見ました。聞きしに勝る音響の悪さでびっくりした。これは、座った席が悪いのかも知れない。スピーカーから一音聞こえた段階でいろいろと悟りました。普段口跡が良い生徒のセリフすら聞き辛く、学校の体育館レベルの音響に「これ本当に令和に出来た劇場なの」と白目を剥きたくなった。生徒の口の動きとスピーカーの音に微妙なずれがあって、演者もしんどいんじゃないかなあと思った。
視界は悪くなく、椅子の座り心地もまずまず。足音が響く通路と階段が安っぽく感じられましたが、KAATとかもこんな感じなので、最新の劇場の仕様なのかな。
家から近いのがいい(東宝に行く半分の所要時間)と思う埼玉県民。
最初は「池袋みたいに汚い街に、宝塚が来るなんて、タカラジェンヌが来るなんて」と思ったりもしました。でも、「東京の中でも、あんまり気取っていない街で見る宝塚歌劇」も、悪くない。

雪組東京宝塚劇場『CITY HUNTER/Fire Fever!』

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CITY HUNTER

シティハンターをギリギリ知っている世代なので、原作への思い入れはほとんどありません。燎と香と海坊主くらいしか知らない。一時代を築いた作品って言う認識はあったけど、絶対に宝塚歌劇に合わないだろうという不安と、斉藤吉正演出という不安(すみれコードで上手くタカラヅカナイズしてくれるだろうという期待すら薄かった)で「絶対に観に行かない」と思ってました。

でも、観に行った。雪組が好きだから。さきちゃん(彩風咲奈)、きわちゃん(朝月希和)のことが好きだから。「さきちゃんが『Get Wild』を歌うなら観に行こうかな」と、「えいや」と決心してチケットを取りました。観に行って良かったか、については、うーん。笑顔で良かったとは言えません。

 


主人公が女の尻を触らなくては『CITY HUNTER』の世界観を表現することが出来ないのであれば、この作品は宝塚歌劇で上演するべきではなかったと思います。むしろ舞台化するべきではなかった。男性キャストで見せられた日には、芝居とは言え非難囂々大炎上だったと思うけれど、これは宝塚歌劇だからこそ、あまりにもグロテスクだった。客席にお尻を撫でられてつらい思いをした人がいるかもしれないとは、想像しなかったんだろうか。

途中で主人公のことを「気持ち悪い」と思ってしまった。トップスターが演じる役を「気持ち悪い」と思いながら舞台を見る時の気持ちって、それは宝塚歌劇がお客に提供するものとしては、不正解な上に大失敗なのでは。主人公だけでなく、2番手の役も女の尻を触っているのを見て、泣きたくなりました。全然格好良いと思えなかった。演じている生徒たちはみんな大好きなのに。つらかった。

 


コメディとしてもダダすべりして冷え切った劇場の空気感が否めず(楽しく面白く観ていた方もいると思いますが、これはあくまでわたしの主観的感想です)、劇中何度も時計を見てしまいました。笑えないつまらなさ。トンチキと称して愛でるまでもない。

 


Get Wild』のイントロが流れた瞬間は、気持ちが上がりました。宝塚のオーケストラが『TM NETWORK』の曲を演奏している、そしてトップスターが歌っているっていうだけでテンションが上がりますね。ひとつの時代を輝かせた名曲の力って、やっぱりすごい。

 

 

 

【Fire Fever!】

ショーは楽しかったよ!ショーだけ観たかった。

さきちゃん、きわちゃん、あーさ(朝美絢)の個性がよく見えて、お披露目感があって、すごく楽しかった。

さきちゃんはずっと格好良かった。銀橋がめちゃくちゃ似合う。銀橋を歩いているときの輝き、センターで踊っているときの輝きが半端なかった。いつの日か客席に降りれる日が来たら、まぁ様(朝夏まなと)がやってたような、銀橋に足掛けをやってほしい。それに悲鳴を上げたい。所々で手拍子を先導しているのが凄く良かったです。気持ちの距離がぐんと近くなる。

きわちゃんは格好良くてかわいかった。フラメンコでセンター張っているのが格好良かった!デュエットダンスの時の髪飾りが、ゴージャスで素敵だった。さきちゃんと並んだときの輝きが眩しかった~!

さききわのデュエットダンスは見応えがあって、ショーをフルコースに例えたなら、それはゴージャスなデザートって感じで、ものすごく満たされる感じがあったよ!ふたりともお互いの見せ方が上手いし、お衣装の着こなしもファビュラス。もっともっとふたりのデュエットダンスが観たい。これからも楽しみ。

2番手羽根を背負ったあーさの無双感が素晴らしかったな。もっと大きな羽根を背負っている姿を見るのが楽しみになった。気が早いけれど!

群舞ではあやなちゃん(綾凰華)ばっかり見ているので、視界がめちゃくちゃ狭くなる。ロイヤルみのある男役さんが大好きです。好きなタイプなんです。ソロでガシガシ踊る縣千を見て「縣千はすげえなぁ」としみじみ思っていました。身体の使い方が既にトップスター級。とても大きく見えるし、空間が縣千で埋め尽くされていた。

あすくん(久城あす)がいっぱい歌ってたのがとても嬉しかったです。あすくんの歌が好きなんです。

あゆみ姐さん(沙月愛奈)がセンターで男役を引き連れて踊っているのを見て、「これであゆみ姐さんを見るのは最後だな」と思うと、とても寂しかった。わたしが宝塚を見始めた時から活躍されている娘役さんだったから。

宙組贔屓としては、夢白あやちゃんが芝居でもショーでも活躍されていて、嬉しく思います。見た目に華があって、歌声には芯があって、声がよく目立つ。

 


あーさの場面は、ムラではいろいろと評判が悪くて改編されたみたいだけど、なにがしたいのかがよくわからん場面だったな。わっかのドレスが並んだときのうれしさはある。

特に印象に残った場面は、若手が二人ずつピックアップされて踊り繋いでゆく場面。素晴らしかった。下級生の熱気と、舞台から放たれる喜びのエネルギーに圧倒されました。新公がなくなってしまった分、本公演で起用してもらえるのは嬉しいよね!

 

 

 

【楽しい観劇にしたい】

せっかくお金を払って、おめかしをして、歌劇を見に行くのだから、いつも楽しい気分で帰れるような作品作りを、劇団にはいつも期待していたいです。

楽しくなかった作品の感想を書くときの気持ちは、楽しくなかったです。読んでいる人のお気持ちまで害してしまっていたら、申し訳ありません。