すーぱーからしちゃんねる

からしがみたものをまとめたものです。

歌舞伎座『風の谷のナウシカ 上の巻 ー白き魔女の戦記ー』

【期待】

演目の発表を見た時、スマホを持つ手が震えました。
2019年の初演を見て感動し「歌舞伎の世界を理解したい」と思ってから、間も無くしてコロナ禍に突入。歌舞伎座の公演がストップし、再開してから細々と歌舞伎を見に行く様になりました。ブログには書ききれていないけれど、毎月いずれかの部を見に行っています。東銀座も、もうすっかり庭です(笑)
はち切れんばかりに膨らんだこの期待を、どう記したら良いのでしょう!初演のセットや蟲たちのパペット、衣装がめちゃくちゃ凝っていたので、再演しないのは勿体無いとは言ってきましたが、こんなに早く再演が叶うとは思っていませんでした。コロナが落ち着いた頃、もう少し先だと思っていたのです。
キャストのスライドにも、胸が高鳴りました。初演でナウシカを的確に演じていた菊之助さんがクシャナに。そしてナウシカは、初演でケチャを演じていた米吉さんに。アスベルは尾上右近さんが続投、チャルカの錦之助さんも続投。ユパ様に大河でも大活躍で久しぶりの歌舞伎座出演となる彌十郎さん。そして今回のケチャは莟玉さん。歌舞伎を見るようになって、役者の事が少しわかるようになってきたわたしには、配役発表だけでお祭り騒ぎだった訳です。
特に、米吉さんは初演のナウシカを見た時に「ひとりだけ本物の女の子がいた。歌舞伎にも本物みたいな人っているんだなあ(例えば宝塚なら、真風涼帆を見て「本物の男がいる!」と驚くような)」と思った日から、お目当てに観に行くような、若手の女形さんです。何でもかんでも宝塚に例えますが、『新公学年の娘役が本公演でタイトルロールを演じる』くらいの大抜擢かと思います。菊之助さんが米吉さんをナウシカに選んだ事が、とてつもなく胸熱でして、『自分がクシャナを演じるならば、ナウシカは彼に』と思ったであろう事がもう尊くて合掌ですよ。
菊之助さんのクシャナは、とても期待が高かった。初演の七之助さんのクシャナは、あれで既に完成形みたいなところがあったから(それほどにセンセーショナルで素晴らしかった)菊之助さんがクシャナをどう見せてくれるのか、とても楽しみだった。しかも、主人公をクシャナにする趣向も楽しみでした。初演ではクシャナのエピソードがセリフだけになっていたりして、物足りなさを感じていました。わたしはナウシカという作品は、ナウシカクシャナダブルヒロインで、お互いが光であり影であり、その上女同士であるところに最高に萌えているので、そういった間柄が歌舞伎で取り扱われることが、とても意味のあることだと思う訳です。なぜだか、わたしの周りの男性は、クシャナが好きな人が多く、ああいう女性に憧れる男性の気持ちが、ちょっと乙女で可愛らしいなと思うのでした。
丑之助くんと、知世ちゃんのご出演の知らせも嬉しかったです。初演を新橋演舞場へ見に行った時、お茶していた喫茶店で偶然、丑之助くんと知世ちゃんとお母様に出会したことがあって、「この子もいつかナウシカを演じたりするんだろうなあ」と思ったものでした。まだまだ小さな子供だったのに。子供にとっての約3年は、とても大きなものですね。
ビジュアルが発表になったり、公演の情報が流れてくるたびに、脳内ではお祭り囃子が流れておりました。それだけ、楽しみにしていました。
観に行ったのは、初日開けてすぐの週末、中日、そしてこれから千秋楽を観る予定です。

【所感】

いや、米吉ナウシカかわいすぎたよね。かわいいだろうなとは思っていたけれど、予想の300倍可愛かったな。幕間に花籠でお弁当食べながら泥を吐きそうな気分でした(どんな感情)菊之助クシャナ殿下も麗しくて格好良くて、泥を吐きそうでした。まだ幕間だっていうのに、泥を吐きまくって魂が浄化されたような気がいたしました。それだけ、わたしにとっては最高で、マーベラスで、ハイカロリーな作品だった、という事なのです。初演の衝撃を凌駕する出来だったのです。これだけ大満足の作品を、どこから語ってゆきましょうか。
どうしても初演と比較した感想になってしまいますが、初演にあった本水や客席降りはカット。それでもスケールダウンして見えないのが素晴らしかった。ナウシカの地下室の場面がカットされていたのは寂しかったけれど(あのシーン好きなんです。ナウシカの賢さが見えるから)場面転換や物語の進み方はむしろスピーディーになっていたように感じました。ちょっとテンポが良すぎて、原作を知らない人にはしんどいのではないかとも感じました(2回目に見たときはイヤホンガイドを使いましたが、歌舞伎のフォローというより、ナウシカの世界のフォローをしっかりしていましたね。しかし、セリフに被せる解説が邪魔でもありました)後半は完全にクシャナが主人公となる訳ですが、初演でカットされていた兵士への手向に髪を切るシーンがあって、脳内で叫びました。ざんぎりの殿下も麗しい!格好いい!大詰の冒頭での母上との場面には泣かされました。漫画では数コマしかない場面を歌舞伎的に膨らませているのが素敵でした。歌舞伎では髪梳きは愛情表現の場面だそうで、もう心を通わす事ができない母上に梳いてもらった髪を、クシャナは手向にしたのだなと思うと、胸がギュッとなりました。ただの乙女の髪の毛ではないのですよね殿下…。
美しい舞台芸術タペストリー幕や書き割り、王蟲が走ってくる場面を描いた幕などは、新しく作り直したのでしょうか。新橋演舞場歌舞伎座では、サイズが違うので、書き直したのかな。もしかしたら王蟲も?やっぱり冒頭の腐海にタイトルが浮かび上がる様には、毎度感激してしまいます。ナウシカの世界が立体的になって目の前に在るというだけで、こんなにも感激しちゃう。これからも、この光景を見て、新鮮に感激したいです。
衣装は割とそのままだったような気がします。クシャナは新調のお衣装があったかな?ヘアメイクは役者に合わせたものになっていました。もうね、米吉ナウシカのエアリーボブしか勝たん。米吉ナウシカのエアリーボブが可愛いことは知られていると思うのですが、米吉ナウシカの眉毛の可愛さについても言及したいと思います。かわいい。やり過ぎでない困り眉、絶妙な平行眉が本当にかわいい。普段の歌舞伎のメイクとは違う感じ。某・紫吹淳さんに教わったのかな(ノーズシャドウからの眉毛の作り方が娘役っぽかった)七之助クシャナは男役っぽいビジュアルだったけれど、菊之助クシャナは歌舞伎の中華モノっぽいメイクなのが印象的でした。あと、シニヨンの作り方が違う。後毛がなくて、きっちり編み込んで結っている感じ。そんなところから、役の性格を読み取るのが好きです。

【キャスト】

クシャナ/尾上菊之助
七之助さんのクシャナ星組っぽかったけれど、菊之助さんのクシャナ月組っぽかった(なんでも宝塚に例える)中村屋の殿下は鞭をへし折るが、音羽屋の殿下は鞭をへし折らない。第一声から「つよ!」と思ったのですが、母上の前では娘の声になっていて、菊之助さんのクシャナの悲しみの深さに感心しました。何度も足を組み替える場面があるのですが、オペラで凝視しちゃったよ。もう、なんのご褒美なんでしょう。頬杖ついてる殿下が好きですね。
クシャナの剣は、刀ではなくてサーベルなので、殺陣もいつもと違って、斬る動作より突く動作の方が多くて格好良い。マントが綺麗に靡く。マントというか、陣羽織のアレンジ?みたいなやつ。ビジューがジャラジャラついてて姫っぽくて好きです。
ナウシカクシャナの体格差にひたすら萌えてたんだけど、わたしの大好きな「後ろを留めてくれ」が健在で、思わず叫び声を上げて立ち上がりそうになりました。クシャナからのナウシカへの矢印の大きさが大好きだし、話が進むにつれてナウシカの心の闇というか、光だけではない部分が見えてくるにつれて、クシャナの闇が光に照らされてゆくのがたまらないんですよ。こういう萌えがあるんですよわかりますか。だからこそ、菊之助クシャナには米吉ナウシカでなければならない道理がある。道理っていうか萌えなんですけど。

ナウシカ/中村米吉
予想の300倍可愛かった。最初に見たときは、かわいさしか読み取れなかったんだけれど、中日に見た時には、だいぶ印象が深化していて、役者の力を感じたよ。第一声からヒロインなので素晴らしいのだけど、ルリルリしているだけではなく、実は気性が荒くエキセントリックなところが見えたので更に素晴らしかった。下の巻に繋がる役作りだと思う。気持ちが昂った時に、ジブリのキャラクターって髪の毛がゾワゾワと逆立つ表現がよく見られるんだけれど、米吉ナウシカにもそれがあった。着物の裾をギュッと掴む両手の意地らしさもかわいいの。かわいすぎて、「もうこれ以上傷付かなくて良いよ!」と駆け寄って抱き締めたくなる(誰)庇護欲かき立てられるんよなあ。ミト爺に「姫様も大人になりましたな」と言われて「ええ?」と振り返る姫様が本当にかわいくて、オペラグラス握り潰したくなります。
最初に見た日は1階席の後方だったので、宙乗りは見えないかなと諦めてたんだけど、ちゃんと見えたよ!!ナウシカが飛行姿勢になると歓声が上がっていたよ。しかし、中の人の体幹はどうなっているんだ。あんなに華奢なのに。しかも暗転した中、吊られたままで後ろ向きに下がっていくの、絶対に怖い筈。見てるだけでヒュンとなる。チョンパで目もくらむだろうし、それでもきゅるんとしてる中の人凄すぎないか。役者ってすごい。

・アスベル/口上/尾上右近
けんけんアスベルの好きなところは、アスベルにしてはイケメン過ぎるのに、ちゃんとアスベルなところ。最後の場面で、両手を腰に当ててナウシカを見送ってるのがめっちゃアスベルですき。本水がなくなって見せ場が減ってしまったのが残念だったけど、歌舞伎のアスベルは王子様感が強くて好きです。

・ケチャ/中村莟玉
第一声から「つよ!」と思ったけど、原作のケチャに近い印象を受けました。ケチャって、結構顔立ちもキツいし、それくらい強くて良いんだよね。「私もその服、狙ってたんだ」が健在だったのと、その時のまるるがいたずらっぽくて可愛かったので100点満点でした。

・幼き王蟲の精/尾上丑之助
あまりにも純粋で、放つ光が眩しくて、初演と全く違う印象を受けて、新鮮に泣きました。序幕いちばんの見せ場と言っても過言ではないのでしょうか。「子供でも、こんなに情感豊かな身体表現ができるものなんだ」と驚きました。初演では無かった引き抜きも効果的でした。今は、体調不良でお休み中の丑之助くん。すごく良い場面だから、悔しいと思うけれど、しっかり休んでくださいね。復活待っています。そして、下の巻ではチククをやってほしい!年齢的にも丁度いいと思うので、ぜひナウシカの世界で活躍してほしいと思います。

・幼きナウシカ/寺嶋知世
母親とのやりとりが良かった。クシャナナウシカも、母に真っ直ぐに愛されなかったところが共通点なんだよね。幼いながらも、集中力と求心力が素晴らしいと思った。これが初舞台なんて本当ですか!小さな子供に、この世界観とか、場面の意味とか、役の心情を指導するときに、周りの大人たちは、どんな言葉をかけているんだろうと思いました。それだけ、お役が深かったのです。

・クロトワ/中村吉之丞
初演の時、クロトワの「俺は尻尾を出しますよ」で笑いが起きる意味がわからなかったんだけど、元ネタが『弁天娘女男白波』なのがわかって、再演では笑うことが出来ました。成長してる!その後に続く七五調の台詞がいいですね。クロトワも、初演の亀蔵さんの印象が強いんだけど、吉之丞さんのクロトワも良かった。下の巻も続投されるのかな。クロトワって、ある意味この物語のヒロインだと思っているので(笑)これからの活躍が楽しみなのです。

・ミト/市村橘太郎
初演でメロメロになった橘太郎さんのミト爺〜!!かわいいほっぺが健在で嬉しかった。姫様にメロメロなのに、武人らしいところもあって、大好きですミト爺。今回も舞台写真出ないかな。

・チャルカ/中村錦之助
チャルカの活躍は、下の巻までお預けかと思うのですが、初演に出ていた役者がいると、安定感がありますね。説明台詞が多くて大変そうだった。ドルクの踊りが不気味すぎて毎回トラウマ案件なんですけど、今回はチャルカも参加していてさらに怖かったです。夢に出そうなんだよ…。

・ユパ/坂東彌十郎
歌舞伎座にお帰りなさいの彌十郎さん、ツヤツヤしていた!!ユパ様の喋ったときにお髭が動く感じが本当にユパ様で格好良かったです!!ユパ様も出番が減ってしまって少し残念でしたが、存在感と重厚な台詞回しは流石でした。ユパ様の最期が格好良くて好きなので、彌十郎さんのお芝居も楽しみです。

【下の巻も楽しみ】

まだまだ語り足りない(まだあるの)連日Twitterで大騒ぎしているので、そろそろわたしのフォロワーさんは、ナウシカ歌舞伎のことが気になって仕方がないのでは!?お席もまだありますし、千穐楽ライブ配信されるそうなので、興味のある方はぜひ見ていただきたいです。
近いうちに下の巻も見られると思うと、ワクワクが止まりません。きっとこれから、古典になってゆくのではないかと思われる『風の谷のナウシカ』。この世界に出会い、観客として存在できる幸せを噛み締めて、次回作を待ちたいと思います。

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月組日本青年館公演『ブエノスアイレスの風』

【期待】

絶賛ありちゃん(暁千星)フィーバー中なので、気合いを入れて初日から観に行くことにしました。青年館はなんと『不滅の棘』以来です。国立競技場が出来上がっててびっくりしました(オリンピックはもう終わったよ)そして、ドラマシティでも観た。観に行かずにはいられなかった。最初に後方席で全体を見て、次に超前方席でマイクオフの芝居まで見た。ありちゃんにハマれと言われているような運びでしたな(笑)
ブエノスアイレスの風』は、スカステの映像で見たことあるはずなのに、ストーリーを全く覚えていなかった。正塚先生の作品だから『暗い(光量的に)』『武器商人が出る』『突然誰かしらが発砲する』んでしょ、とか思ってましたがその通りだったので、少しは覚えていたのかもしれない(笑)
りんきら(凛城きら)の出演も嬉しかったです。既に正塚専科と化しているりんきら先生ですが、正塚作品との相性がべらぼうに良いので、楽しみにしていました。
いつも期待以上の活躍を見せてくれる、おだちん(風間柚乃)と、新人公演ヒロインで話題を攫った花妃舞音ちゃんも楽しみでした。

【所感】

もう大好きですこの作品。この暗さ(光量的に)と粋さは、生で観ないと分からなかったなと思いました。観終わった後、人間のどうにもならなさと青春の熱い風が、胸を通り抜けてゆくんですよ。まさに『光と影の狭間を吹き抜けてゆく…』とはこのこと。どうにもならない男女の心の機微。理想と友情。このほろ苦さと不思議な爽やかさが、とても粋に感じられたのです。正塚作品独特のムードとテンポも粋でした。それに独特の心地良い浮遊感がちょっぴり不穏で、この雰囲気に色気がある。月組生の緻密なお芝居があったからかも知れません。
主題歌がとても良いですよね。冒頭に春音アキちゃんが歌って、最後にありちゃんが歌うのがとてもいい。母の歌でもあり、友達を亡くした男の歌でもあり、いろんな聴き方感じ方ができるような、奥行きのある歌として聴けるのが良かったです。
わたしはダンスのことはよく分からないで見ているのですが、タンゴのコミュニケーションがお芝居で表現されているのに気が付けたのが面白かったです。最初は雑に乱暴に躍るニコラスが、徐々に相手の呼吸に合わせて躍るようになってゆくのが見られて、ありちゃんのうまさを改めて実感しました。ひとりで踊っていても最強だし、ふたりで踊っても最強なんだな。

【キャスト】

暁千星/ニコラス
この色気だよ!出てくるたびに格好いいの最大瞬間風速を更新してくるこの感じ。もう刑務所にいる時から格好いいし、刑務官に「元気でな」と見送られるニコラスの人間的魅力というか、リーダーの人格というか、もう始まって5分も経たないうちから見えてくるのがたまらないです。最初の場面で既にキャラクターが立っているんですよ。ショーでのありちゃんでキャーキャー言いがちだったのですが、この真ん中力には魅せられました。革ジャンも格好いいんだ。いや、全部格好いいんだけれども。
諦めているでもなく、燃え尽きたり、やさぐれているわけでもないニコラスの体温がめちゃくちゃセクシーで、正塚先生のセリフとよく馴染んでいた。一つ一つの所作が緻密。椅子に座る、テーブルの上で指を組む、椅子の背もたれに身を預ける。全ての男役仕草が格好良くって、こういうところに弱いわたしは、目をギラギラさせていたに違いない。
ニコラスから見た登場人物よりも、他の登場人物たちから見るニコラスに萌えました。そういう魅力があったと思う。決して右側だということではなくて。リカルドから見えるニコラス、イザベラから見えるニコラス、エバから見えるニコラス、リリアナから見えるニコラスそれぞれに映る彼の姿がどれも魅力的で。人間関係に萌える宝塚歌劇っていいよね。
ありちゃんのダンスが素晴らしいのは、ダンスがよくわかっていないわたしでも知っていることなんですが、改めて、落ち着いて(落ち着いてないけど)見ると、身体表現の不思議を感じるよ。腕を上げるだけの振りなのに、腕がぐんと伸びて見える。ジャンプした瞬間、身体が宙で止まって肢体がぐんと伸びて見える。
さて、そんな素晴らしいダンスですが、今更ながら「物語の中のダンスって、こんなに情感豊かなんだ!」と思いました。今まで何を見て来たんだ。イザベラを相手に乱暴に自分勝手に躍っていたタンゴが、徐々に息が合ってきて、魅せるタンゴになっていって、冷めた心もいつの間にか熱くなっていって、という物語が見えるのがとてもとてもよかった。同じ振りを繰り返していたので、読み取りやすかったのかも。そして、イザベラに「こんな風に女を抱くの」と言い捨てられて、あの表情ですよ!!じゅりちゃんも格好いいけれど、ありちゃんのあの表情ですよ!!
話題になったマルセーロへの暴行シーンですが、蹴る人も蹴られる人も上手すぎてめちゃくちゃ怖かった。トドメの2発が怖いんだよ。ストーカー化した元カレをボコボコにした男に「送っていくよ」と言われても、「うん」と言わないイザベラの描写も良かった。正塚先生のこういう男女の描き方は信用できる。怖いよね、一緒にいたくないよね。
ニコラスは男にも女にもモテるタイプだと思うの。着崩したギャルソン姿で、手を抜かずにお掃除しているのを見て思った。ちゃんと働いているのがいい。男から見ても色気のあるタイプなんだと思う。だから、ビセンテも執着したくなっちゃうんだろうな。ああいうタイプの男に不安にさせられるのがビセンテなんだろうよ。
あとさ、リリアナの気持ちをわかっている感じもまた、たまらないよね。子供扱いしないけど、一線引いている感じ。リリアナ目線になるとそこがせつない〜!!最後にニコラスが兄貴宣言するところは「なんて優しくて残酷なんだ!」って思ったよ。
リカルドの部屋で名刺を拾った時の「捨てることないだろ」「なあ?」の「なあ?」がとんでもなく色気に満ち溢れていて、仕草から目線からテンポから全部が格好良くって動悸がしたよ。こういう細かいところが印象のど真ん中に居座るほど、めちゃくちゃ格好いいんだ。
リカルドとの関係性は、わたしはそんなに深い読み込みは出来なかったのですが、雨に打たれて「友達が死んだ。なにもしてやれなかった」と嘆く場面が苦しくて好きです。
ニコラスは最後イザベラとくっつくのかと思っていたのですが、そうはならない正塚作品のどうにもならない人間の性を描いた世界観がお洒落で粋だなあと思いました。フィナーレの演出も良かったです。ありちゃんは誰とも組まないのが良かった。ガッツリとしたデュエットダンスが見たかった気もしますが、それは今後のお楽しみということですよね。みんながありちゃんを笑顔で囲んでいるのも良かったなあ〜。フィナーレのこの部分にめちゃくちゃ青春を感じた。

天紫珠李/イザベラ
ヒロインとはまた違ったポジションだと思うんだけれど、とても健気で、優しくて、格好いい女性でした。さっきまで泣いていたのに、オーディションに来なかったニコラスを、ギャンギャン責め立てたりしないのが良い。彼の吐露した悲しみを、黙って受け止めるのが良い。
実は今まで、じゅりちゃんをじっくり観たことがなかったのですが、お芝居がナチュラルで、ダンスがダイナミックな娘役さんだなあと思いました。フィナーレであみちゃん(彩海せら)と組んでいるのがすごく良かった!身長差のないカップルが、バリバリ踊っているのが好きです。

風間柚乃/リカルド
おださんは人生何周目なんだろうってくらいに、深い役作りをしてくるよねえ。今回も期待以上でした。ブロマンスってやり過ぎると、ちょっとうんざりしちゃうんですけど、この作品は良い塩梅になっている。リカルドから見たニコラスのことを思うと、なんともたまらない気持ちになる。
リリアナは妹だけど、実は本当の妹じゃないんじゃないか。そして、それを知っているのはリカルドだけなんじゃないか。と思いました。キュン飛び越えてギュンだった床ドンのシーンは、ちょっと気まずくて甘い雰囲気に「さすがだわ〜、うまいわ〜」と唸りました。リリアナとニコラスをくっつけようとする感じ、リリアナの恋心をおちょくっちゃう感じに、むずむずしちゃうよね!
初めて見た時は、銀行強盗が物語の山場になるんだと思いながら見ていたのですが、実際は未遂に終わり、リカルドはあっけない理由で死んでしまう。ニコラスの腕の中で。この時の、おだっちの芝居も凄かったなあ。抗えない何か、不条理、儚さ、いろんなものを感じたよ。

凛城きら/ロレンソ
格好良かった…!メガネにお髭に、あの抜け感ですよ。さすが正塚専科。きっと若い頃は、めちゃくちゃ女にモテたダンサーだったに違いない。しかも、男にもモテるタイプの。なっちゃん(夏月都)とのタンゴも素敵なんですよ。若い人たちと違って、やたらと動いたりしないタンゴなんです。

晴音アキ/フローラ
この作品で歌うのは、フローラとニコラスだけ。お芝居の始まりは、フローラの歌から。初日はさすがに緊張されていたように思えたのですが、ドラマシティで観た時は、すっかり落ち着かれていて、夕日のようなあたたかい歌唱になっていました。この歌が、この物語の全てだよね。
連行されるマルセーロに「待ってるから」と声をかけるフローラが、とても好きです。人間のどうしようもなく優しい様に触れられるので。

蓮つかさ/武器商人
れんこん出番めっちゃ少ないけど、声が良すぎて一場面のインパクトがでかい。あまりにもエエ声なので、エコー外してくれって思ったもん(笑)
ゆーゆ(結愛かれん)とのタンゴも格好良かったです。

礼華はる/ビセンテ
このゾッとするような男がめちゃくちゃ良くって、ぱる君てお芝居めちゃくちゃ上手いんだなって思った。一見真面目で、正義感に溢れていて、背が高くて、イケメンなんですけど、よくよく考えたらモラハラ
匂いしかしないよ、この男。結婚したら妻に仕事を辞めさせるのが当然だと思っているし、ミルクティーを差し出されてお礼も言わずに飲んじゃうし、トドメが「君を手元に置いておきたい」だからね!エバ逃げて!!って思った。それでも、エバビセンテと結婚しちゃうんだろうなあと思うのがこの物語の、どうしようもなくて愛おしいところ。こういうキャラクターが出来て、しかも後味がざらりとした芝居が出来るって、ぱる君は本当にすごい。

彩海せら/マルセーロ
なんか既視感のあるお役で笑っちゃったんですけれど(CH)月組デビューのあみちゃん。蹴られるのめちゃくちゃ上手いし、お芝居には安定感があるし、笑いも取ってるしで、月組の緻密なお芝居の中でしっかり存在していた。次回は是非、新しい顔のあみちゃんが見てみたいです。

羽音みか/エバ
お名前を存じ上げなかったのですが、ちょっと硬質なお芝居が印象的な娘役さんでした。その硬質さが、正塚作品の中の女性って感じで良かったです。リカルドのお葬式の場面での佇まいが印象的でした。

花妃舞音/リリアナ
『ロマ劇』の新人公演で話題になっていた舞音ちゃん。線の細さと、台詞回しと、テンポが、めちゃくちゃ正塚作品とマッチしていて、本当に本当に素晴らしかった!セリフのいじらしさにキュンとしたし、リカルドの死を悟った場面では泣かされた。あそこの、ニコラスのバックハグやばいよねえ!体を小さくして嘆くリリアナにもキュンとする。ニコラスに兄貴宣言された時のリリアナの表情も切なくて、舞音ちゃんにはたくさんキュンとしちゃったよ。もっといろんな役が見てみたいです。

【奈良観光】

ドラマシティでマチネを見てから、弾丸で奈良観光をしてきました。梅田から1時間かけて薬師寺へ行き、1時間かけて京都まで行き、そこから新幹線で帰りました。移動距離半端ない(笑)
いつもは人の心を忘れたようなハードスケジュールで観劇していますが、たまには文化教養要素を取り入れた遠征もいいな、と思うのでした。めっちゃ弾丸だったけど、付き合ってくれたお友だちありがとう。

宙組東京新人公演『NEVER SAY GOODBYE』


【期待】

102期の抜擢が嬉しかったですね!ひなこちゃん(風色日向)『エル・ハポン』で、色気たっぷりの初主演を見ていたので、ジョルジュのような、能動的な主役をどう演じてくれるのか、とても楽しみにしていました。さーちゃん(春乃さくら)は、『ホテルスヴィッツラハウス』での可憐な歌とお芝居、『プロミセス・プロミセス』では少ない場面でもインパクトのある品の良い美しさが印象的な娘役さんでした。本公演でも歌で活躍されていますよね。この抜擢がとても嬉しかったです。
宙組の新人公演は、ご縁あって、ここ数年間観劇出来ています。この新公に期待していたのは、コーラスです。本公演の素晴らしいコーラスを支えている彼らが、中心になった時、どんなに素晴らしいものを聞かせてくれるんだろうと楽しみにしていました。

【所感】

当日のマチネから、舞台機構のトラブルがあり、開演時間が15分押しました。長年観劇しているけれど、舞台機構のトラブルに出会したのは初めてです。
本公演を見ていた友人から、演出の変更を聞きましたが、概ね同じような変更だったようです。違っていたのは、ヴィセントの実家に警官がいたことくらいでしょうか。新人公演は出番がひとつ減っただけで、チャンスが激減しちゃうもんね。
セリが故障していても、演出の変更があっても、舞台を絶対に成立させるぞという、出演者とスタッフの気概を感じました。プロフェッショナルを見ました。
そして、期待していたコーラス。素晴らしかった。これだけの人数で、コーラスに迫力を持たせられるのは、さすが宙組と言いたくなります。数小節のソロでも、危なげない人もおらず、みんなが安定していたのも流石です。日々の公演で、コーラスを責任を持って支えているからこそ、出来ることなんだろうと思います。

【キャスト】

主な配役と、印象に残った生徒さんについて。

風色日向/ジョルジュ
この落ち着き、色気、歌い出した時の世界観、安定感、真ん中に立った時の収まりの良さ。「風色日向はこういう男役です!」と言っているような自信に溢れていて、この新公でひなこちゃんに落ちた人も多いのではないでしょうか。二度目の新公主演で、ここまで自分の個性を完成させてくる人も、なかなかいないよ。本役さんのコピーではない、自分の色を出せる人が好きです。それでいて、歴代のスターの面影を持っているのも素敵だなと思った。ひなこちゃんは、本当にいろんなものを『持っている』んだなあと思いました。
男役仕草が板についているのも良かったです。腕捲りをしながら電話をする場面、カメラを持って立っている場面。目を伏せた時の色気がすごい。キスシーンやスーツの着こなしには若さを感じましたが、それはこの学年でしか出せない味なんだと思います。
歌い出した時に、劇場の温度や湿度が変わるのも、ひなこちゃんの魅力だと思います。ややハスキーな歌声に、客席がぐっと引き込まれてゆくのを感じました。ソロを歌い終えた後、すぐに拍手が起きずに、小波のように拍手が起こったのには鳥肌が立ちました。客席が圧倒されて、拍手をするのを忘れて、歌の余韻に浸っていた。一発勝負の新公ならではの出来事だったと思います。彼女の歌を、芝居を、もっともっと見てみたい。そう心から思いました。
相手役と一緒にいるときの雰囲気も良いんだよね。わたしは娘役と組んでいる時の男役が好きなので、ひなこちゃんがこういうタイプなのが嬉しい。ただ背が高いだけではない大きさが、お人柄を表しているんじゃないかって思うんです。

春乃さくら/キャサリン
さーちゃんのキャサリンは、すっっごく頭が良さそうに見えた。偏差値で言うと75くらい。子供の頃から高等な教育を受けて来て、本人も努力して、脚本家としてのキャリアを築いてきたんだろうなっていうストーリーが見える役作りでした。口跡も良く、歌声も美しく、何より所作に品がある。そのお上品さも鼻に付くものではない。衣装の着こなしもスマートで、本当に抜擢してくれてありがとう!と思った。
舞台での立ち居振る舞いも、緊張の様子は見えず、落ち着いていて、そう言うところが知的に見えたのかな。やっぱりこれくらいの学年になると、ただ美しい、かわいいだけで舞台に上がらないから、しっかりと個性が見えてくる。「わたしはこういう娘役です!」ていう像がはっきりしている。
最後のカゲソロがさーちゃんなのも良かったです。初演と同じ演出なんですって。暗示的に聴こえて、良い効果だなと思いました。歌といえば、教会でのソロも良かったー!

鷹翔千空/ヴィセント
こってぃは何よりもビジュアルが素晴らしくて、何度もオペラを上げてしまった。マタドールの衣装がめちゃくちゃ似合うゴージャスなお顔立ち。メイクに工夫があって、とてもとても素敵でした。
銀橋のソロも迫力がありました。こってぃは今回で新公卒業ですが、最後の新公にふさわしいゴージャスなマタドールだったと思います。

亜音有星/アギラール
序盤は「緊張してるのかな?」と思いましたが、後半の見せ場に行くにつれて、ギラギラと輝いてゆく姿が印象的でした。こういう役を、楽しそうに演じているのがいいよね。『オーシャンズ11』の時は大汗かいて悪者を演じていたのに、今回はのびのびと悪者に徹していて、成長を感じました。

愛未サラ/エレン
お人形さんみたいだった!あのゴージャスなお衣装を着こなしているのは、華がある娘役さんだからだと思う!お芝居の方は、キャッチーな個性と印象が強ければ良かったかなあと思います。これからのご活躍に期待。

朝木陽彩/ラ・パッショナリア
めちゃくちゃ期待していたけれど、それ以上だった!全パート地声で攻めるすずこちゃん、まじ宙組のディーバ。エトワール待ってます!

泉堂成/タリック
本公演より出番が減っているので、印象が薄くなってしまうのは致し方ない。「やっぱり連れて行ってくれ」と泣きつくところは良かったです。きっとこれから、どんどん抜擢されてゆくことでしょう。楽しみにしています!

真名瀬みら/マックス
まなちゃんを孫のように見守り続けている組の組子なんですけれど、彼女のここ数年の成長っぷりには、胸を打たれまくりです。線も太くなったし、声にも深みが出たし、新公を創業してからのまなちゃんの活躍が本当に楽しみです!

雪耀れんや/市長
市長が出てきた瞬間の、客席のオペラグラス上がり率がすごかったです。そういうわたしもオペラ上げた。第一声から上手かったもん。

湖々さくら/アニータ
ネバセイは娘役の役が少ない!でも、占いの歌はフルで聴けて良かったです。

花宮沙羅/イザベラ
ネバセイは娘役の役が少ない!!ソロでお歌が聴けて良かったです。さらちゃんはいろんな場面に出ていて、チーム芝居をぐんぐん引っ張っているのが見られて、頼もしかったです。次作からは新公の長の学年なんですよね。はっや。

湖風珀/ピーター
本役より、湿っぽいお芝居をしていて、それがとても良かったです。ただ歩くだけでも、芝居の歩き方をしているのが印象的でした。

大路りせ/ビル
ココナツボーイのセンターで、それがめちゃくちゃ目を惹きました!華がある!宙組男役らしい輝きを、既に持っている人だなと思いました。

【好きな夜】

初日の夜と、新人公演の日の夜のタイムラインが好きです。賑やかで、楽しいから。東京の新人公演は、配信もされるようになったから、それについて呟いている人も多くて嬉しいです。
今作の新人公演は、ムラで公演できなかったので、本当に一夜限りのものになってしまたけれど、こうやって開催されて、しかも自分が健康で、立ち会えることに感謝の気持ちでいっぱい。