すーぱーからしちゃんねる

からしがみたものをまとめたものです。

新橋演舞場『ヤマトタケル』

2024年2月17日 團子タケル
2024年2月25日 隼人タケル
2024年3月16日 團子タケル

【期待】
 猿翁さんの映像を見たときは、途中で飽きてしまいました。ヤマトタケル爆モテ展開に飽きちゃったんですよね。女性キャラクターにも上手く感情移入することができませんでした。でも、最後の猿翁さんの「ヤマトに帰りたい」と嘆くところではしっかり泣いた。その話をお友だちにしたら「自分の推しが爆モテになれば飽きないんじゃないの?」とツッコまれましたが、果たしてそうなのだろうか(笑)
 初演はわたしが生まれる1年前。バブル絶頂期の日本。映像でもわかるくらいに衣装やセットが豪華で、それを見るのをとても楽しみにしていました。令和の日本では絶対に作れないであろう贅だと思います。
 隼人さんは元々『ヤマトタケル』で主演をする予定で、コロナ禍で中止になってしまったのでリベンジなのかなと思いましたが、團子ちゃんの抜擢には「ちょっと駆け足すぎるんじゃないかい」と思いました。わたしが観に行く数日前には体調不良で休演していたし、『もう少しゆっくり育って欲しいな。若い才能を食い潰すことはしないでほしいな』と感じていました。今回の『ヤマトタケル』の上演は、『鬼滅の刃』の穴埋めなんだろうけど、それにしたって、単独主演で全国ツアーは荷が重すぎるんじゃないかなといらぬ心配もしました。でも、成長著しい團子ちゃんは、一ヶ月で物凄く成長するに違いないという期待を込めて、間を開けて、2回見ることにしました。


【シナリオ】
 澤瀉屋のいろいろを想わずに見るのは無理なことで、いろいろを頭の隅に置きながら、それでも、とても感動しながら観ることができました。飽きなかったし、ヤマトタケル爆モテ展開も違和感なく受け入れられました。
 爆モテ展開は、意外にもヤマトタケルが受け身なのが面白かったです。これが男のロマンなのか。劇中で「純真な乙女に触れれば、そなたの疲れも癒えるであろう」的なことを倭姫に言われてましたけど、こういうときって、寝っ転がってるだけで全部やってくれそうな人の方が良くないの?そこんとこどうなの、殿方たち(笑)
 走水の場面は見応えがありました。ヤマトタケルの嘆き方も、ダブルキャストでそれぞれで、見比べるのが面白かったのがこの場面です。
 わたしはヤマトタケルを死に追いやった病を『傲慢の病』とするのが結構好きで、それで彼が命を落としてしまうのも好きです。みやず姫をお嫁さんにもらうあたりから、彼のキャラクターが変わるのを感じるんですよね。「お前が一番好きだ」と言うところ、役代わりで印象が違うところがあれど、気が大きくなって、彼の持っていた純真さや実直さがなくなっている。慢心がエスカレートして、山神を舐めてかかり、致命傷を負う。若い身に降り注ぐ身体の不自由さに、苦しみ嘆くヤマトタケルの姿が、ヒリヒリして、この場面が結構好きだったりします。
 最後に弟橘姫の名前だけ呼ばない理由については、わたしは『弟橘姫は海の神の妃になって神様になったので、畏れ多くて名前が呼べない』『弟橘姫は今も海の底で眠っているので、あの世で会えない』からなのかなあと思いました。それは、どちらのヤマトタケルでも同じように思いました。
 『親に認められたい、褒められたい』と苦しんでいるのは、澤瀉屋の男たちだけではない。現代を生きる日本人共通の苦悩のように感じます。そこから抜け出して、『天翔る心』を手に入れて飛び立つヤマトタケルの姿を観たとき、感動が心の中に湧き出るのを感じました。
 38年前の初演でこの作品に出会った人は、びっくりしただろうな~。ちんとんしゃんと、スローなペースで進む古典歌舞伎だらけの世界に「これが新しい歌舞伎、スーパー歌舞伎です!」と言って、こんなのが出てきちゃったら、おったまげるよ。「こういう歌舞伎もアリ」だとして、『スーパー歌舞伎』をスタンダードにした猿翁さんって、やっぱり天才なんだなって思った。


【衣装】
 とても素敵だった!米吉さんが着ている衣装はどれもみんな素敵だった!兄橘姫が小碓の尊を殺しにくるところの黒い衣装。一瞬しか観られない兄橘姫の藤の衣装は冠も素敵だった。最後の母になった兄橘姫の蘭の冠がとても綺麗で好きだった。あれ、兄橘姫ばっかりだな(笑)
 熊襲の兄弟の衣装も素晴らしかった!タコとカニを背負わせようと考えついた人、天才じゃない!?北九州の成人式だってこんなに派手な衣装思いつかないよ。
 ヤマトタケルで一番好きなのは、黒いかみなりの模様が入っている衣装です。あれがデザイン的に一番クールで好きだなあ。赤い甲冑姿も好き。最後の翼が生えた衣装も好き。


【装置】
何が凄いって、熊襲の場面のあのセットですよ。景気が良すぎる。樽は飛ぶわ壺は飛ぶわ、食器は飛ぶわ、壁はぶち壊れるわ、梁は落ちてくるわ。ドリフでしか見たことないよあんなセット!最近よく思うのですが、歌舞伎がドリフなんじゃなくて、ドリフが歌舞伎なんですよね。


【キャスト】
小碓命後にヤマトタケル大碓命・帝の使者/團子
 5月の明治座の代役も見ていますが『環境が整っていると、こんなにも落ち着いた気持ちで見られるんだなあ!』と思いました。あのときは、やる人も観る人も落ち着いてなかったからね。
 2月に見たときは、最初の早替わりでめちゃくちゃ汗掻いててちょっと心配になった。でも、大碓命の役作り、よかったですねえ。あんな悪者声も出せるんですねえ。歌舞伎の男は悪くてナンボだと思っていますから、ああいう声が出せるっていうのは、頼もしい限りです。
 女装して潜入するところは、團子ちゃんの顔がちっちゃすぎて、顔が冠に埋もれてて面白かった。最初に見たときは、眼光が鋭すぎて『ちょ、こわいよ』と思ったのですが、3月に見たときは余裕綽々な顔をしていて安心しました。
 熊襲のところの樽投げ合戦は、どちらも歌之助くんで見たのですが、ふたりとも投げ方が容赦なくて男子の喧嘩感があってよかったです。投げられるものは全部投げるし、壊せるものは全部壊す、そのやんちゃさが良かったです。
「私は勝ったのだ!あらゆるものに勝ったのだ!」の勝利宣言が、少し不穏に聞こえるのもとても良かった。
 團子ちゃんのお芝居で印象的だったのが、走水の場面です。弟橘姫が海に身を投げて取り乱すところが凄く良かった。止めるヘタルベとタケヒコを振り切って、飛び込んでしまうんじゃないかってくらいの熱演だった。團子タケルと弟橘姫のカップルは、お互い初恋のような熱さ若さラブラブさがあって、別れの場面が一層悲劇的で印象的でした。
 そして、とても好きなのが、傲慢の病に冒されて、翼が欲しいともがく場面。彼自身の持つ若さが、ヤマトタケルの悔しさを表していて苦しくて良かった。それが身体全体から滲み出ているのも良かった。
 2回目に見たときに『成長著しい!』と思ったのは、殺陣のテンポに緩急が出るようになったところ、最後の翼を広げたところの美しさ、宙乗りの視線の配り方が、とても良くなっていたところです。人って1ヶ月でこんなに成長するんだ!
 團子ちゃんの初役をみることが出来て良かったです。


小碓命後にヤマトタケル大碓命・帝の使者/隼人
 隼人さんは自分を美しく見せることを、愚直にやる人なんだなと思いました。とにかく、『決め』がうまく決まっていて、見せ方に隙がない。團子ちゃんが中心の時と、全く別物の作品に見えました。同じ事をしているのに、こんなに違うものなのか!
 團子タケルと一番違いを感じたのが、みやず姫を嫁にもらう場面。隼人タケルには、弟橘姫がいなくなっても別の女と一緒になるんだろうなと言う色気があった。みやず姫に「お前が一番好きだ」と言うのが、奢った気分だけ出ているんじゃなくて、何にも咎めなくナチュラルに言っている感じがした。
 美しく見せる場面で感心したのが、泣きの芝居。目に涙を溜めるところ、目から涙をこぼすところが、とても美しかったんですよね。2列目で見たのでよく見えた。自然にやっているように見えて、コントロールされている感じが、『芸!』って感じで堪らなかったです。
 次に、焼津での殺陣。見せ方がとてつもなく上手い。しっかり歌舞伎のテンポに決まっている。見ていて気持ちが良い。ここは、さすがの場数だなって思いました。
 宙乗りも、悠々としていて、そこそこ長い時間だと思うのですが、『間』がないのが素晴らしいなと思いました。そして、『客席全員と目を合わせてるんじゃないの!?』っていうくらいに、客席中にまんべんなく視線を配っていてさすがだなと思いました。


兄橘姫・弟橘姫/米吉
 弟橘姫はちょっと幼い役作りだったので、かわいいなとは思ったけれど、強く感情移入は出来ませんでした。でも、走水の場面は素晴らしかったです。「8枚の畳が羨ましかった」という本音に、心が掴まれました。こういうところ、米吉さんはとてもお上手。
 兄橘姫は魅力的なキャラクターでした。特に、ワカタケルを連れての立ち居姿が好きです。ヤマトタケルの子を授かった兄橘姫は、ある意味「勝った」のかも知れません。でも、そういう気持ちを超えて、真っ直ぐ前を向いている兄橘姫が印象的でした。


帝/中車
 ヤマトタケルの夢?の中の帝が印象的でした。あそこの中車さんの厳しさは、なかなかにゾッとする。彼の父の姿を見るようで、どうしてもメタ的に見てしまう場面でした。
 カーテンコールでのヤマトタケルとの握手も、メタ的に見てしまいました。お話は終わっているけれど、大事なお芝居だよね。一緒に観に行った母は、この場面でべしょべしょに泣いていました。


タケヒコ/福之助
 初演の歌六さんのタケヒコがえらい格好良かったから、とっても楽しみにしていました!
 福之助くんのタケヒコも格好良かった~!そもそも、タケヒコっていうキャラが好きなんだなわたしは、強くて格好良い2番手。主人公を看取る2番手。タケヒコも好きだけど、福之助くんも好きである。どっちも好きなのである。


ヘタルベ・熊襲弟タケル/歌之助
 ツインテ、半ズボンのよっちゃん可愛かった。よっちゃんは真っ直ぐな役が似合うよねえ。最後に、ヤマトタケルのお墓に一礼して走り去る姿が大好きでした。
 熊襲弟は、樽投げ対決が『3人兄弟の末っ子仕込み』を感じさせて、迫力があってよかったです!VS隼人タケルでは、ドッヂボールと言われていたそうで、見たかったです(笑)


ヤイラム・帝の使者/青虎
 ヤイラムすごく良いキャラクターなのに、すぐ倒されちゃうから勿体ないよ!もうちょっと見せ場が欲しかった。
 青虎さんの帝の使者は、なんかもう眼差しがやさしくて『このお話の救いがここにありますよ』っていう微笑みだったのが印象的でした。


老大臣/寿猿
 寿猿さんの「おはようございます」から始まるのがいいよね。寿猿さんのお芝居も、どうしてもメタ的に見てしまう。澤瀉屋をずっと守ってきたひとだもの。


倭姫/笑三郎
 笑三郎さんは美しくて慈悲に溢れていて素敵だったのに、中年女性イジりは腹が立ったな。中年女性の性欲を笑う客席、もっと大人になれよって思った。わたしは全然笑えなかったんだけど、結構高齢の女性が笑っているのが気になったなあ。わたしも年を重ねれば、笑う理由がわかるようになりますか。


国造の妻/笑也
 笑也さん、台詞で遊んでいてニコニコしちゃった。笑也さんは出番が少なくてちょっと寂しかった。でも、笑野さん、三四助さんのみやず姫すてきでした。


熊襲兄タケル・山神/猿弥
 猿弥さんの殺陣のパワーとスピードが堪能できて、嬉しかったです!こうでなくっちゃ!


尾張の国造・熊襲弟タケル/錦之助
 みやず姫パパの名古屋弁御園座ではどうなるのか楽しみ(笑)笑也さんとのコンビもおもしろかわいくてニコニコしちゃった!
 熊襲弟は、VS隼人タケルを見たのだけど、隼人さんがファンクラブイベントで「60過ぎた父親相手に本気で樽投げるわけにはいかない」と言っていたのが印象的でした。そりゃそうだ。


【ツアー】
 隼人タケルにまた会いたい。團子タケルの成長を見たい。壱太郎さんの橘姫が見たい。米吉さんのみやず姫が見たい。
 と、いうことで、博多座に行くつもりでいます(笑)もしかしたら、松竹座にも行くかも知れない。できれば、大千穐楽が見たいなあ。スケジュール早く出ないかなあ。

南座『河庄』『女殺油地獄』『忍夜恋曲者・将門』

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【期待】
観に行かない選択肢はなかった。こう言っちゃうと、趣味が悪く聞こえそうなんですけど、『女殺油地獄』が大好きなんです。仁左衛門さんの一世一代の映像を何度も見ているし、いつかのクリスマスイブには愛之助さんの与兵衛を南座まで観に行っているし(なんでブログに残していないんだわたしよ・・・)ハマりすぎて文楽まで観に行った。その与兵衛を、仁左衛門さん監修のもと、隼人さんが演じる。めちゃくちゃ期待して行きました。穏やかな雰囲気のある隼人さんが、どこから与兵衛の狂気を引き出してくるのか、とても楽しみにしていました。
けんけん(尾上右近)は、江戸っ子らしさがあって、踊りが格好良い役者さんなので、上方の芝居で、どんな男っぷりをみせてくれるのか楽しみでした。
壱太郎さんは、「また滝夜叉姫・・・」と思ったけど、ポスターヴィジュアルが素敵で期待させてくれました。
『三月花形歌舞伎』に来るのは、今回が初めてです。


【河庄】
わたしは生粋の関東育ちで、関西弁を聞き分ける耳を持っていないのですが、けんけんと隼人さんは大健闘だったのでは?ふたりとも江戸の役者なのに、上方の雰囲気のある兄弟になっていて感心しました。冒頭の吉太朗くんの丁稚の「おばはん」の持つあのやんわりとした雰囲気までは出せていないにしろ、兄弟ふたりのボケツッコみが自然に出てくる感じは「ああ、上方っぽいな」と思いました。
壱太郎さんはずっとうつむいているので、お芝居的にはあんまりしどころはないのかなと思ってしまった。あのうつむいた姿から見える心情はいろいろありますが。
後半、小春の胸ぐらを掴んで殴ろうとする治兵衛は、ちょっと江戸っ子っぽかったかな。「手をお膝に」はおかしみがあって、良かった。


女殺油地獄
凄く良かった。これは是が非でも歌舞伎座でやってほしい。お芝居が物凄く緻密で繊細。中村隼人は顔が良いだけじゃないんだぞって、知って欲しい。ただ仁左衛門さんを写しているだけじゃない。ここにはもう、既に個性がある。贔屓目だと笑ってくれてもいい。みんなに観て欲しい。
隼人さんの与兵衛は、前半のあほぼんのところをかなりかわいく作っているので、いつもの隼人さんなんです。頬杖ついてぷーってしてるハヤトナカムラかわいすぎる。でもね、殺しの隼人さんの目がイっちゃってて、めちゃくちゃ怖かった。別の役者さんなのかと思った。お吉が苦しみ悶える姿を見て、ニタニタニタっと笑うんですよ。こわ!!顔が良い分尚更怖い!!
わたしは「いっそ不義になって」のところの役者の演じ分けを観るのが好きなんですけど、仁左衛門さんは『自分に自信があって言ってる感じ』があって、愛之助さんは『自分に自信はないけどとりあえず言ってみる感』があって、隼人さんは『お吉に本気で欲情して言ってる』タイプの与兵衛だった。まじでこわい。「前からお前にぞっこんで」的なことを言うのも、適当なことを言っている感がなくて、まじで怖かった。お吉に襲いかかって、そのままやっちゃうんじゃないかっていう怖さがあった。ここの壱太郎さんが本気で脅えきって、身体が1/3くらいに小さくなって見えるのも良い。
壱太郎さんといえば、すごく華奢にみえる芝居をしていたのが印象的でした。苦しみ悶える姿も艶々していて、リアルなんだよね。その瀕死の姿から、香しいほどの色気が放たれていて、ほわあ、と思いながらも、娘たちの名を呼ぶか細い声に胸がギュッとなる。
与兵衛の「俺も俺をかわいがるおやじが愛おしい!!」の絶叫、良かったなあ。あそこの情の行き場がなくなっちゃったどうしようもない感と、その理不尽極まりない主張が、ものすごく悲惨で、良い。その気持ちがあるなら、与兵衛も孝行息子になれたかも知れないのに、彼にはそこまでの人間性がなかった。
話があっちゃこっちゃしてしまって申し訳ないんだけど、お父さんが出ていった与兵衛を見送りながら「成人してから亡くなった旦那に似てきた。旦那を追い出しているみたいで苦しい」というところとても好き。お母さんの「このちまきを、その辺の犬にでもやってくれ」というところもとても好き。
この演目のエロくてグロくて、しんどいところが大好きなんですね。でも、お芝居を物凄く繊細に作っていかないと、ただのエログロで悪趣味な演目になってしまう。それをここまで面白く作ってくる、役者たちの奮闘が見えるから、この作品が大好きなんです。仁左衛門さんは、与兵衛を19歳で初めて演じられたそうですが、この役の芯を19歳で捉えられただなんて、天才だなって思います。
そして、本当に隼人さんの与兵衛の初役が観られて良かった。これから、何度も何度も上演されて、役を磨いてゆく姿を、見守ることができたら、しあわせだなと思います。


【忍夜恋曲者・将門】
冒頭の演出で、松のかおりのお香を焚いていたそうなんですが、わたしは「焦げ臭い!?南座、燃えてる!?」とひとり静かに焦っておりました(笑)雅な演出を理解できない無粋な女で申し訳ない・・・(笑)
けんけんの光圀と、隼人さんの光圀で、演出が違っていて楽しかった!けんけんの踊りは格好良いし、観ていて気持ちが良い。演出もけんけんバージョンの方が好みでした(かえるも格好良いし)贔屓にはあんまり踊りを期待していないわたし・・・すみません。
ロウソクを使った演出が美しかったです。壱太郎さんの滝夜叉姫が一層美しく見えました。南座の雰囲気にも合っていた。

Brillia Hall『中村仲蔵』

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【期待】
ドラマで中村仲蔵やってたよね。勘九郎さんがやったやつ。それを見ていたので興味を持ちました。あと、藤原竜也が見たかった。世代なので。市原隼人も見たかった。世代なので。
歌舞伎界の話を、歌舞伎以外のカンパニーで舞台化するということに興味がありました。
ブリリアでもいいやと思えたのは、3階席のセンターが取れたから。そして、ミュージカルじゃなかったから。


【所感】
ブリリアって花道作れるんだね!舞台下手にやや幅のある花道が作られていて、上手に小さなモニターが付けられていました。セットは上下に広がる3階建てで、歌舞伎役者の階級が視覚的にもわかりやすい。
面白かったです。でも、スタオベする程の感動はなかったかな。となりのおじさまや、1階席のお客さんは立ち上がっていましたが。
みどころだと思ったのが、藤原竜也外郎売り。あのスピード感と正確性は、さすがだと思いました。こちらのビートを引き込んでいく魅力に溢れている。
そして、市原隼人の五段目の三味線。本当に違和感なかった。いっちーはお芝居に癖があるので、慣れるのに時間がかかりましたが、台詞よりも三味線の方が雄弁だったように思います。素晴らしかった。
このお芝居を歌舞伎以外のカンパニーで上演する意味があると思いました。歌舞伎でやったら面白くないんだろうなとも思いました。
ドラマと同じストーリーを期待して行ったので、萌音ちゃんがやっていた仲蔵の奥さんが出てこなくて残念でした。恋愛パートはいっちーに、という事だったのかも知れませんが、所帯を持った仲蔵が苦労して、奥さんと協力して、成功を掴む、というストーリーが好きだったんだけどなあ。
準備の時間があるとは言え、『仮名手本忠臣蔵』の解説が長すぎると思いました。わたしが歌舞伎を知っているからという理由以上に、間延びしていたと思います。せっかく、クライマックスに向かってテンポアップしているのに、あそこで無駄な(無駄って言うな)『仮名手本忠臣蔵』の知識を与えられても、ダレるだけなのになあと思いました。劇中劇にするとか、もうひとつ工夫が欲しかったです。ひとりの役者が舞台に立って説明している時間が長すぎる。
ニヤリとする場面もありました。団十郎菊五郎の仲が悪いということや、鶴屋南北の匂わせ(でも、ああいう場所で「鶴屋南北です」とは名乗らないと思うしお前は何世鶴屋南北なんだと思いつつ、これはお芝居的演出なのよねと理解しました)など、歌舞伎を知っていると楽しい要素があってニヤニヤ。
笑って良いのか困惑する場面もありました。演出家が藤原竜也に灰皿を投げる場面。客席には灰皿が小さくて何を投げているのか伝わりづらいし、ハラスメントの記憶(役者たちはあれを愛の鞭だったと言うと思うけど)をああやって再生産されても、笑えません。寒いとまでは思わなかったけれど、あれはセンスないなと思ったし、非常にリアクションに困りました。