すーぱーからしちゃんねる

からしがみたものをまとめたものです。

東京建物Brillia Hall 『プロミセス、プロミセス』

【期待】

ハコの評判が悪すぎた。柿落としから暫く経っていると思うのですが、ハコの評判が悪すぎて、宝塚の作品が掛かっても、なかなか足が向かなかった。池袋は家からも近く、慣れ親しんだ街なのですが、とにかくハコの評判が悪くて行く気になれなかった。そして、回ってきた宙組の番。ブリリアが嫌すぎて、ドラマシティまで遠征してしまおうかと思ったのですが、チケットが取れなくて、わたしの初めてのブリリアホール宙組に捧げる事になりましたとさ。駅とアニメイトが近くて良いよね。

実はキキちゃん(芹香斗亜)の主演作を観るのは今回が初めてです。『群盗』を観ていないので。じゅっちゃん(天彩峰里)のヒロインも今回初めて観ます。新公のヒロインは『天河』で観たよ。
原作映画は観ていません。ポスタービジュアルの景気が良くて元気がいい感じに期待が高まりました。近頃、おしゃれな演出が印象的な原田先生と、お気に入りの生徒が多く振り分けされているので、慣れ親しんだ街に宝塚歌劇が来ていること、タカラジェンヌがいることに胸躍らせながら、クリスマスシーズンを迎えた繁華街を歩いて、劇場へと向かいました。

【全体像】

コメディだと聞いてはいたけれど、予想の5倍は笑った。最後の方なんて、笑いすぎてちょっと泣いてた。客席も、お愛想のクスクス笑い、ではなくて、結構ガチの笑いだったと思う。
今作は、ドラマシティで先に上演された作品です。西と東とでは笑いの文化が違うので、しっかりチューニングを済ませた絶妙な間とテンポだったんだろうな。あんなにどっかんどっかん湧いてる劇場空間、こちらではなかなか経験できない。東京の人は気取っているので(※個人の感想です)あんなにどっかんどっかん笑いが起きる、一体感を感じられる劇場空間を作り上げるのって、珍しいんですよ。アメリカのシチュエーションコメディを見ているような気分になった。笑い泣きするレベルに笑った。キキちゃんありがとう(笑)
セットがとても印象的で、高いところにいるスターをずっと見上げているのが新鮮でした。あの位置にドアがあるから更に笑えたんだと思う。エレベーターのランプも。あれが光ると何かが起きる予感がして、余計に笑えるんだよね。笑いに貢献するセットってすごいな(笑)1階席だったので、上の方にあるベッドルームが隠れちゃってよく見えなかったのはもどかしかったな。逆に、何度もいろんな席で見られる人は、見る度に発見があって面白かっただろうな〜。
衣装もビビッドで、目が楽しかった。実は不倫もので、結構リアルでエグい話だったかと思うんですけれども、色彩の鮮やかさで、ポップに受け止めることができました。
音楽は、音響環境が良くなくて、あんまり印象に残ってない。悔しい。でも、クリスマスシーズンにクリスマスソングを聴けるのはしあわせだなって思ったよ。そして、あのタイミングで流れる”オクラホマミキサー”にはめちゃくちゃ笑ったよ。
ラストには、ほっこりした気持ちになって、このシーズンに観るミュージカルとしては、最高だなって思いました。ヒロインがしあわせになって終わるのがいいよね。

【キャスト】

・チャック/芹香斗亜
冒頭のお目覚めシーンで、髭を剃っている姿にめちゃくちゃ萌えたんですけど!!男役って髭は生えてないか、生え揃ってるか、ボーボーかで、髭の存在はあるんだけど、剃られるものとして存在されると急にこんなに萌えるんだ!!自分の性癖が非常に気持ち悪いですね(笑)
キキちゃんの笑いのセンスには、絶対的な信頼を寄せているのですが、今回も裏切られなかった。キキちゃんの笑いの何が好きって、やりすぎないところが好き。めちゃくちゃ笑えるんだけど、とてもお上品なのよね。もっと笑わせようと思えば、もっと出来るところを、作品の雰囲気やキャラクターを壊さないところを見極めて調節している、そのセンスが好き。
フランに全然名前を覚えてもらえないチャック、妄想の弁解をするチャックが突然客席に語りかけるところが、ドキッとして、一体感を生んでいたように思います。よくあるパターンだと思いますが、キキちゃんのお人柄もあって、とても楽しかったです。
あれだけのセリフ量を、軽妙に展開してゆくキキちゃんのエネルギーに、元気をいっぱいもらいました。

・フラン/天彩峰里
感情移入しすぎるとしんどいなあと思いながら見ていましたが、湿度の低いカラッとした役作りで、楽しく観ることができました。特に、キキちゃんと並んだ時のポップさが好きです。
逆に、シェルドレイクとの場面では、終始ジトっとしていてたまらなかった。『夢千鳥』で壮絶な愛憎劇を魅せたコンビが並ぶと、そういう雰囲気が出ちゃうものなのでしょうか(笑)他の不倫カップルにはない雰囲気で、遊びに振り切れない、しんどい空気が漂っているのが良かったです。
お衣装もどれも可愛くて素敵だったな!

・シェルドレイク/和希そら
そーちゃんの所作のひとつひとつが格好良すぎて、匂い立つ男らしさに、オペラが上がりっぱなしでした。こんなに大きいお芝居で、男らしくていやらしい役が出来る様になったのね…!こんなそーちゃんが見られて、わたしは幸せだよ。
クズ野郎のお役なのに、男役しぐさがいちいち格好良くって悔しい!エエ声なのも悔しい!原文が英語ならではの、ちょっと周りくどく感じられる言い回しも、スマートに聞こえる!
結構グッと来たのが、家庭の中で夫とお父さんしているシェルドレイクでした。なかなかエグい姿だったと思うんですけれど、彼の卑怯さとか弱さが見えて、人間臭くて格好悪くてよかったと思うんです。他の不倫野郎たちと比べて、シェルドレイクには弱さとか闇とか、格好悪さが滲んでいて、でもそこがなぜか格好良いっていう、ちょっと複雑な構造のキャラクターが魅力的でした。

・Dr.ドレファス/輝月ゆうま
間が素晴らしすぎてめちゃくちゃ笑わされた。キキちゃんと一対一のお芝居が多かったと思うのですが、本当に今回が初共演!?と思うほど息ぴったりだった。そして、まゆぽんは宙組にいても大きいんだな。長身のまゆぽんが、背中を丸めて初老の医師を演じているのが愛らしくて、もちろん歌も素晴らしくて、専科デビューおめでとう!って思ったよ。

・ミス・オルスン/瀬戸花まり
元不倫相手が今のお相手にちょっとした嫌味と警告を伝えにくると思いきや、しっかりスマートに復習を果たしにくるお役で、せとぅーがめちゃくちゃ格好良かった!このキャラクターがいるから、スカッとした気持ちでフィナーレを迎えることが出来たと思うよ。

・カール/マージ/留依蒔世
苦しくなるくらいに笑った。あーちゃんの存在感ほんっとにスゴかったな。あの場面、勢いがスゴすぎて薄ぼんやりとしか覚えてない。たいへん御御足が綺麗でござった。手足が長すぎて動く度面白いのも、本当にどうにかしてほしかった。「フクロウのコート」って、池袋に掛けたギャグだったんだろうか(笑)
急遽の代役で、二役になったことによって生じたミラクルにも、めちゃくちゃ笑った。
あられちゃん(愛海ひかる)のマージも観てみたかったなあ。元気になって、帰って来るのを待ってるよ!

・ドービッチ/若翔りつ
おじさんを伸び伸び楽しそうにされていて、お髭が可愛かった。重役四十奏うますぎ。
フランとシェルドレイク以外の不倫カップルは、遊びを遊びとして割り切って楽しんでいる感じがして、その対比が良かったです。ドービッチとシルヴィアは完全に遊びで、部屋が借りれなくても諦めなくて、懲りてない感じもあって、それがアホ可愛いのよね。最後、あのタイミングで出てこられた時は、姿が見えただけで大爆笑してしまった。
バーの場面のオネエは、もっと観察していたかったけれど、目が足りなくて間に合わなかった。あと3回はみたかった。悔しい。

・シルヴィア/花宮沙羅
モンロー風のビジュアルと、動きがいちいちプリプリしていて、表情もコロコロ変わるし、目が離せなかった!可愛かったーー!!アホカワイイ雰囲気なのに、「1番高いメニューを頼むのよ!」とあざといセリフもあって、目尻が下がりっぱなしだったよ。
アパートのドアの前で大暴れしている沙羅ちゃんも最高だった。この場面は全てのタイミングが神懸かっていて素晴らしく、最高に笑った。
バーの客の時の黒いドレス姿が素敵でした。背中が綺麗で格好良かった。

アンサンブルに徹していたけれど、真名瀬みらくんはとても目を引く格好良さだった。特に咥えタバコのバーテン役は、真ん中のお芝居が目に入らなくなるほど素敵だった。あまりにもイケ散らかしているので、両の手が震えたよ。

【劇場】

新しい劇場に初めて行ったので、わたしも偉そうに劇場のレビューをしてみたいと思います。
いわゆるドブ沼席ではなかったと思う。1階の10列目くらいの下手ブロックで見ました。聞きしに勝る音響の悪さでびっくりした。これは、座った席が悪いのかも知れない。スピーカーから一音聞こえた段階でいろいろと悟りました。普段口跡が良い生徒のセリフすら聞き辛く、学校の体育館レベルの音響に「これ本当に令和に出来た劇場なの」と白目を剥きたくなった。生徒の口の動きとスピーカーの音に微妙なずれがあって、演者もしんどいんじゃないかなあと思った。
視界は悪くなく、椅子の座り心地もまずまず。足音が響く通路と階段が安っぽく感じられましたが、KAATとかもこんな感じなので、最新の劇場の仕様なのかな。
家から近いのがいい(東宝に行く半分の所要時間)と思う埼玉県民。
最初は「池袋みたいに汚い街に、宝塚が来るなんて、タカラジェンヌが来るなんて」と思ったりもしました。でも、「東京の中でも、あんまり気取っていない街で見る宝塚歌劇」も、悪くない。