すーぱーからしちゃんねる

からしがみたものをまとめたものです。

花組東京宝塚劇場『うたかたの恋』『ENCHANTEMENT』

【期待】
そりゃあ、めちゃくちゃ楽しみにしていましたよ!なんて言ったって、1年ぶりの花組ですもの(休演で2度流れてしまった)しかも、宝塚の古典作品とも言える『うたかたの恋』の新演出版。オタクが楽しみにしないわけがない。『うたかたの恋』は、宙組の全国ツアー(2013年)で観たことがありますが、本公演で観るのは初めてです。ムラで観劇した友人達が、口をそろえて、「あの真っ赤な大階段で、あのイントロを聴いた瞬間、チケット代回収できた!って思うよ!!」と言うので、本当に楽しみで。花組のまどち(星風まどか)を観るのも初めてなので、楽しみ尽くしです。小柳先生の演出も楽しみ。『エリザベート』の演出がとてもわかりやすくて、不穏で、繊細で良かったので、この古典作品ともいえる作品を、どう味付けしてくれるのかも期待していました。
逆にショーは、そんなに期待していなくて。ごめんなさい。グッズを買わせて、観客に踊らせる演出があまり好きじゃないんです。宝塚にはそこを求めていないので。ジャンボリミッキーは全力で踊るタイプだけど。それに、たまにだったらいいけれど、最近多くないですか?グッズを買わせるなら、何度も客席に座れるようにしてほしいな。公演期間を延ばすとかして。贔屓組以外で、グッズを買おうと思わない理由はそこにあります。


うたかたの恋
いや、泣いてしまったよね。ベッドに横になるまどちの目に、キラリと光るものがあって、そのタイミングが絶妙すぎて、その涙を拭うれいちゃん(柚香光)の所作が完璧すぎて、その美しさにずっと泣いていた。様式美って泣けるんですよね。
全体的に『心中ものをやるぞ!悲劇だぞ!不幸だぞ!』という雰囲気が漂っていないのが、逆に無情で非情でいいなと思いました。
「宝塚を観たぞー!」という充足感でいっぱいになりました。やっぱり、大階段に板付きのプロローグは素晴らしい。ミラーボールが回って、あのイントロが流れた瞬間、勝利を確信するではないですか。心の中でガッツポーズ。でもやっぱり、どうしてルドルフがスターブーツを履いていないのかが気になります。あそこは踏襲して欲しかった。残念。なにか拘りとか、理由があってのことだと思うのですが、こちら側にはいまいち伝わってこない。娘役がドレス姿でずらりと並んでいるのも、男役があの特徴的なバレエをブーツで軍服で踊るのも、様式美が詰まっていて感激しました。みんなが思い描く宝塚って、こういうのなんじゃない?
役者の違いで作品が面白くなっている時点で、この作品は古典化していると言えると思います。マイティー(水美舞斗)と美咲ちゃん(星空美咲)の、ジャンとミリーは想像通りで、安定感を感じました。良い意味で印象が刷新されたのが、ひとこちゃんの(永久輝せあ)フェルディナンド大公でした。ルドルフを逮捕しに来る時が、なんか新しいなと思ったのです。
春妃うららちゃんのステファニー、良かったな。気高さの中に、やるせない気持ちをガンガンぶつけていてヒリヒリした。舞踏会の場面で「ステファニー、静かに」とフランツに窘められるところが好きだったのですが、なくなってしまって残念です。
かがりり様(華雅りりか)のエリザベートもとても良かった!マリーとの対面の場面、エリザベートがやや天然っぽくみえてしまう役作りをする人もいる中、かが様のエリザベートは、何があっても動じない、懐の深さを見せてくれました。生きるテンポが、マリーのような若者とは違う、体温も心拍数も、流れる時間も違っているからこそ見いだせる青春の輝きみたいなものがあるんだろうなあと思いました。
峰果とわ君のフランツは、わたしが期待していたフランツとはちょっと違っていたかな。少し苛烈過ぎるのかなと思いました。ルドルフに対して激高し過ぎているように見えて、なんかちょっと好みではないなと感じました。もう少し、大きさとゆとりが欲しい。峰果君には、それができると思うのです。
ルドルフの妹役の都姫ここちゃんも印象的でした。かわいかった。
新しいお役のマリーの兄、希波らいと君も印象的で良かった。お坊ちゃん感が良い。
れいちゃんのルドルフは、後半の壊れっぷりが最高で、お話に説得力を与えていました。ルドルフがマリーに(たいへんすばらしい開襟で)縋り付いてから、「お前を清らかなままで~」の流れがナチュラルで良かった。昔観たときは「なんかキモいな」と感じたのですが、この壊れたルドルフなら言いそうなことだなと、妙に納得してしまいました。ちゃんと壊れていたのが良かった。れいちゃんのルドルフには、キモい感じがないんですよ。だって、普通に考えたら30過ぎの男が10代の娘と恋愛して心中するって、キモいなって思っちゃうんです。そこを乗り越える説得力があって、とても良かった。男役マジックに頼らず、お芝居と演出の力でルドルフの闇が見えたのが良かったです。いまいち伝わっている自信が無いのですが、これはとても褒めているのです!
まどちのマリーは、娘役の技術がてんこ盛りで、本当にかわいかった・・・!マリーって、若い娘役であればあるほど、難しい役だと思うんですよ。経験と、時間と、技術がないと、出来ない。ただのロリになってしまうと、ルドルフがただのロリコンにみえてしまう。マリーにも闇がないとダメなんです。マリーは、ルドルフがイケメンだから惹かれたんじゃなくて、闇を抱えた人間だから、愚かにも憧れ、慕ったのだと思います。マリーがルドルフからお手紙を貰って歌う曲が、大大大好きなんです。かわいくって、まだ男性への夢夢しい憧れを信じて疑わない女の子の気持ちがいっぱいなのがいじらしい。その幼さが、マリーが眠る前に見せた涙なんだと思います。しあわせそうだった。そのしあわせが、エリザベートの讃えた青春の輝きで、フランツが惜しんだ未来なんだと思います。


【ENCHANTEMENT】
期待してなかった割には楽しみました。野口先生のショーは、衣装がどれもかわいくて、色彩が自分好みなので、どんなモチーフでも楽しい。香水がテーマなのは良いなと思ったんだけど、現代では香水ってあまりにも商業化された具体的なアイテムだから、スイーツみたいに抽象化されたアイコンとしてレビューに持ってくるのは難しいんじゃないかなと思った。どうしても、シャネルやグッチのイメージから離れられない。それをレビューとして楽しみ消費するには、まだ歴史が足りないんじゃないかなと思った。スイーツとか、宝石みたいに、もっと文化的に幅が広いモチーフの方が、イメージが広がって楽しいのかなとか。
振り付けに、香水を振る仕草がたくさん練り込まれていたのが、格好良かったです。それが男役を格好良く見せる仕草になっていて痺れました。
この場面は、男役じゃなくて娘役で観たかったな、という場面があって、少し勿体なく感じました。出ている生徒に不足はないのですが、今この時期に、この持ち味で売り出している男役さんにさせる役なのかなあと疑問に思いました。
れいちゃんが真ん中で、男役がフォーメーションを君で踊る場面は、とても花組らしさを感じました。濃さと抜け感に、蘭寿とむ時代の花組を思い出しました。揃っていて、でも個性があって「花男だ~!」って思うんだよね。花組のお兄さんたちが適材適所で色気を振り撒いていたのも良かったです。
友だちが希波らいと君神推しで、めちゃくちゃ推されまくっているからか、途中かららいと君しか観られなくなりました(笑)ロケットのらいと君のウェスト、衣装が余るほど絞れていて、とても美しかった。男役さんがあそこまでウエストを絞るのって、なかなか見ないから、誇り高きくびれに釘付けになりましたよ。なんか途中から「え・・・?好きかも・・・?」と思い始めたりして、これから花組を見る楽しみが増えました。


【1年ぶりの花組
とても楽しかったです。マイティーが専科に行く前に、見られて本当に良かった!れいまどが大変素晴らしいこともわかって、とても嬉しかったです。
そういえば、久しぶりにB席に座りましたが『この視界で3500円!?良いんですか!?見切れが一切ない、銀橋花道が全部見えて3500円!?音も台詞も聞こえるのに、まじですか!?』って思いました。宝塚しゅごい。あと、以前はこんなの当たり前だと思っていたことですが、上演中に私語がない、カサカサ音がしない、スマホ見る奴がいない(鳴らす人はいた)前屈みがいない、って、こ~~~~~んなにストレスフリーなんだって感激しました(笑)