すーぱーからしちゃんねる

からしがみたものをまとめたものです。

花組東京宝塚劇場『はいからさんが通る』

【わたしのはいからさん】

コロナがなければ、あの公演もこの公演も、SS席での観劇予定があったのになあ(アナスタシアとかアナスタシアとかアナスタシアとか…)という気持ちを燻らせている人は多いのではないでしょうか。わたしもだよ!ちくしょー!幻の大劇場1列目センターよ。君はどこに。

ところが、友会が数年に一度の友情を見せてくれて、3列目どセンターでの観劇が叶いました。1列目は誰も座っていないから、実質2列目。やったー!!新生花組の圧倒的な美と煌めきを浴びて、過労でごそっと増えてしまった吹き出物も、一晩でキレイさっぱり引っ込みました。すごい。どんな美容液やサプリメントよりも、SS席に3時間座っているだけで効果バツグン。こういう美容プランを販売したらいいのに。美容目的の観劇。ありだと思います(笑)

さて、わたしの『はいからさんが通る』はこれが初めての経験です。原作は未読。アニメも見ていません。スカイステージで初演はさらっと見ています。小柳先生のTHE2.5次元もの!っていうイメージが強かったかな。プロローグにキャラクターが勢ぞろいして、歌って踊って、これがアニメだったら、紅緒さんの声で「この番組は、○○、△△、ご覧の提供で〜」っていうナレーションが入りそうなやつね。それ天河でも観た!
ものすごく意気込んで観る!っていう感じではなかったのは、再演だったからかな。でも、大劇場での休演や、度重なる演出の変更のニュースは耳に入っていたし、劇場の客席に座った時には『やっとわたしのはいからさんが通るのね』という感慨が湧きました。


【全体像】

なにせ超近いお席だったもんで、全体なんか見えちゃいないんですけれど。だからこそ、真ん中がとてもよく見えたのと、下級生の個性がよく見えました。銀橋をれいちゃん(柚香光)が歩くたびに、つま先から指先までに満ち満ち溢れた美に震えたし、はいから極道を歌う華ちゃん(華優希)の溌剌としたキュートさに心が跳ねた。あきらくん(瀬戸かずや)の冬星の、熱のこもった芝居をビシバシと感じた。展開を知っているから、ワクワク感は半減していたのですが、役者たちの生のお芝居の新鮮さに痺れました(今はそんな機会すら珍しく新鮮なのである)
出演者が減った分、ほやほやの下級生も前に出て一生懸命お芝居をしていて、お顔がよく見えました。わたしが見たのはB日程。いつもの公演スタイルだったら、セットの影に入っちゃうような学年の生徒たちが、責任感を持って、誇らしげに場面を作っている姿に感激いたしました。
セットの上下の七宝柄に、大正時代のハイカラ感があって素敵でした。あとは、屋台がとても美味しそうだった。帰ってからおでん食べちゃったもん(笑)
お衣装もとても素敵でした。特にモガ達が可愛かった!現代の流行を取り入れつつ、モガのレトロ可愛いおしゃれを表現しているのはさすがだなあ。同時代のパリより東京の方がおしゃれで可愛いってどういうことなの!?って思った(アナスタシアのパリのお嬢さん達の衣装がアレだったのよ…)
原作を知らないので「ここをああすれば、もっと良かったのにい〜!」みたいな気持ちはなく、楽しく観ました。あ、でもフィナーレ。大正バージョンだったのですが、軍帽のせいでお顔がほとんど見えず、どこに誰がいるのかを把握しようと頑張っていたら終わっちゃったのが残念でした。リピートする組ファンには良いかもしれないけれど、ずっと顔が見えないのは一見さんにはハードルが高いよ…。


【キャスト】

実は今まで、柚香光さんに注目して花組さんを見たことがなかった。恥ずかしながら。真正面かられいちゃんを見たのは初めてです。れいちゃんは、”美”そのもので、銀橋を歩くたびに脳が処理しきれなくて困った。伸ばした指先まで魂が篭っていて、熱かった。れいちゃんに熱さを感じたことはなかったので(どちらかといえば、クールなタイプだと思っていた)意外だった。一幕ラストでぶるぶる震えてるれいちゃんを見て『あ、この人ルドルフ経験者だったわ』と思った。銀橋で震えるのが上手い人はみんなルドルフ経験者だと思ってますけど何か。伊集院少尉という、原作を読んだことがないわたしですら知っている王子さまキャラクターを、余裕を持って、格好良く、伸び伸び演じている姿が清々しかった。記憶喪失の少尉を眺めながら、ずっと「銀英伝やってくれないかな!?銀英伝やってくれないかな!?」と絶叫していた。脳内で。あのマント捌きでラインハルトが見たいよお。役者も揃っているし、別箱でもできるし、やってほしいなあ。
そしてね、なんといってもフィナーレですよ。男役軍部のセンターで踊るれいちゃんの格好良いこと!お披露目にして花組トップスターの貫禄があった。きっとそれは、れいちゃんが大きな大きな覚悟と責任を背負っているから、見えたものだったかと思う。そして、相手役への華ちゃんへのアプローチが、とてもスウィートで、やわらかで穏やかだったのが、本当に素敵でした。男役さんが娘役さんを愛しんでいる姿を見るのが大好きなので、至福のデュエットダンスでした。ありがたやありがたや。

華ちゃんは、とにかく動きが可愛かった!大きなリボンまで、体の一部みたいだった。花村紅緒さんが、笑ったり、怒ったり、きゅんとしたり、意地を張ったり、恥ずかしがったりする様が本当にラブリーだった。この愛らしさは、華ちゃんの個性だと思う。そう、女の子目線で可愛いんだよね。ブッ飛んだもんぺ姿ではいから極道を歌い上げる紅緒さんが、本当に本当に可愛かった。みんなが華ちゃんのことを好きになるのがわかったよ。思わず応援したくなるような、彼女と一緒に素敵な登場人物たちに恋をしたくなるような。それこそ少女漫画のヒロインそのもの。彼女が一生懸命であれば一生懸命であるほど、応援したくなるの!
あ、そうそう。矢絣柄のマスクを付けていたら、パレードで紅緒さんが気付いてくれて、うれしかったです。ちょっと恥ずかしかったけれど、勇気を出して付けて良かった!

あきらくんの冬星は、序盤はやや三枚目でありながら、紅緒への気持ちを自覚したあたりから、抜群に格好良かったです。少尉に詰め寄る場面では、芝居が熱くなってゆくのを感じられて、役への入り込み方が流石の上級生だなあと思いました。銀橋での歌に入る前、グッと感情が盛り上がっているのを感じました。ああ、生のお芝居って、いいなあ。
フィナーレで、きらきらぐるぐる回るミラーボールを見つめていたら、目の前にあきらくんが立っていてめちゃくちゃ驚いた。あきらくんの大きくて男役さんらしい手を、間近でちゃんと見るべきだった。迂闊だった。

マイティー(水美舞斗)はさ、表情筋どうなってんの!?片目を瞑っているのに、表情が豊かなので、役者さんの表情筋って凄いなあと改めて思いましたね。鬼島軍曹は、原作ではもう少し格好良い場面があるのかしら。わたしとしては、ちょっと物足りなかった。マイティーヤン・ウェンリー銀河英雄伝説)とかプガチョフ(黒い瞳)が見たいなあと思った。
本編では物足りないなあと思っていましたが、フィナーレで、ニヒルなウィンクとニヤリ顔が拝めたので満たされました。合掌。

ひとこちゃん(永久輝せあ)はすっかり花男になられていて。でも高屋敷さんは衣装も変わらないし、ボサボサだったので、次回作に期待です。キラキラしてるひとこちゃんを待ってる!

聖乃あすかちゃんの蘭丸、すごく可愛かった〜〜〜。男役が女装すると出てくる謎の違和感もちゃんと(ちゃんと?)出ていて、キャラクターも立っていて、紅緒ラブメンの中では一番好き。かわいいから。

花組は娘役さんの層の厚さも魅力だと思っているので、そちらも堪能することができて嬉しかったです。
音くり寿ちゃんの環さんとエトワールがとっても楽しみでした。環さんは登場した瞬間から環さんで、劇中では描かれていなかったけれど、紅緒さんと女学校でいろんな話をして、仲良くなっていったのが見えるようでした。本当は環さんが捌ける時、拍手したかったよ〜〜〜〜!!でも、ここで拍手が入らないのが口惜しいかな、宝塚なんですよね。その代わりに、エトワールでいっぱい拍手しました。本当に天使の歌声だった。
ひらめちゃん(朝月希和)の吉次さんも楽しみで、宝塚の芸者さん役の華やかさが素敵だったな(最近は歌舞伎をよく見るので)とか、ラリサのりりかちゃん(華雅りりか)は、難しいお役なのにクドくないのが流石だなあと。そして、フィナーレで如月メイクのままモガ姿で躍りまくる鞠花ゆめちゃんが最高だった。すき。

他にも、パレードで自分の名前をでかでかと掲げて下りてくる牛五郎(飛龍つかさ)がとってもラブリーでした。自分の名前を持って階段降りする役なんて前代未聞なのでは?愛おしいわ!
チンピラ役でも芝居の巧さが際立つ峰果とわくん。好きですその存在感。
そして、印念中佐の優波慧くん!上手かったなあ〜〜。

専科の美穂圭子さんの美しい台詞まわし(もう少しお歌が聞きたかったなあ〜)と、英真なおきさんの思わずニコニコしちゃうお芝居も、宝塚のあたたかさと懐かしさ(そんなに離れちゃいないけどさ!)があって、ほっこりしました。


【すみれの園】

あらためて宝塚歌劇団って、戦争が始まろうが、震災が起きようが、疫病が流行ろうが『絶対にそこにある』から凄いなぁと思った。

おとめたちが、切磋琢磨して夢を追い、その夢をひとつひとつ叶えて輝く瞬間ほど、美しいものはない。彼女たちの人生に魅せられて、わたしは自分の人生に光を見出す。トップに登る人、そこから飛び立とうとする人、それぞれにドラマがあって、掛け替えのない輝きがある。



ある日、有楽町のお花屋さんで見かけた彼女は、まだ女の子みたいで、少し背伸びをしてお花を選ぶ姿が、本当に可愛らしかった。相手役さんのために、健気なお買い物をする姿が、フェアリーそのものだった。ご卒業の日まで、どうかどうか、輝いてね…