すーぱーからしちゃんねる

からしがみたものをまとめたものです。

かしらかしら、『少女革命ウテナ』をご存知かしら。

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誘おう。君が望む世界へ…!

【フォロワーさんにすすめたい】

少女革命ウテナ』というテレビアニメをご存知でしょうか。おそらく、わたしと同年代(アラサー世代)の方はご存知かと思います。観たことなくても、「名前だけは聞いたことがある」っていう方も多いと思います。世代ではない方は全くご存知ないかも。『新世紀エヴァンゲリオン』や『美少女戦士セーラームーン』のように、社会現象になることもなく、メディアで取り上げられたり、リバイバルされたりすることもなく、放送開始から20年が経ちました。何故、今までにこのアニメがそれらと同じだけの熱量で語られることがなかったのか、疑問に思います。
20周年記念展が開催されたり、さいとうちほ先生が続編を連載されたり、2.5次元ミュージカルが上演されたり。Blu-rayボックスも発売されました。一生を掛けて愛したい作品を手に入れたときは、しあわせだった。愛とリスペクトで表された舞台で得た経験はほんとうにしあわせだった。
Twitterで連日ウテナウテナと呟いていると、年上のお友達が興味を持って下さった。ボックスをお貸ししたら、見事にハマって下さった。今までも友人にすすめる機会はありましたが、彼らの感想は「百合なんでしょ」「鬱アニメ」等々、わたしが得た理解とは程遠いものでした。こんなに面白くて深いのに。わたしはこの作品から、生きる上でのヒントをたくさんもらっている。一生をかけて愛したいと思ってる。そんなに深い作品なのに、なかなか理解されないんだな〜と思っていたのですが、最近わたしの周囲でウテナブームがじわじわと起きているのを感じます。
そんなこんなで、フォロワーさんに全力でウテナをプレゼンする記事を書かねばならない気がしてきた。誰かになにかを勧めるのが苦手なのですが、頑張ってみようと思います。

少女革命ウテナとは】

原作:ビーパパス(オリジナルアニメを製作するために、幾原邦彦氏が作ったクリエイター集団)監督:幾原邦彦、構成:榎戸洋司、キャラクターデザイン:さいとうちほ、長谷川眞也。 テレビシリーズとして1997年4月2日から同年12月24日まで放送され、全39話あります。様々にメディアミックス展開されていますが、ベースとなるお話はテレビアニメ版です。それぞれについては後に語ります。

幼い頃に両親を亡くした主人公:天上ウテナは、自分を救ってくれた王子様に憧れ、自らも王子様になる決心をします。鳳学園に入学した天上ウテナは、『薔薇の花嫁』と呼ばれる少女、姫宮アンシーと出会います。彼女とエンゲージした者には『世界を革命する力』が与えられます。そして『薔薇の刻印』と呼ばれる指輪を持った生徒会メンバー(デュエリスト)たちが、彼女を巡って決闘を続けています。『薔薇の刻印』は、ウテナが王子様からもらったものと同じであり、彼女もまたデュエリストとしてこの決闘ゲームに巻き込まれます。ウテナは決闘ゲームの背後に存在する『世界の果て』に迫ってゆくのですが…

以上が物語のあらすじなんですけど、さっぱりわかんないよね(笑)友だちに「Wiki読んだけどさっぱりわからない!」と言われたのにも納得する。わたしだって、ウテナは何度も何度も繰り返し観ていますが、『よくわからないけど、本当のところはよくわかる。それらは、よく感じ取れる。非現実的、或いは全てが現実であって、実際的であるから、見出せる真理がある』という感想を抱く(自分で言ってても意味がわからない)つまんない事言って興味がうせたらごめん(面倒くさい奴なんですわたしって人は)

【すごいところ】

その1・キャラクターの個性がすごい
主人公の天上ウテナは、鳳学園指定の“女子の制服(セーラー服)”を着ずに、“学ラン”を着て登校しています。男装した女性、と聞くと、『ベルサイユのばら』のオスカルを連想されると思うのですが、ウテナはオスカルとは全く違う存在です。オスカルは、跡取り息子のいないジャルジェ家の末っ子として誕生し、父親に『男として生きなさい』と道を示されます。彼女もそれに抗うことはなく(気持ちが揺らぐことはあっても)、男として社交界に存在します。それに対してウテナは、『王子様になりたい』と自ら望み、王子様であろうとします。そこにオスカルとウテナとの生き方の違いがあります。ウテナは学ランを着ているけれど、女子なんです。「汗臭い男子とバスケするのは嫌だよ」とか言います。その設定が90年代に生まれていたってことが、凄くないですか?
※『女子』という立場に対する認識を明確にせずして『女子』を語るのもどうなんだろうと思ったけど、ここでの説明は省きます。ジェンダーの話がしたいんじゃないし。
ウテナは普通の女子(これも引っかかる言い方だけど、それがお話の軸になる回もあるので許してほしい)なので、恋愛対象は男性です。ということは、相手役っぽいキャラクターも存在するわけです。姫宮アンシーじゃないの?いいえ、違います。ウテナは百合ではないので、最終的にアンシーを選ぶ選択をしても、恋愛の対象にはなっていません。

生徒会会長の桐生冬芽は、初めは世界を革命する力を求め、世界の果てと通じながらウテナと対峙してゆくのですが、彼の持つトラウマと、ウテナの存在がリンクした瞬間に、相手役としての土俵に上がってきます。宝塚でウテナを上演するなら、トップスターはウテナ、トップ娘役はアンシー、2番手男役は冬芽を充てたいです。実はこの物語でウテナの次に好きなのが冬芽なんですけれど、男友達からはものすごく不憫がられている奴だったりします。学園イチのプレイボーイがウテナに惹かれている自分に気が付いて、彼女にアプローチするのに…。ああ、世界を知っているおとなの男には敵わなかったのね…かわいそうに。そして彼の妹の七海様がめちゃくちゃ高飛車でブッとんでてかわいいです。

じゃあ冬芽の次に好きなキャラクターの話をするね。有栖川樹璃さんなんですけれど。彼女もウテナと同様に男子の制服(生徒会仕様の)を着ています。彼女は同級生の女子に恋をしています。密やかに奇跡を願う彼女は、世界を革命する力を得ることによって奇跡を否定したいがために、決闘に挑みます。そして、フェンシング部部長代行を務め、モデル業をこなし、美しき女豹と下級生から恐れられている。樹璃の想いが相手に届く事は叶わない。でも、彼女に恋をしている男子は、どうしたらいいの?その彼の前に死が迫っているとしたら?激しくドロドロな三角関係になるんだけれど、これって現実の世界でもあるあるな話なんじゃないのかな。繰り返しちゃうけど、この設定を90年代の少女向けアニメにブッ込んでくるビーパパスは本当にすごいと思うんです。
時には個性が省略されていたモブにまでキャラクター性を宿らせ、物語の中心に持ってくる展開もあのです。ひとりひとり語りたいけれど、キリがないので、『見てください』としか言えないのが悔しーよー。見てよー。

その2・演出がすごい
少女向けアニメに寺山修司のアングラ芝居の要素を取り入れるだなんて、ぶっ飛んでる以外に言いようがないと思うのです(笑)
決闘の場面の挿入歌は、『天井桟敷』、又は『万有引力』のアングラ劇団の舞台で実際に使用された楽曲です。『絶対運命黙示録』というナンバーも、この作品のために書き下ろされたものではなく、 J.A.シーザーがかの劇団のために書いた曲です。子どもにとって新鮮な、怪しい日本語。華美な絵面とおどろおどろしい変拍子のミスマッチ。さいとうちほ先生の絵にこの音楽を乗せようと思った、その発想がスゴイよね。
そして、演劇的な演出は楽曲のみに留まらず、狂言回しの存在、宝塚歌劇のデュエットダンス的な決めポーズ。脇に刺さって見える剣。寺山芝居を想起させる、点滅する矢印。せり上がりのようなアングル。…ね、気になってきたでしょ?

その3・メタファーがすごい
メタファーの嵐だったり伏線の嵐だったり。その伏線も回収されないまま、謎は謎として終わってしまう部分もあり、奥が深すぎて、作った人たちも把握しきれていなさそう…。受け手のイマジネーションを最大限に信用して利用して、閉じられる物語なんだと思う。
何度も引用されるヘッセの『デミアン』の一節。その出典を知らない世代には新鮮だし、知っている世代には刺激的だし、こういう引用を隠喩に至らしめているところが、大人になってから見るこの作品のすごいなあ〜、と感嘆してしまうところなのです。

【どれから見るべきなの問題】

アニメ・コミックス・映画版・ゲームetc…様々なメディアで展開されている少女革命ウテナの世界。『見てみたいんだけど、いっぱいあるんでしょ?どれから見たらいいの!?』という方に、からし的おすすめの順番をご紹介したいと思います。様々なクリエイターたちが、様々なウテナの世界をみせてくれます。それぞれの設定や展開に微妙な違いがあって、それぞれに面白いよ!

(1)テレビアニメシリーズ『少女革命ウテナ
いきなり全39話を見るのはハードルが高い!かも知れませんが、OPやED、決闘バングを飛ばしてしまえばお仕事やお勉強に忙しい方でも3連休があれば見終わります!(でも、個人的には次回予告は飛ばさずに見て欲しいよ!)定期的に動画配信サイトで全話無料配信をやっていたりします。
ニコニコ動画で全話無料配信があるみたいなので、この機会にぜひどうぞ(配信期間:2018年5月26日〜6月3日)
ch.nicovideo.jp


(2)劇場版『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』
少女向けというよりは、大人向けなテイストになっています。鳳暁生の声が及川光博氏だったり、冬芽の設定がアニメ版と大きく違っていたりと、どちらかというと性的で生々しく、感傷的な印象があります。ウテナを百合だと誤解されていた方には、この劇場版のビジュアルの印象でそう感じられたのかも。主人公が突然車に変身したり、アンシーがカーチェイスをはじめたり、びっくりするほどアバンギャルドな展開なんですけれど、その本質は同じもの、少女革命であるというところには変わりありません。わたしは劇場版の冬芽が大好きすぎて、万が一宝塚でウテナをやるなら、劇場版のシナリオでやってほしい!!と思っています(つまり、ウテナと冬芽にロマンスがあって、そこが大人向けであり宝塚的だと思うので)

(3)さいとうちほ作『少女革命ウテナ
最近、新装版6巻が発売されました。文庫版だと3巻です。ちゃお誌で、アニメシリーズとほぼ同時期に連載されていました。こちらも、樹璃の想い人が冬芽であったり、幹がウテナに惹かれていたりと、アニメ版とは設定が違います。当時、さいとう先生が同性愛を描きたがらなかったこと、当時の少女漫画におけるニーズ(矢印がみんな主人公に向いているドリーム的展開)が背景にあるのではないかと踏んでいますが、これはこれで面白いです。アニメシリーズのシュールでナンセンスな表現が苦手で…という方には、漫画版の方が取っつきやすいのかも知れません。

(4)舞台版『少女革命ウテナ〜白き薔薇のつぼみ〜』
2018年3月8日〜3月18日に上演された2.5次元ミュージカルです。ここまでこの作品を愛していると、2.5次元化って受け入れられなかったりするものなんですが、この公演は素晴らしかったです。近々円盤化される予定ですので、ウテナにハマっちゃった!っていう方はなんとしてでも見ていただきたいし、再演してほしいよ!!
参考記事
karashi-channnel.hatenablog.com



(5)さいとうちほ作『少女革命ウテナ After the Revolution 』
誕生20周年を記念して書き下ろされ、月刊フラワーズで連載されていた新作です。コミックスでは1巻でおさめられています。キャラクターたちの20年後を描き、美しく広がって行くストーリーになっています。わたしのように、少女期にウテナと出会って大人になった人と、最近この世界を知った人とでは、お話の広がり方が違うのでは?と思うところでもありますが、その感じ方の違いを語れそうな作品になっているのが嬉しかったです。そう、素晴らしい作品には、語れるところが充分にあるものです。


他にもセガサターンのゲームソフト(恋愛系だったそうですが、我が家にはセガサターンがなかったのでプレイしたことはない。年上のお友達に内容を聞いて草を生やした程度にしか知らない)とか、三ツ矢雄二版のミュージカル(こちらはコンプリートボックスに収録されていて、ウテナを宝塚OGの方が演じているよ!)とか、月蝕歌劇団によるアングラ劇(お知り合いの方のサロンで映像を観たことがあるけど、酔っ払って見たので記憶があいまい)などもあります。

【かなり重めのファンなので】

この世界を創り出したクリエイターの方々は、ウテナの世界観を「よくわからん」と回顧されているみたいですが、その「よくわからん」作品から自分の生き方を見出して大人になった、わたしみたいな人もいるのです。
わたしはかなり重めのファンなので、大好きなこの作品をむやみやたらにオススメして共感されなかったり理解されなかったり、っていうのを恐れたりするんだけど、最近はそんなこともなくなってきた。
Me Tooの時代っていうか、男女の問題以前に人間の尊厳という視点で世界を考え直そうっていう全人類的なムーブメント。トップ娘役だって怒りのロケットダンスを踊る。後は少女時代を卒業して、アラサーになって、やっと「女の子であれと世界に求められ、又は自らあろうとしている時期を脱して、人間として発言し、生きるわたし」を獲得した世代に自分が突入したっていうのがあるのかも知れません。きっと、先代の少女たちはそれぞれにがむしゃらに来る現実と戦って、世界を革命して、わたしたちに次の世界を託してくれたんだな。みんなウテナだったし、アンシーだったんだ。わたしだって、ウテナだったし、アンシーだった。もしかしたら今だってそうなのかも知れない。絶対運命黙示録は、人間として生まれた私、そのすべての中に確実に存在している。そして、その世界はまだ革命されていない。

今こそ愛されるべきこの作品に、もしかしたらあなたの進むべき道が、用意されているかも知れませんよ。