すーぱーからしちゃんねる

からしがみたものをまとめたものです。

月組東京宝塚劇場公演『カンパニー』『BADDY』

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まだミッドタウン日比谷に行けてません。地下は何度も通っているのに。
あの辺りの景色も随分と変わりましたね。とはいえ、わたしが日比谷通いを始めた頃には、既に取り壊し作業が始まっており『永遠に工事してんのかな』と思ってました。
春の時期は忙しく、花粉症もつらく、今年はお花見にも行けず。宙組が始まっていても、ムラに行く隙もなく。
忙しい4月になんとか時間を作って、月組を観ました。
泣きました。
ムラで同じ公演を観たのに、とても新鮮で、舞台から飛んでくる感情の波をビシバシ感じて、泣きました。
そして、東宝がわたしにとってのホームなんだなと思いました。どんなに街の景色が変わっても、あの劇場には夢が詰まっている。
日常生活に近い空間だからこそ、見えるもの感じられるものがあるんだなぁと思った。非日常でしか見られないものもあるけど。

そして、席は舞台から近けりゃ良いってもんじゃないなと(笑)
結局は真ん中〜後方のセンター席が一番なんだなと。
ムラで見えなかったものがたくさん見えて、とてもしあわせな時間に、心が洗われたのでした。じゃぶじゃぶ。

【カンパニー】

カンパニーはカンパニーだった。
ムラで観た時と同じだった。良くも悪くも。前回の記事で書いたことと同じ感想を抱くなど。
でもさ、東京夜のお客さんはシビアだね。スベるところはちゃんとスベってた。客席が引いてる瞬間、少なからずあるよね…
だって、さっきまでオフィスで働いてた人が少なからずいる客席だもんね。距離感掴めないよね。
でも、泣いちゃったんだよ。チョロいから。
特に、早乙女わかばちゃんの娘役としての包容力というか、温もりのあるお芝居に泣けた。「これは私の引退公演なのよ!」のあたりから、涙腺刺激されてたんだけど、宝塚のお芝居ってどうしても中の人のこと(さよなら公演中だとか特に)を念頭において観てしまうから、那由多くんにキスしてあげる場面は本当にだだ泣き。わかばちゃんはプリンセスだった。泣いている男の子を、王子様にしてあげられる、お姫様だったよ!
後は憧花ゆりの組長の感度の良い芝居。客席のカラーを把握して、ひとつひとつのセリフを発しているんだなあと思いました。
おもしろいな!と思える部分があってよかったです。

【BADDY】

うおおおおおおう!? BADDYめっちゃ面白かったぞ!?
ムラで見たときのノレなさが嘘みたいに中詰から大号泣でした。
退屈だなんて説教くさいだなんて言ってごめんなさいウエクミ先生。最高でした。シートベルトなしのジェットコースターでした。泣きました震えました。
BADDYを普通のショーだと思って観たから楽しめなかったんだな。この作品は宝塚歌劇による宝塚歌劇のパロディなんだと理解すれば、もう怒涛のエンタメに、飲み込まれて揉まれてぐるぐるぐちゃぐちゃになるしかなかった。
様式美や型を守って更新された世界の斬新さ、痛快さに痺れました。

「若い人はすぐ型破りをやりたがるけれど、型を会得した人間がそれを破ることを『型破り』というのであって、型のない人間がそれをやろうとするのは、ただの『かたなし』です」

という先代の中村勘三郎さんの言葉を思い出しました。宝塚には会得した、というか確立された型や様式があるからこそ、破天荒なこの作品が成立し、人々の胸を打ち、雷に撃たれたかのような衝撃と快感を与えたのでしょう。しかしながら、破天荒さで極まった作品とは言い切れない部分はあると思います(言語表現の多用・楽曲のジャンルに多様性がない・没個性的な”役”という制約、とか…)だから、こんな風に『型破り』な作品や実験的なショーやレビューが次々に打ち出されて、わたしたちをあっと言わせてくれたらいいなあと思います。待ってる!!

・バッディ/珠城りょう
たま様って、もう誠実さが溢れてるじゃないですか。もう存在感が100%アポロン的じゃないですか。そんなたま様が「邪魔だ!どけ!!」と歌い出した瞬間に理解出来る、このBADDYという世界観。
ムラで観たときには思わなかったんだけど、開放感がものすごい。『珠城りょう』というキャラクターの枠の中には見出せなかった、彼女の無邪気さ、ノリの良さ、サービス精神が爆発しているなと。そこが超気持ちいい。快感。本人も、ものすごく楽しんでバッディを生きているのが、肌で感じられる。そういう、既成概念やパブリックイメージをぶっ壊して、乗り越えてこちら側に迫ってくるようなものが、最高に格好いいと思っています。たま様格好いい!!
バッディ覚醒の場面がほんとうに大好き。銀橋での変顔(笑)からの、主題歌!客席への煽り!そしてテンションは最高潮に。客席の手拍子が、バッディへの『いいぞ!もっとやれ!!』という掛け声みたいに聞こえてくるんだよね。この一体感が素晴らしく楽しい!
バッディ、ヤツの魅力は一色だけじゃない。実はいろんな色のバッディがそこに居て、わたしを楽しませてくれた。

・グッディ/愛希れいか
かつてトップ娘役に、こんなにも『怒り』という感情が許されたことがあっただろうか。その怒りの対象が、トップスターであったことが、あっただろうか。恋して惹かれている相手への、こんなにも純粋な『怒り』を客席にぶつけられる、ちゃぴ(愛希れいか)の稀有な存在に感動する。
女の子はいつもやさしく微笑んで、乱暴な振る舞いはありえない。嫌なことをされても顎で受け止めてスマイル…。むきー!そんなの人間じゃありません!!生きている手応えを奪われてしまう!!
喜怒哀楽を許されなかった、わたしのなかの女の子が震えていました。いい子がこんなに怒ってもいいんだ。かわいい女の子が怒ってもいいんだ。
ロケットで大号泣するなんて、なぜ涙が出るのか自分でもわからなかったけれど、きっとわたしの中で死んでしまった女の子が泣いてたんだと思う。
順番めちゃくちゃだけど、グッディ捜査官の衣装まじかわいい。特にプロローグの衣装は、タカラトミーとコラボしてお人形出して欲しかった。グッディの腕時計型の電話?無線?もめちゃくちゃ可愛くて、女児向けの玩具みたいで、ほんとキャトル仕事しろって思う。600円くらいのチープな作りでいいから、幼稚園児が大事にとっておいたお年玉を使っちゃうような心ときめくグッズぐらいだしていいと思うよ!だって、みんなちゃぴちゃんになりたいじゃん!プリキュアとちゃぴちゃんは同等の存在だよ!わたしの世代だったらセーラームーンだけどな!!

・スイートハート/美弥るりか
スイートハート様こそ型破りな存在なんだよ。自由で自分に正直で、自分の人生を楽しむことについて、責任を持って生きてる感じが格好いい。宝塚のショーで男役×男役の場面はめずらしくないけれど、スイートハート様とバッディ・ポッキーの絡みが耽美に扱われていないのがとてもよかった。耽美主義っていうのは、道徳的功利性を廃して美を享受し、最高の価値を置く立場。道徳的功利性に何の価値もない月の世界では、べつに普通のことである筈なんだよね。しかも地球にはそういう人たちが存在していない(わたしは排斥されたと解釈している)ので。なんか、同性のからみを無駄に仰々しくショーアップするのが、個人的には好きじゃないので。だからなんていうか、彼が楽しそうにしていると、ハッピーなんだよね。その辺りに、このショーの21世紀らしさを感じます。
ていうか、スイートハート様って、バッディのそういう相手でしょ?友達以上恋人以上的な。それを美弥さまが演じているっていうのに萌える。上級生2番手が左側に立ってる感じが好きですね〜〜。ナイスと言わざるを得ない。

・ポッキー巡査/月城かなと
そもそもわたしはポッキー巡査というキャラクターが好きなんだけどね。
れいこさん(月城かなと)には、その美貌の奥の方に、そこはかとなくひょうきんなキャラクターが潜んでいる気がする…。と思っていたので、そんなれいこさんがポッキーを演じてくれて嬉しい。ポッキー推しとしては、れいこさんありがとうって感じ。美人じゃないとあのコスチュームもメガネもギャグにならないからね!ポッキーが楽しそうだとわたしも楽しいよ!わたしが一番好きなポッキーは、銀橋で手錠を切っちゃう→人質になっちゃうところ。コントかよっていう事をおもいっきりやられちゃったら、笑うしかないもん。

・クール/宇月颯
とし様(宇月颯)のことは、もともと大好きなんですけどね?こんなに男クサい男役さん、最近いないよね。なのに退団しちゃうんですよねええええええ。辞めるのやめてよおおおおおおお。と思っているひとが、わたし以外に5億人くらいいると思うんですけど。
クールさんと王女の物語がね、ほんとね、ウエクミ〜〜〜〜〜〜〜!!って感じだよね(語彙を無くしつつある)デュエットダンスの影ソロを、クールが、そして『宇月颯さん』が歌っていることに鳥肌が立つし、いま思い出してもぞわぞわする。グッディとバッディの心情を歌えるのって、クールだけなんだよ。そして、フィナーレのクールはただの『魂(男)』となって、愛していながらも背を向けた人も、王女ではなくただの『魂(女)』となって、踊っている。この場面だけ見ても美しくて泣いたけど、プログラム見て、ふたりが『ただの魂』になっていることを知って震えた。死を以って、すべてのしがらみから脱して、ふたりは愛し合えるようになるのですね。死は救いには成り得ませんが、差別や排斥が、いかに人間の幸福の妨げになるかを、あらわすことは出来るのですね。

・ホット/紫門ゆりや
ゆりちゃん(紫門ゆりや)といえば、ロイヤル91期のイメージなので、いつも白いブラウスを着ている王子様的なイメージなんですけど。でも、ホットちゃんって、悪いことが大好きで、ハイテンションで、なんにも考えてなさそうなキャラクターって、全然ロイヤルじゃないー!!でも基本的にはイイ奴っぽそう。適当なことは言ってても、嘘はつかなさそうだし、友達を大切にしそう。中詰、銀橋に飛び出してくるホットがめちゃくちゃ好きです。「イエエェェェェエェエエエエエエエエイ!!!!おれは!悪い事を!いっぱいやってやるぜー!!」ってなってるの超かわいい。みんな善と悪の中で葛藤し始めてるのに、ホットだけは特に悩んでなさそうなのが、本当にホット。

・王子/暁千星
そもそも、ありちゃん(暁千星)が好きなんですけどね。初舞台のころから注目して見てるから、「ありちゃんかわいいな〜」とほっこりした気持ちで見ていることが多いです。そしてやっぱり、王子もかわいいね。ありちゃんは童顔なのに、圧倒的な左側感がすごくて強い。そんなありちゃんの持ち味を最大限に引き出すのが、この王子というキャラクター。きらきらぴゅあぴゅあしてるのに、中詰で悪への憧れを歌い、最後にはかぼちゃパンツを脱いで悪の華を踊る。わたしのニーズに合致している。ウエクミ先生と固い握手を交わしたい。
悪いことを知って、いけない男になったありちゃん王子から、2度もウインク喰らったときは死ぬかと思った。しかも、ここぞ!!っていうタイミングでかましてくるからな…。つらい…かっこういい…つらい。

【みたことないものみてみたい〜〜】

ショー作品デビュー1発目で、こんなに濃ゆい作品をかましてきて、じゃあ次はどうなっちゃうの!?と心配になるけれど、上田久美子先生の次のショー作品も楽しみにしています。何年でも待ちます!
小柳先生のショー作品も見てみたい。どんな歌詞を書くのか、どんなドリームをぶつけてくるのかな〜。