すーぱーからしちゃんねる

からしがみたものをまとめたものです。

ご贔屓に落ちた日

f:id:karashi-channnel:20180320232931j:plain
 おもいで

【2015年4月7日】

2015年4月7日の事を思い出そうと思います。
なぜ、この日付を今もなお覚えているかと言うと、この日がわたしにとっての記念日だからです。この日が近づくと、気持ちがそわそわしてきて、思い出すのです。
この記事は、本当に私的な、日記にようなものなので、劇評でもなければ何かのレポでもありません。人によっては『はあ?何ソレ自慢??』と受け取られても仕方がないような、しょーもない内容です。完全なるチラ裏。でも、どこかに留めておきたい大切な思い出であり、今だから残しておきたい気持ちです。

【すみれ色の履歴書】

宝塚歌劇との出会いは、高校生の時でした。当時わたしは、プロミュージシャンの先生のレッスンに通っていました。基本的なボイトレとか、楽器を習っていて「将来はミュージシャンか作曲家になりたいなあ」と夢見ていた時期でした。わたしの周りには本格的に芸能活動をしていたり、事務所に所属してレッスンやオーディションの日々を送る同級生たちが少なくありませんでした。そんなクラスメイトはとても華やかで、スタイルも良く本当に綺麗。中には宝塚音楽学校の受験生も居ました。そんな環境にいると『メンタルも弱く、スタイルも顔も中の下であるわたしには、無理なんだろうな』とはっきりと思い知ります。ただ、レッスンをしてくれていた先生たちは、わたしの個性を買ってくれて、いつも評価してくれていました。だから頑張れていた。そんな時に先生が、宝塚歌劇、特に男役の歌について教えてくれた思い出があります。歌い方だけじゃなくて、自分の見せ方を参考にしてみて、と言われてビデオを観たのですが(宙組エリザベートとか、宙組のショーだったかな?)実は当時はあんまりピンと来ませんでした(笑)そしてどう参考にすればいいのか、さっぱりわかんなかった(そりゃそうだ)しかも、あんまりカッコイイと思えなかった。堅苦しく感じたんだよね。お行儀が良すぎたみたい(笑)
いろいろあって、音楽のことは諦めて、大学へ進学しました。文学部に入り、ここで2度目の宝塚歌劇との出会いが待って居ました。
とある元トップ娘役さんの特別講座がありました。残念ながら、あまり熱心に聴いている生徒がおらず、居眠りをする生徒も多かった。でもわたしは毎週たのしみに、最前列で聴いていました。ほぼプラチナに近い金髪のわたしが目立っていたのかもしれません。最終日に先生が声をかけてくださいました。「いつも熱心に聞いてくれてありがとう」とか、そんな言葉だったと思います。びっくりして「宝塚ってすごいですね。観に行ってみたいです」と言うわたしに「とっても素敵なところよ。是非観にいらしてね」とニッコリ。そのエレガントさに心打たれ、「こんなに嫌味なくすてきな人がいた世界、気になる!」とアンテナが張ったのでした。
仲良しの同期が3代続く由緒正しき(?)宝塚ファンで、ある日凰稀かなめさんのパーソナルブックを見せてくれたのをきっかけに「こういう人が出るなら見たい!」とねだり、東京宝塚劇場に連れて行ってもらったのが、わたしの生宝塚デビューです。ちなみに初観劇は星組公演『花の踊り絵巻/愛と青春の旅立ち』です。
それから同期にさそわれるままに、ちょこちょこ劇場に連れて行ってもらううちに、『悠未ひろさんっていう男役さんがすてきだな、好きだな』と。『ルナロッサ』というショーがきっかけで、悠未さんを目当てに劇場に通うことになります。悠未ひろさんが、わたしの初恋の男役さんです。でも、当時のわたしは、オフステージのタカラジェンヌに特に興味がなく、積極的に入り出待ちをしたりお茶会に行ったりはしませんでした。
でもやっぱり、退団はつらいものです。退団発表のあった日には泣いて泣いて過ごしました。そして、悠未ひろさん最後のディナーショー『Heroe』は、わたしにとっては宝物です。今でも元気がない時に、スカイステージの録画を見返しています。そのDSで、元気にニコニコとハイタッチをしてくれたのが、澄輝さやとさん(愛称:あっきー)後にわたしが恋に落ちる男役さんです。


【サクラチル花のみち】

前置きが長い!ここまで読みすすめられた人いるのかな(笑)
シリーズ化されていたNW!の宙組公演が決まった時、そして主な出演者が澄輝さやとさんだと知った時、『絶対に観に行く!』と心に決めていました。チケットのアテもないのに。澄輝さんのことは、クラシコ・イタリアーノの新人公演で顔と名前を覚え、なんとなくオペラグラスで追いかけていた男役さんでした。群舞で悠未さんを見るとね、その後ろに澄輝さんがいることが多かった。悠未さん越しに澄輝さんを見ていた。そして、DSでニッコニコの笑顔でハイタッチしてくれたあっきーのショー作品だもの!!絶対に観たい!!

これはね、本当にね、運命と言わざるを得ない(真顔)

当たったんです。チケットが。しかもローチケで。友会とかじゃなくて。

しかも発券して5度見くらいしました。

え!?さんれつめ!?しかも、通路側!?


とある国試の対策講座のお昼休憩に発券したのですが、もう午後の講座なんて頭に入ってこなかったよね(笑)
なんなら試験中も『これで不合格でもわたしにはあっきーのNW!があるし落ち込むことないわ』って思ってました。※試験には合格しました。

2015年4月7日、花のみちの桜は散り、雨上がりの道をピンク色に染めていました。
その日わたしは、一生に一度あるかないかの、奇跡の1本釣りにあったのです。
この日は2回公演どちらも2枚ずつチケットを手に入れることが出来て(なんてラッキーだったんだろう!)わたしに宝塚歌劇を教えてくれた同期と一緒に観に行きました。

【夢の花束を抱えて迎えに来てくれたひと】

このtweetは、ももちちゃん(嗣永桃子ちゃん)ファンのYouからインスピレーションを受けて、自分なりに贔屓との出会いを表現したものなんですけれど、思いの外バズった。本当に澄輝さんはわたしを迎えに来てくれた。
New Wave!シリーズには毎公演客席降りがあり、お客さまとの濃厚な絡みがあり、しかも今回の宙組公演では、メインメンバーの男役さんが通路側席のお客さまの手を取りペアで踊る!っていうのを聞いていたので『そんな目に遭ってはたまったもんじゃない』と、控えめに楽しもうと用心していました。目立ってはいけない…。と思っていましたが、幕が上がればノリノリにならざるを得ない。きっと5歳児みたいな顔して手拍子してたはずです。
目の前の立ち位置が多い蒼羽りくさんが、ちょくちょくアイコンタクトをしてくれて、「イエーイ!」ってなっちゃったんです。「楽しい!!」っていう脳内ホルモンが大放出!!ほんと、こういう時の自分の顔って死んでも見たくないし知りたくない!!
プロローグの後にちょこっとMCをはさんで、あっきーがご挨拶して、凛城きらさん、蒼羽りくさん、桜木みなとさんの4人がVenus.のナンバーを歌い踊りながら客席に降りて来ます。この曲を高校時代にカバーしたことのあるわたしは、大喜びでノリノリ。開演前の誓いは遥か銀河系の彼方へ…。わたしのすぐそばをあっきーとりく君が通り、客席後方へと進んで行きます。客席が絡まれると悲鳴が上がっているので、目の前の凛城さんを見ていてもわかりました。至近距離で叫ぶと生徒さんのマイクに悲鳴が乗っかって響くんだよね!それだけ濃厚に絡まれてるってことでしょ!後ろがめっちゃ盛り上がっている!

そこでポンと肩を叩かれたのです。後ろから。

『あ、りく君だなァ〜、さっきから目線いっぱいくれたしな!』

と思って振り返ったら、居たんです。

澄輝さんが。
澄輝さやとさんが。
りく君じゃなくて。
あっきーが。


澄輝さんはわたしを見下ろし高貴な微笑みを浮かべ、なんとわたしの髪を撫でながらワンフレーズ歌っている…。

もう思考停止である。この瞬間は永遠である。一瞬より長く、永遠より短い(は?)
座席の肘掛けに腰を掛けて、わたしを後ろから抱きしめた人!!その人ですよ!!
その人が澄輝さやとさんです!!

ああ、自分が恋に落ちる瞬間をこんなにも鮮明に覚えているなんて。

実際のところ、「ぎゃーーーー!!」と叫び出したいのを必死で我慢して(わたしの声はとても大きくて、しかも良く通るのです)会場中の視線を集めているのを感じて、恥ずかしくてでも胸が高鳴って、もうとんでもないホルモンの分泌量だったろうと思います。そして隣に座って居た同期が、両手を口に当てて、超驚いた顔でこっちを見ている記憶がある。こんなの、命の危機を察知すると世界がスローモーションに見えちゃう本能的なアレじゃん。よく心臓発作起こして死ななかったよね。生きててよかった。80歳超えてこんな目に遭ったら心肺停止してるわ。しかもラテンのお衣装のヒラヒラって、めっちゃカサカサ音がするのね!あれと似たような音を聞くと反射的にときめいてしまう変態が出来上がってしまったよ!

そしてあっきーは、わたしから離れたところで指を差し

『きみにだよ☆』

と言わんばかり(過大解釈だなあ)の特大のウインクを投下して去りました。

なんということか、それから1幕が終わるまでの記憶が全くございません。当然だわ。
幕間に同期が「からしちゃんのココ(後頭部)をあっきーが触っていた。…触っていい?」と聞くので「ダメ!!!!!絶対にダメ!!!!!!!!」と断固拒否した思い出があります。
なんか強烈な出来事すぎて、ここまでが全部妄想で、自分の願望が捏造した記憶なんじゃないかと思って、未だに同期に確認するんだけど「あれは夢じゃないよ。事実だよ。あっきーがからしちゃんを1本釣りしたんだよ」と言われるので事実なんだと思います。

当時の一連のtweetがこちら。


終演後、フルールで泣いてたら、見知らぬご婦人に励まされました(笑)なんかまわりの人たちが優しかった…。
2回目の公演でも通路側のお席を引き当て、今度こそ蒼羽さんに頭を撫でられましたが、時すでに遅し。わたしは既に澄輝の女になっていたのでなびかなかった。すまんな。

そんなこんなで、NW!は人生を変える公演なので、星組ファンの方は本当にタイヘンなことになりそうですね…(^ ^)にやにや

【沼の底から見つめている】

そしてわたしは、10年以上伸ばしたことのない髪を伸ばしました。『あっきーに撫でられた髪を切るわけにはいかぬ』という超痛い理由で(実話です)
東京に帰ってから、悠未さんファンのお友達にこの話をすると、みんな口々に「あっきーとお幸せに」と言ってくれるのでおかしかったです(笑)
あ!蒼羽さんのことは好きですよ!贔屓以外のお茶会に全く興味のないこのわたしが、お茶会に行ったくらいですからね。ただ落ちなかっただけです。すまんな(2回目)
衝撃的な春を迎え、国試にも合格したので、転職もしました。年間休日も年収大幅アップ、日比谷と同沿線上にあるというスーパー好条件(あくまでわたしにとってw)の会社に入り、今に至りますが、変わらず貧乏なのは言うまでもなく、ヲタ充しているからです。そして仕事はめっちゃキツイ。全然帰れない。それでも頑張れているのは、ご贔屓に恋するエナジーのおかげなんだと思います。まじで。
そして、こっちだよ!とその道に導いて下さり、一緒に沼に沈んでくれるお友だちと一緒に、今日も楽しく贔屓の話で盛り上がっています。LINEの通知を一瞬で64件とかにします。仕事上がりでスマホ開くと何事かと思います。同じテンションで贔屓のことを応援できるお友だちに出会えたのは、本当にしあわせなこと。そして、数ある贔屓がわたしにくれたもののうちで、いちばん嬉しくて輝いているのが、友だちと笑っている瞬間かもしれない。
もしも、あっきーがわたしを迎えに来てくれていなかったら。きっと今だに九州には行っていなかったし、鹿児島にも行かなかったし、桜島にも上陸しなかったでしょう。新幹線のことも好きになれず、ANAのマイルも貯まらず、永遠に梅田駅を攻略できず、切手も買わず、レターセットも買わず、オペラグラスも新調せず、肌が荒れていても気にせず、体型が崩れても気にせず、適当に海外旅行をして、しょーもない男とデートを重ね、しょーもない結婚をして、しょーもない女になっていたことでしょう。

今がいちばん楽しい!!と自信を持って大きな声で言い張れます。とっても楽しい!!生きていてよかった!!

【未来へ】

贔屓との日々が、永遠ではないことは最初から知っています。タカラジェンヌは必ず、いつの日にか、そのすみれの園を飛び立ちます。白い封筒を手にして泣くであろう日も、紋付に緑の袴を着けた姿を目に焼き付ける日も、必ずやってくる未来です。でも、わたしがおばあさんになって、目を輝かせて語れる思い出となるのも、必ずやってくる未来です。楽しかった記憶、輝かしい記憶は一生忘れません。消えたりしません。わたしが言葉を忘れても、贔屓の顔も名前も忘れてしまっても、それに触れたら、わたしの瞳は輝くはずです。そして、バウホールでのあの瞬間と同じように、胸が高鳴るはずです。
誰かの人生の最期を共に過ごす仕事をしているので、わかるんです。そういう”おもいで”を持っている人の瞳は、そんな瞬間にも強く輝くのです。

贔屓がまた、だれかを迎えに行く時、とっておきの花束が用意できますように。
それを絶やすことのないように「今日も輝いていてください」と願えるファンでありたいと思います。