すーぱーからしちゃんねる

からしがみたものをまとめたものです。

CBGKシブゲキ!!『少女革命ウテナ』〜白き薔薇のつぼみ〜

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絶対運命黙示録

【カシラカシラ、ご存知かしら】

存じ上げております。
20年前といえば、当時は小学校高学年。
セーラームーンを見て育ち、さて、いよいよ思春期に突入です!といった時期に、この作品に出会っていました。ちゃおで連載していた漫画も読んでいたし、アニメはリアルタイムに晩ごはんを食べながら観ていました。親が「なにこのアニメ…」と苦笑いをしていた記憶があります(笑)
当時はただ「おもしろいな〜」「好きだな〜」と、ぼんやり観ていたのですが、最終回は意味もわからず泣いた覚えがあります。大学生になり、寺山修司の世界を歩いてから、再びこの作品に出会って、衝撃を受けました。

なんだこの、メタファーの嵐とシュールな世界観は!こんなものを少女時代に観ていたのか!

少女革命ウテナ』はわたしのバイブルです。まともに語ろうとしたら、論文が書けそうなくらいに好きです。愛しています。一生をかけて愛したい作品です。
なので、ミュージカル化のニュースを聞いたとき、不安な気持ちと楽しみな気持ちがぐるぐる。それでも、脚本・演出の吉谷光太郎氏が手掛けてきた2.5次元ミュージカルの評判は耳にしていて、なにより、スーパーバイザー・幾原邦彦氏の名前を見て、先行抽選に申し込みました。こういう時に当たるチケットには、世界の果ての意思を感じずにはいられませんね。
キャストが発表になっても、誰ひとり知らない。主演の能條愛未さんの名前もお顔も知らない。乃木坂46の楽曲なんて1曲も知らない。しかも、宝塚ヲタの肥えた目が見るイメージビジュアルは、なんだか頼りなくて。
おっかな楽しみ、といった感じで、アニメシリーズのファンであるお友達Sちゃん(同じくヅカヲタ)と劇場に向かいました。

【鳳学園の世界】

客席に足を踏み入れると、舞台にはあのタイトル・予告でおなじみの、薔薇のフレームが。深紅のカーテン、90年代アニメを想起させるBGMが、わたしたちを鳳学園の世界へと誘います。
上演前に、影絵少女たちが上演中の注意を、アニメのまんまの世界観で教えてくれます。ここでググッとウテナの世界に入り込めました!
めくるめく、鳳学園の世界が眼下に広がります。
まず、みんな歌が上手い!しかも、思ってた以上に踊る踊る!そして合唱の迫力!
能條さんの第一声を聞いた瞬間、「ウテナがいる!」と。わたしのおっかな気分は吹き飛ばされました。
他の登場人物たちも、とてもかわいく愛らしく、男子もとっても愛おしい。
楽曲もそこはかとなくJ.A.シーザーっぽく、あの『絶対運命黙示録』も迫力の大合唱を聴かせてくれました。セリフを忠実に使った歌の数々、押し付けがましくない演出。心地よいスピード感で展開される物語。ストレスのない場面転換。愛されているエピソードも丁寧に扱われ、取りこぼしがない。現代っ子になっていても、違和感のないキャラクター達。
とにかく演出が素晴らしい。全部アナログだし、特に真新しい事はやってないところが逆に良い。『見たか!あの名シーンをこんな風にやってやったぞ!』っていう押し付けがましさがない。
12人のキャストとは思えない芝居の濃さと厚さ。ラインナップのひとりひとりに『ありがとう』の拍手を贈ることができて、しあわせでした。

【天上ウテナ/能條愛未(乃木坂46)】

す ん ご く 良 か っ た ! !
ウテナは男装の女子だけど、本人が言っているように、女子なんですよ。しかも、自ら王子様であることを選んで男装をしており、嬌声をあげる女の子達のことを弄んだりしない。気取ったりすることもない。だから、能條さんのナチュラルな存在感がとてもウテナだった!
ギャグパートも、カッコイイ殺陣も、揺れ動く女の子の表情も、ウテナそのもので感激しました。ちょっと首猫背っぽい立ち姿も、隙がある感じがしてかわいかったです。等身大の中学生が、すこし個性的であるが故に、わけのわからない人たちに巻き込まれてゆく感じも良かったです。シリアスとノーテンキの色をきちんと使い分けて居るのも素晴らしかった。
そしてそして、なにより、歌が上手いの!!
殺陣にもハクハクしたところがなく、堂々たるウテナっぷり。その落ち着きが更にウテナっぽい。センターがとても似合う存在感。
能條さんがウテナを演じてくれて良かった。ありがとう。
若葉との仲直り、アンシーを取り戻す場面では、涙をいっぱい溢して頬を光らせて感情をぶつけていて、こっちもうるうるしてしまいました。
カーテンコールでは、頼もしい座長っぷりも見せてくれて、素の表情もゆるっとお茶目で可愛かったです。
幕が閉じきらなくて、頭を下げたままぴょこぴょことハケてゆく姿がチラッと見えたのもかわいかったなあ。
もし、再演が叶うなら、ウテナは絶対に能條さんがいいです!

【姫宮アンシー/山内優花】

アンシーってすごく難しい。どういう人なのか、未だによくわからない。
アニメ版では、最終回近くになってやっと描かれるキャラクターだし。ここでアンシーに求められるのは、説得力なのかな、と思います。薔薇の花嫁としての説得力、彼女を手に入れたら、世界を革命する力・奇跡の力が手に入るんだという説得力のある存在でなくちゃいけない。その上、不思議ちゃん。
でもね、ちゃんとアンシーだった。
突然爆笑したり、突然キレキレのダンスをしたり、現場レポートしたり、テストの結果は…だったたり、西園寺劇場に付き合ったり…(笑)
アンシーの心はこれから動くのかな、と予感させる幕切れが良かったです。
誰かアンシーに輪っかのドレスの所作を教えてあげてー!!素人っぽいからー!!輪っか掴みすぎだー!!と思うところもありましたが、なんかそれも逆に良かったです。あ、でも姫宮さん中学生だもんね。普段はお姫様じゃないもんね、っていう。

【桐生冬芽/戸谷公人】

冬芽に解釈違いが生じなかった!大正解だよ!なんとしあわせなことか。
今どき男役でもやらないようなキザっぷりを、さらりんとカマしてくれる冬芽先輩!その辺りが成立してる凄さ。違和感ない。
西園寺を踏み付けてキザる冬芽先輩ありがとう!なんて素晴らしい幼馴染み。
少年時代の棺のエピソードもやってくれて、冬芽の一途でせつないところも描いてくれて嬉しかったな。
世界の果てと話してる時の電話がスマホじゃなくて良かった(笑)古めかしい携帯電話でした◎
七実様との身長差や掛け合いも、アニメのままで楽しかったです。素敵なお兄さまでした。
決闘の最中、徐々にバラが胸ポケットから飛び出しそうになっていた冬芽様。 ちょっとした隙にポケットにバラを押し込んでいて、なんか、その辺がとても冬芽様で、きゅんとした。3列目で見たから、いろいろ見えたんです。アニメだったら矢印付けたいところ。

【西園寺恭一/横井翔二郎】

ありがとう、あれは良いワカメです。
西園寺の道化っぷりがジャスティス。こちらも解釈違いが生ぜず10000点満点。
カッコ悪いの極みの西園寺だけど、わたしは彼のことが好きです(付き合いたくないし関わりたくないけど笑)
交換日記がやたらと小さかったりとか、冬芽に踏みつけられたりとか、シュールな西園寺劇場を展開したりとか…(笑)
空気の読めなさno.1な感じ、お茶を吹くウテナのテンポがアニメそのまんま。めっちゃワカメだった。顔をくしゃくしゃにして怒鳴ったりする姿も西園寺そのもので、キャラクターを自分のものにしているお芝居が素晴らしかった。2.5次元の芝居とはこういうものですよ。と、明示されたような。
でないと、あんなシュールなアドリブかませないよ!?あれがアドリブなのは、アンシーの山内さんが一生懸命に笑いを堪えている時点で気が付きましたが、あれはズゴイ…
わたしが観た回では、
「もっと現実的なやつがいいのか…」
とボヤいて、電車に乗るところからスタート(ていうか西園寺は電車通学なのか笑)
改札ブロックされる西園寺のリアリティww
「チャージが足りないのか」
と、ICガードにお金を入れる西園寺(2000年代の西園寺だ!現代っ子だ!と謎の感動に包まれる)
「千円、二千円、三千円……永遠!!」
「今日のはいかがですかアンシーさん」
サムズアップで答えるアンシー。
※ニュアンスです。
こういうコメディとシリアスのコントラストがウテナの世界なんですよねぇ。役の拡げ方にセンスを感じるアドリブでした。

【有栖川樹璃/立道梨緒奈】

一番デリケートなエピソードを持つ樹璃さん。樹璃さんの決闘は鳥肌モノで、伝説的な演出。もちろんわたしも大好きです。
枝織や瑠果のエピソードは匂わせてそれで終わりなんでしょ?みんな好きなキャラクターなのは知ってるけど、時間ないしとりあえず出してやったよ、その心意気を褒めてねっていう某歌劇団的な態度なんでしょ?
と、思っていたけれど、本当に丁寧に描いてくれた。あの椅子を使った残酷な表現が、舞台上でも繰り広げられていて、感動いたしました。アンサンブルにこんな表現の可能性があったなんて!衝撃でした。それは後に語るとして。
ビジュアルも立ち居振る舞いも、立道さんの樹璃はパーフェクトでマーベラスでした。女子がなんかちょっとポッとなっちゃう女の先輩感。鳳学園の生徒になって、フェンシング部を見学したいな!目の前に樹璃さんが立つと、わたしの頭が動くので、同伴したSちゃんに終演後突っ込まれましたw だって初恋の男役さんにそっくりだったんだもん!!
ミッキーとの身長差も素敵でした。きゅん。

【薫幹/大崎捺希】

ストップウォッチの新解釈!なんだミッキー、そんな記録つけてたのかww
ミッキーは結構ノリノリで七実ウテナ達のおバカに、真面目に付き合ってくれるそんなところが好きなんだけど、そのまんまで可愛かったです。
そんな彼の真面目さ、まっすぐさ、妹への潔癖な感情、アンシーへの憧れを、決闘の場面で爆発させる殺陣に感動しました。殺陣の中にお芝居があるんです。一振り一振りに感情が潜んでいるんです。ミッキーの心も闘っているんです。大崎さんが愛らしいお顔に大粒の涙をぽろぽろ落として、一心不乱に剣を振っていた。文字通りの熱演。ミッキーは大きな声を上げて叫べるような男子ではないのです。
あとね、この作品の男子達は、上着の下に何も着ていません。ということは?つまり?そうです!腹チラが拝めるんです!!あ、ありがとうございます!!男子達が大胆に脱いでくれるこのアニメならではの再現なのですね!!
ミッキーの大胆な腹チラにドッキリしました。だって、あんなに可愛い顔して、結構良いカラダしt(薔薇規制)

【桐生七実/鈴木亜里紗】

みんな大好き七実さま〜!はじめて石蕗の気持ちがわかった。取り巻きになりたい。
七実劇場と呼ばれているらしい七実さまのソロ、すんごく楽しかった!!嫌いな子の筆箱にでんでん虫仕込んでやるのよ!アオダイショウだって仕込んでやるわ!まさかあのエピソードがこんな楽しいナンバーになるなんて!!ぽかーんとしてる客席に「拍手は!?そんなんじゃこの先進まないわよ!!」と拍手を煽る七実さま。鳳学園の普通の生徒になれたかのような気分を味わえて楽しかったです。そして、両手に小枝を持ってコソコソしてる七実さまもアニメっぽくて、すごくいいの!ラブリー!このまま牛になっても違和感ないわー。
こういうお役をズバリとやってくれる俳優さんは、基礎がしっかりしていて、歌もダンスもお芝居も上手な方なんですよね。気持ちよかったです。存在感が寺山劇のアジ的なあり方なのも興味深いところです。客席と舞台を結びつけていた。

【篠原若葉/竹内夢】

ビジュアルが公開された時に「この子がいちばんかわいい!!」と目をつけていた若葉ちゃん。あのたまねぎ頭をキュートに再現できる子なんて、かわいいに違いない!!
まじでね、すんっっっごく可愛かったです。ウテナの背中に飛び乗る若葉がいるの!かわいい!見ていて元気になる!あのちょっと昭和感のあるおしゃまな口調も、ぶってなくて良い。今の子がナチュラルに言い回してくれてるのも嬉しかった〜。
お歌も上手い。ラブレターの歌もたっぷり聴かせてくれて。ウテナの普通を取り戻してよ!と絶唱する姿には泣きました。この若葉が黒薔薇編でウテナに牙を剥くのかと思うと、泣けてしまって。結構まわりからグズグズ聞こえました。刺さるよね。ともだちって、こういうことだよね。

【影絵少女・アンサンブル】

革命だった。このアンサンブル無くしてこの作品は成り立たないでしょう。
影絵少女たちの影芝居がアニメ通りで感激したのは言うまでもない。
かしらかしら、でもカシラ?この子達、演劇部の部員だったのを、果たしてあなたはご存知かしら?だから、影絵少女たちはお芝居ができる。だから、何者にも成れる。枝織にもなれるし梢にも成れる。世界の果てにだってなれる…!
アンサンブルってこんな使い方が出来るんだ…!素晴らしかった。個々のパフォーマンスにも安定感があった。予想以上に激しいダンスと厚いコーラスで、彼ら4人が押し広げた世界観の深さにはスタオベものです。
ヅカヲタ的な目線だと、男女のペアダンスがとても素敵でうっとりしました。ちゃんと芝居の流れで組んでいるから、視線に嘘や恥じらいがないのです。宝塚以外でもこんなにゆめゆめしいペアダンスが見られるとは。リフトも力強く若々しくて、素敵でした。
そして、影絵少年(これは公式な呼び名ではないけれど、あえてこう呼びたい)の存在。
少年時代の冬芽と西園寺を演じ、瑠果(はっきりと名前は出していないけれど)の影を舞台に深く落とす。時には決闘広場の門になる。もうね、わたくし感心しっぱなしでした。
終盤、リモコンを奪い合うふたりについて、もう少し考えたいところ。映画版の影絵少女へのオマージュかな?でも、それを少年冬芽・少年西園寺がやっているところに意味がある気がしてならないのです。

【再演してほしいな】

あーー!!最高だった!!最高すぎて語彙を失くしかけたけれど、語らないと伝わらないことだらけなので頑張りました。甦れわたしの言語中枢!!アンモナイト!!

この作品が上演された劇場は、とてもコンパクトで、キャパは242人です。
もっと大きな劇場で(例えばサンシャイン劇場とか)で観たいよー!ゆったり大きく表現されるこの世界に耽溺したいよー!
でもね、この独特の世界観は、このコンパクトな空間で表わされるのが合っているのかもしれないな、とも思うのです。良い意味での学芸会感、密室感が良かったのかな。
世界を革命した元少女たちが、終演後のエレベーターにぎゅうぎゅう詰めになって、目的地のボタンを押さずに、ただぽんやりとしている瞬間に感じたのです。

ボクたちは卵の殻を破れたのだろうか。
そして、2000年以降に生まれた少女たちは、この舞台を経験して、何を見出すのだろう。一体どんな世界を生きるんだろう。

絶対運命黙示録