すーぱーからしちゃんねる

からしがみたものをまとめたものです。

宙組日本青年館公演『不滅の棘』

【新・日本青年館

新しくなった青年館に行ったのは、今回が初めてでした。
悪評を耳にしていた2階席は、確かに地に足がつかないし、バーが邪魔だし、0番が前の人の頭で遮られちゃうしで、まだまだ改良中であって欲しいなと思いました。でも、音響がとても良くなっていたし、1階後方席は視界がとても開けていたので、これからもたくさん良い作品に出会えたらいいなと思いました。

snsの通知で知ったのですが、5年前、宙組の『逆転裁判3』を観に行っていました。旧日本青年館にね。あの時期にも雪がたくさん降って、路肩に寄せられた雪を避けながら、神宮球場の前を歩いて青年館に向かったんだよねえ。しみじみ。
あの時の愛ちゃん(愛月ひかる)の役は、キャンディーを咥えた刑事さんだったなあ。あの愛ちゃんが5年経って主演を立派に勤めているんだなあと思うと、カテコで座長として挨拶をしている姿にじーんと来るものがありました。


【エロール・マックスウェル/愛月ひかる】
愛ちゃんの男らしさ、リアルな男らしさの中にあるファンタジーな部分のバランスが最高です。
だって、白いゴージャスなお衣装を纏った愛ちゃんの写真が、表参道の高級ブランド店の広告になっていても全く違和感がない。そのままパリコレのランウェイで歩いていてもおかしくない。
謎のコーラスガールを引き連れてるくせに、その様が自然体すぎて逆に生活感出てる感じとか、愛ちゃんだからこそのエロールですよ。
氷のような冷たいベッドでやる事やった後、服の上にバスローブ着込んでウイスキー飲みながらひとり踊る男なんて、最低!って思わせない愛ちゃんのキザりドヤり芸は本当に凄いと思う。成立するんだから凄い。
わたしはあの場面を勝手に『賢者タイム』と呼んでるんだけど、あんなにキマった『賢者タイム』知らんわ。ファンタジックな『賢者タイム』でした。ごちそうさま。
人間に向ける皮肉な視線も、とても素敵でした。優しかったり、厳しかったり、冷たかったりする視線の中に込められたエロールのアイロニーが切ない。永遠の生命を誰にも受け取ってもらえない彼の姿は、憐れだったな。

次回作はあっきーの想い人だということで、愛ちゃんの男っぷりを楽しみにしております。
側室が28人だなんて、コーラスガールの7倍だもんね!7倍カッコイイってことでしょ!!とってもたのしみ!!


【フリーダ/遥羽らら】
ららちゃんのお芝居って、宝塚的でありながらとても現代的なんだよね。
キンキンニャンニャンしてない一本筋の通ったおんなとしてのお芝居に、とても引き込まれるんですよ。お芝居がしっかりしているから、歌にも凄みがある。
フリーダ・プルスの印象が弱かったら、このお話の緊張感は最後まで保たないじゃないですか。エロールが何百年も想い続けている女性を、「愛しています」ソングで表現できてる。ららちゃんの歌唱って本当にすばらしい。
ららちゃんの娘役芸が大好きなので、これからのご活躍楽しみにしています!

余談ですけど、フリーダ・ムハのお金欲しいソング、初期の椎名林檎っぽい。狙ってか偶然かわからないけど、ららちゃんがそれっぽく歌っててニヤニヤしました。


【タチアナ/純矢ちとせ】
素晴らしい毒親っぷりだったよ!こんなお母さん絶対に嫌だ!
でも現実に居そう。おしゃれに娘の好きな男を寝取っちゃうような母親。うわあ、嫌だぁ。嫌だけれど、実はとても人間らしい女だと思うよ、タチアナ。平たく言うと下衆な女なんだけれど、それを上品に仕上げられるせーこちゃんは、さすがだよー!宝塚の女役としてこれからも活躍して欲しいです。
欲を言えば、タチアナの歌が欲しかったな。ソロではなくて、他の役とぶつかり合うような歌が欲しかったな。『読んだら死ね!!』のところが歌だったら迫力あっただろうなあと思うのでした。


【アルベルト/澄輝さやと】
DCの感想でアルベルトのことを書いたので、今回はただただ個人的なことを書かせてください。

千秋楽のお席が、なんともラッキーなことに、『アルベルトの視線の先になるSSS(super sumiki sayato)席』だったんですよ!!つまるところ、あっきーの視線で磔にされてしまう席。磔刑席です。
椅子に腰掛けて空を睨むアルベルトとがっつり目が合ってしまい、上げたオペラグラスが下げられず(一方的な)睨めっこ状態に。あんなに美しいハンサムさんに睨まれた経験、したことあって!?メガネ割れるかと思った。
しかもとても危険だって言われるし(あんたに言ってんじゃないよ)
『フリーダ!君を守ってみせる!!』と言われてしまった時には、(フリーダって名前に改名した方がいいかな。お父さんとお母さんに相談しないと)と思うしかありませんでした。なんでわたしの名前フリーダじゃないんだ。
その瞬間には興奮したきりで、あんまりよく覚えてないんですけれど、涎が口から溢れないようにするのに一生懸命でした。

アルベルトの衣装のスタイリングなんですけれど、他のキャストはワイドパンツなのに、アルベルトだけタイトなシルエットになっているのは意図されたものなのでしょうか。エロールはディオールっぽくて、アルベルトはサンローランっぽい。ファッションはあんまり詳しくないですが。

りんきら(凛城きら)との父子っぷりもcuteでした。髪色も分け目も揃えて、ちょっと仕草も似て居たりして。あっきーばっかり見て居たので、あんまりれいか様のことが見られなかったのが心残りです。


【ハンス/留依蒔世】
とてもあったかいお兄ちゃんだったな、という印象。
アルコール中毒で、家を追い出されたプルス男爵家の子息は、とてもあたたかくて温もりのあるあーちゃんの歌声に彩られて、とても優しいお兄さんに見えました。狂気よりは、優しさゆえの弱さ、とか脆さ、を感じました。戯れに頭に銃を突きつけて「ばあん、ばあん」と繰り返す彼が子どものようで、彼の満たされなかった子ども時代を見るようでした。
『手紙を読んだら心臓が止まるはずだ!!』と母親に迫る場面がとても好きでした。
ハンスの人生が見えてくるお芝居、とても良かったです。


【クリスティーナ/華妃まいあ】
プルス男爵家の人たちは、ちょっとずつ狂っているのがよき…。その中で一番ヤバいのがクリスティーナだと思います。
透明過ぎて怖い。白い生地に白い糸で謎柄の刺繍をしている姿が狂ってる。確かに天使なんだけど、あの子はやばいぞ。まいあちゃんの透明感のある歌声、お芝居、甘い笑顔が、彼女のやばさを際立たせている。
結婚して下さい。って言うクリスティーナもやばいし、自分がエロールを変えられると確信してる彼女もやばい。だから母親にいろんなものを奪われて絶たれて、籠の中の小鳥さんなんだよー。母親のしあわせについて誤解したまま死に走るのもやばい。お気の毒すぎる 。
クリスティーナが母のしあわせを願う歌を
『わたし、わかったわ』とも
『わたしは、勝ったわ』とも、
聞き取れるのが非常に気味が悪くて、彼女のやばさを感じられる。日本語ミュージカルはこういうことが出来るのが強みだと思う。


【キムシン/木村信司
キムシンの男女観と、うっすい国語辞典が嫌いなんですけれど(その代わり装置や衣装、楽曲のセンスや演出は好き)今回に限っては、わたしの苦手な部分が暴走していなくて、とてもスマートな作品に「ありがとうキムシン!はやく風邪治してね!」という気持ちで千秋楽を見届けることができました。
あのうっすい国語辞典のことを、敢えてシャープな日本語と表現しよう。そのシャープな日本語が抽象的に聞こえて、こちらの想像力に訴えかけてくるところがありました。言葉が具体的すぎて逆に抽象的に聞こえてきちゃうのが、なんともシュールな感覚。 この発見がとても新鮮でした。
でも、わたしはやっぱり華美な日本語が好きです。特に、ステージから聞こえてくる言葉は、少なからず飾られたものの方がうれしいです。


【おまけ】
天は赤い河のほとりの配役にはびっっっっっっくりしました!!
誰があっきーの女役を予想したでしょうか。
ご本人もずっと「悪役がやりたい」と言っていたし、わたしも「ぜひ悪役を!」と思って応援して居たのですが、まさか『強めな女役』が来るとは思って居ませんでした(笑)
ご贔屓がガチの女役をするのは未体験ゾーンなので、とても楽しみです。
でもね、この配役発表に一番衝撃を受けたのは、ご本人だと思います(笑)あんなに女役を嫌がっていたあっきーが、本気のネフェルティティを見せてくれるのを楽しみに、寒い寒い冬を乗り越えたいと思います(さむい)