すーぱーからしちゃんねる

からしがみたものをまとめたものです。

月組大劇場公演『今夜、ロマンス劇場で/FULL SWING!』

【期待】

れいこちゃん(月城かなと)とうみちゃん(海乃美月)のお披露目公演です。とっても楽しみにしていました。博多座の『川霧の橋/Dream Chaser-新たな夢へ-』を配信で見て、2人の雰囲気がとても美しく、芝居の息もあっているのを知って、お披露目公演への期待は最高潮に高まっていました。れこうみコンビが、ちなつ(鳳月杏)を2番手に、雪組から彩みちるちゃんを迎えた新生月組、書いているだけでもわくわくします!

1週間前に花組を見る予定で(初宝塚の男友達をアテンドする予定だった)いたのに、公演中止になってしまい、全身が震えるほど悲しかったです。しくしく泣いた。このご時世、突然公演が中止になる可能性は十分ある。
この状況下でも遠征を諦めなかったのは、SS席が当たっていたからです。SS席のセンターなんて、なかなか座れる席じゃあない!正直、客席に座って開演のブザーを聞くまで、安心できませんでした。往来の新幹線は土曜日なのに、空いていました。ちゃちゃと日帰り遠征をキメて来ました。
行って良かった。見られて良かった。ヅカヲタ人生第3章の扉も開きかけている。遠征から数日経ちますが、お陰様で毎日が楽しいです。今回は、そんなテンションですが、どうかウザがらずにお付き合い下されば幸いです。

演目の発表があってから、原作映画をアマプラで見ました。綾瀬はるかが可愛く美しく、特に衣装が可愛かったのが印象的でした。ここは宝塚のお衣装部の腕が鳴るところですよね。お話もロマンチックで、派手さはないのだけれど、ラストシーンにはじんわりと涙を流せる、知る人ぞ知る素敵な邦画だったなあといった印象です。
配役発表も楽しかった記憶があります。原作映画と役を照らし合わせてみたり、映画にない役を見つけて面白がったり。特にありちゃん(暁千星)の大蛇丸。君は穢土転生して優勝するタイプの大蛇丸かい?
小柳先生は、『Shall We Dance?』での実績もありますし(わたしはこの公演でれいこちゃんの顔とお名前を覚えました)不安なところは一つもありませんでした。自分の性壁と相容れないタイプの萌えがあったらイヤだな、と思ったくらいです(あるんじゃん)

ショーは、久しぶりの三木先生。ヅカヲタビギナー時代は三木先生のショーで育てられたので、久しぶりに見られるのが嬉しかったです。初日からTLに流れてくる『客席の手拍子が合わない』というレポも気になっていて、どんな変拍子でも鬼のテンポキープに絶対の自信があるわたしは、なぜか手拍子を間違いなく打つことに使命感を抱いておりました。裏拍手って、慣れていないと難しいよね。スカ仕込みの裏拍子をご披露する時がやってきたぜ!!

さて、今回の記事では、特にお芝居のネタバレに触れています。映画をご覧になっている方にとっても、重大なネタバレだと思います。ぜひ、真っ新な状態で観劇して頂きたいので、観劇のご予定のある方は、今作をご覧になってからお読みになる事をお勧めします。


今夜、ロマンス劇場で

英題は『Color me true.』ということなんですけど、なるほどそういうことなのかー!って思って泣いた(ちゃんと説明して)

映画版では、モノクロの色彩のまま現実世界に飛び出てきた美雪が、化粧をすることで色を得ていたので、舞台ではどうするんだろうと思っていました。ラストシーンの大詰めで、映画の世界の人たちが色を得る。現実世界の人たちが各々の人生を終えて、ファンタジーの世界の人たちとひとつになる。触れ合えるようになる。気持ちを最高潮に盛り上げて迎えるラストシーンに、涙がドバドバ流れて止まりませんでした。コンタクト流れるかと思った。
このひと場面だけに色付きの衣装やかつらを用意する宝塚歌劇の、潤沢な資源にも感動した。ラストシーンの花吹雪までレインボーだったもん!この作品は、色が印象的に使われていて、それが明るく華やかで、お正月公演に相応しい気分だったと思います。
映画という2次元の世界が、うまく3次元になっていたなあと思うのです。スクリーンセーバーとか、カラオケの画面みたいな映像じゃなくて、ちゃんと意味のある、効果的な映像の使い方も良かった。視覚的なところだけではなく、芝居も立体的になっていたのが良かった。特に、映画版では一切触れられずに終わってしまった、映画の世界に残された人たちが描かれているのが楽しかった。
年老いた健司も同一の役者が演じているのが、舞台的でとても良かった。映画では別の俳優さんだったので。同一の役者が一生を演じきった後にラストシーンへ向かう盛り上がりが、涙を誘うのよね。れいこちゃんのお芝居もよかった。年を重ねる健司と、年老いない美雪を、同時に見せて、様々なカップルが踊って演じるのも良かった。彩音星凪くん格好良かった。
月組は芝居が全体的に緻密なのが素晴らしいよね。特に感心したのが、師長役の姫咲美礼さん。健司が息を引き取った後に、両手を重ねてあげて、頭を下げていたのがとても印象的でした。ただのお小言上司になっておらず、看護師長としての説得力があった。

れいこちゃんの健司は、派手になりすぎず、純朴だけど美しい主人公になっていた。宝塚で演じられる日本人男性って、少し珍しい感じがして大好物なのはわたしだけでしょうか。健司の髪型が、良い感じに床屋で切った感があって萌えた。後頭部がかわいいんよ…。お披露目だし、もう少したくさん衣装を着て欲しかったけど、そういう役じゃないから、次回作に期待。あと、れいこちゃんは声がいいよね。声が立っている。台詞が優しくまろやかに聞こえる。お人柄が滲み出ている気がする。

うみちゃんは、お披露目に相応しく、きゃわいいお衣装を取っ替え引っ替え着せられていて、目が嬉しかった。ドレス捌きやお衣装の着こなし、浮ついたところのない立ち姿は、さすがだなあと思いました。れこうみコンビには、落ち着いたしっとりした魅力があると思うのです。老年の健司と向き合う時のお芝居が本当に素晴らしくて、涙が止まりませんでした。

ちなつの俊藤さんに関しては、語り出したら止まらない。俊藤さんの自己肯定感の高さを見習いたいです。原作映画の北村一輝もぶっ飛んでいたけれど、それを上回るちなつの俊藤さん。プログラムのインタビューでも語っていたように『宝塚では突然歌い出したり踊り出したりするのは普通のこと』なのに、俊藤さんが踊り出すと突然シュールな場面になっちゃうのは、ちなつの技術だと思う!!本来ちゃんと踊れる人なのに、めちゃくちゃ顔で踊っているし、レッツ輪廻⭐︎って歌っているし、どういうリアクションを取ればいいかわからず、スペースキャットみたいな顔してたと思う(笑)脚を組むために座って、一瞬で立ち上がるところとか、本当に好き。なにこの無駄なモーションwww 俊藤さんの女なのか、その関係性が非常に気になる白雪さち花ちゃんもめっちゃ好き。相手役なのに、なんで連獅子やんのwww なんでさち花ちゃんが親獅子なのwww どういうハンサムガイ企画なのwww 連獅子のお衣装も当然のように持っている宝塚歌劇団ほんとっょぃ

ありちゃんの大蛇丸にも笑いました。押入れから出てくるなんて反則すぎる。エリザベートのパロディめっちゃ笑った。曲者なのに、可愛らしいところもあって、おとぎの物語の住人らしく、憎めないキャラクターになっていて、愛せる!と思いました。従者のふたりとの小芝居ももっとちゃんと見たい。狭霧の礼華はるくん、大きくていいよね。最後の場面、雨霧ちゃんがいなくて寂しかった。なんとかなりませんか(それはちょっと難しそうです)

おだちんの山中は、原作だと結構激しく健司とぶつかっていた印象があるんだけど、その辺がマイルドになっていて良かった。喧嘩して欲しくないふたり。

彩みちるちゃん、社長令嬢としての在り方が完全に優勝していた!儚い砂糖菓子のような輝き!

忘れちゃいけないのが三獣士の3人!原作映画であんな一瞬しか出てこないキャラクターを、こんなに愛らしく大活躍させてくれて、小柳先生どうもありがとう!電話ボックスから出入りする3人めっちゃ可愛かった。わたしが見た日は、蓮つかさくんはお芝居だけ出演されていたので、狸吉はれんこんでした。お髭がとっても可愛かった〜。しっかり養生して、また可愛い狸吉を見せてくださいね。鳩三郎の柊木絢斗くん、覚えた。いちばん美味しい役だったね!

セブンカラーズの面々も可愛くってデレデレしちゃったよ!結愛かれんちゃんを見ながら、白河りりちゃんを見ていた。

印象的な登場人物が多すぎて、語り尽くせないんですけど、東京公演ではもっと視界が広がっているはず(多分)なので、東京公演を楽しみに待ちます。

【FULL SWING!】

ノーブルで大人っぽい雰囲気のショーで、とっても楽しかったです!初見でSS席だったので、視界は狭いし、途中から視点は固定されるしで、全体的なことは全然わからないまま終わっちゃったんですけど、非常に楽しかったです。
噂になっていた手拍子も、わたしが見た日には揃っていたように思います。主題歌はとてもおしゃれで、宝塚独特のビート感が控えめだから、裏拍を取るのが難しいのかな。でも、この主題歌には裏拍だよね!手拍子していて楽しかったです。欲を言えば、もう少し手拍子を入れて欲しいかな。もっともっと盛り上がれると思うんです。

れいこちゃんが美しすぎて発光していたことは、言うまでもないし、その美しさに負けずに輝いていたうみちゃんも素晴らしい。ちなつは足が50メートルあるし、途中で俊藤さん出てきちゃったと思ったらジゴロだった。ウインクばしばし飛ばしていて頼もしさすらあった。ありちゃんは踊らせておけばいいみたいな扱いは良くないと思います!勿体無い!おだちんは、貫禄がありながらも、背伸びしない等身大の姿で場面をグイグイ引っ張っていた。みちるちゃんが、1人で銀橋を渡っていたのが良かった。My Wayのコーラスのピュアなエネルギーに涙した。ネコちゃんのロケットも斬新で可愛かった。デュエットダンスは、れこうみだけで見たかったけれど、出ている人はみんな好きだ。エトワールは、白河りりちゃんときよら羽龍ちゃんが声量も大きくてツヨツヨだったので、最後に歌い出すおだちんのことが心配になりましたが、更にツヨツヨな上にコブシまで効いていたので取り越し苦労でした。今回のエトワールはツヨツヨのツヨ。おはねちゃん、お怪我早く治るといいね。

こんな感じで、駆け足でショーを振り替えなければならないのは、中盤でとんでもないものを目撃してしまって、記憶は飛ぶし視点は固定されちゃうしで、大変な目に遭ったからなんですよ。
終演後「ありちゃん格好良かった」としか言えなくなってたんですよね。ありちゃんが、わたしの隣の人を一本釣りしていたのですよ。指差ししてウインクするという、「お前を逃さない」的な見事な一本釣りをしていたんですよね。それにつられて釣れちゃいそうになったのが、このわたしってワケ!
最近の良くない癖で、舞台を見ながら『ブログに○○って書こう』と思いながら見てしまう、あまり没頭できていない楽しみ方をしちゃってたんですよね。でも、この日は違った。語彙を無くすというか、感じたことを言語化する余裕がないくらいに、舞台に没頭していたし、ありちゃんを目で追っていた。
『It's all right with me.』のありちゃん格好良すぎて5回くらい心拍止まった。
前に月組さんをSS席で拝んだ時は、ありちゃんはまだ下級生で可愛い雰囲気のほうが強めで、ショーでは顔に汗をだくだくかいて、それはそれはかわいかったんじゃよ。しかし、この日のありちゃんは涼しい顔で爆踊りをしても息も切らさずに、前髪をかき上げていた。この成長を目撃できた喜び。尊……。今では初舞台から成長を見守ってこれたことに感謝し始めている。もうダメかも知れない。

【ヅカヲタ第3期スタートなるか?】

ありちゃんが「おとなになった僕を見て」って言ってた。※言ってません。
あと一押しされたら、沼にドボン!と落ちると思います。お茶会があったら一発だった。今回はストンと着水せずに、ジタバタもがいて沈んでゆく感じなのかもしれないし、沈みそうで沈まないのかもしれない。膝まで浸かったままで終わるかもしれない。でも、津波とか洪水って、膝まで浸かったらもう助からないって言うじゃないですか。どうなんですか。来るんですか。来ないんですか。
押すなよ押すなよの茶番をお友達と繰り広げながらも、お祝いのメールを頂いたりして、ヅカヲタ第3期スタートの予感で毎日とても楽しいです。キャトルで『暁』だらけのレシートの買い物をしたり、書きなれない漢字なので宛名のために練習したり。
自分で書きながら思ったけど、こいつもう相当ダメじゃん(笑)
夢の花束を差し出されても、素直に受け取らない展開なのかもしれない。そうか、ポスターカレンダーのありちゃんはフラグだったのかも知れない!これはこれで、面白いし楽しい。
東京公演でも一桁列どセンター席が当たってしまったので、運にまで背中を押されてしまったとなると、もう逃げようがないのかもしれない。もう、どう転がっても面白いし楽しい予感しかない。
今年は面白い年になりそうです。

歌舞伎座『壽初春大歌舞伎』-義経千本桜(川連法眼館の場)-

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【主な配役】

佐藤忠信実は源九郎狐/市川猿之助
義経/市川門之助
静御前/中村雀右衛門

【所感】

川連法眼館の場、通称『四の切』が憧れの演目であることは、こちらの記事で言及しています。
karashi-channnel.hatenablog.com

2020年の12月に、歌舞伎座中村獅童さんの源九郎狐を観ています。今思い返せば、こちらは宝塚で言うところの新人公演のようなパッションが溢れた演目だったのだなあ。同じ演目なのに、全くの別物でした。澤瀉屋の演出である宙乗りがあるからではなくて、役そのもののあり方というか、カラーというか、質感が全然違う。いずれも素晴らしい観劇体験だったけれど、胸に残るカタルシスというべきか、ぬくもりが全くの別物だったのです。またひとつ、歌舞伎を観る楽しさに目覚めたような気がします。こうやって役者の表現の違いを楽しむのね。

猿之助さんの狐が楽しみだったのは、『弥次喜多』で「ここで必ず足を踏ん張るんだ!俺は何百回もやってるからわかるんだよ!」と言っていたので、本当に出の時に定位置に足を置いて踏ん張っているか観たかったから(ちゃんと踏ん張っていた)でもやっぱり、レジェンドになりつつある、その評判を聞いていたから、憧れていたんだろうな。『ワンピース』の時に大怪我をされて、もう観られないんじゃないかって思っていたから、猿之助さんの狐に会えたのが嬉しかった。

忠信の落ち着き、佇まい。存在しているだけでも放たれている鮮やかなオーラ。スターのオーラでした。こんな人物に化けようとした狐の意地らしさ可愛らしさが微笑ましくてニコニコしてしまう。

狐って、素人が見てもわかるくらいに超絶技巧の連続で、やることがたくさんあるのに、猿之助さんの狐には、ハクハクしたところが一切ないのが素晴らしい。本当に魔法なんじゃないの?ってくらいに全てが滞りなく鮮やかでスピーディー。大人の目も騙されるようなケレンの連続にワクワクしっ放し。
派手な演出だけではなくて、お芝居もとても繊細だった。狐が鼓をもらって喜んでいる姿、コロコロと鼓を転がして戯れている姿を見て、昔飼っていたお犬を思い出して泣きそうになった。心から「良かったね」、という想いが湧き出て溢れてくるような。

宙乗りを下から見上げるお席でした。吉野の山に嬉しそうに帰ってゆく姿を見守りながら、拍手をしている時に、お腹の中が温かくなって、いろんなものに感謝したくなるような気持ちが湧き上がってきました。この時のわたしは、しあわせが湧き出てくる瞬間を知覚しながら、お芝居の世界と一体になっていたのだと思います。狐が見えなくなって、桜吹雪が舞っているのが見えた時、お腹の中にあったモヤモヤとか、憂さみたいなものが、パッと晴れたのがよくわかりました。終演後、チケットを取ってくれたお友達に、目に涙を溜めて、精一杯のお礼を伝えていました。

あとさ!!猿之助さんウィンクしてきたんだが!!がっつり被弾したんだが!!好き!!!!
猿之助さんのウインクがどれだけ破壊力があったかというと、明日からガードしちゃうくらい凄かった。東銀座でスクワットだ!!(ヅカヲタならわかるよなっ!?)

雀右衛門さんの静御前は、当然落ち着きがあって、姫姫しさと気高さがあって、芝居に厚みがありました。ラストシーン、吉野の山に帰ってゆく狐を見上げるやさしいお姫様の表情が良かった。
門之助さんの義経は、威厳と力強さがあって、狐に鼓をあげるところで、彼の優しさを何倍にも感じられた。こちらも、芝居に厚みがあった。

【他の演目】

第一部の『一条大倉物語』『祝春元禄花見踊』と第三部の『岩戸の景清』も観劇しました。
『一条大倉物語』は、以前に見たことがあって、ストーリーは頭に入っているものの、どうにも時代物のテンポが肌に合わず、楽しみ方がわからなかった。面白いと感じるところはあるのですが。これから歌舞伎を見続けてゆくうちに、きっと時代物の面白さに目覚める日が来ると信じているので、その日を楽しみに待ちます。

『祝春元禄花見踊』は、小川陽喜くんの初お目見得でしたね。初お目見得というものを初めて見ました。幕が開く前から「おはようございます!よろしくお願いします!」のかわいい声が。陽喜くんの奴さん、おもちゃみたいに小さかったけど、キビキビしてた!殺陣もやってた!でも、刀がなかなか鞘に収まらなくて、黒子さんが大活躍だった。へえ〜、これが初お目見得ってやつですか。3歳の子が舞台に立っているのは、もちろんかわいいとは思うのだけど、心が痛むところもあった。本人が楽しくやってるなら良いのだけど、まだまだイヤイヤする時期だと思うし、ほんと無理させないでほしい。『本日ぐずっている為休演します』とかあっても良いと思う気持ち。

第三部の『岩戸の景清』はお芝居仕立てのショーって感じだった。まるると隼人さんを組ませた人にお年賀をあげたい。

【今年もよろしくお願いします】

宝塚ばかり見ている人の歌舞伎の感想記事ですが、検索からアクセスして下さる方も多く、こんなど素人ブログに足を運んでいただけるなんてと、大変恐縮しております。

当たり前の事なんだけど、映像で何百回観る舞台よりも、1回きりでも生で観る舞台に勝る物はないですよね。どんなに技術が進歩しても、時間と空間と経験は、肉体以外の器には保存できない。できっこない。主客が交じり合う空間が劇場というもので、わたしはそれを愛しています。

そんな感じで愛しているものを、今年も楽しく綴ってゆけたらいいなと思っております。

本年もよろしくお願いいたします。

星組東京宝塚劇場『柳生忍法帖/モアー・ダンディズム』

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【なんかどうしてもムラに行きたい】

そんな時ってあるじゃないですか。ちょうど、3000万人来場者記念でなんか貰えるらしいと聞いて、翌日のチケットを手配しました。同じ考えのお友達と劇場で偶然に出会えて嬉しかったです(笑)
記念品にポストカードを貰って、お祝いの幕が掛かったおめでたいご挨拶も聞いて、ほくほくで帰ってきました。たまにはこういう日帰り遠征が必要な時があるんです。
ということで、1度ムラで観劇してからの東京公演です。

【期待】

忍法帖っていうくらいだから、こっちゃん(礼真琴)は忍者に違いない。と、割と直前まで思っていました。だってビジュアルも忍者っぽかったし、こっちゃんは忍者っぽいし!原作があると聞いていましたが、予習はせずに挑みました。
愛ちゃん(愛月ひかる)の退団発表に、涙目になりながら過ごしていたことを思い出します。愛ちゃんは絶対に1番大きな羽根を背負って、1番最後に階段から降りてきてくれると信じていたので。わたしは長い間ずっと宙担だし、愛ちゃんへの期待はとても大きかったんですよ。だからこそ、「愛ちゃんが大劇場に立つ最後の姿を観に行かなくちゃ」と思い立ったのかも知れません。愛ちゃんの最後の役がラスボスだと聞いて、期待は大きく膨らみました。上級生になって、敵役の凄みが出るようになっていた愛ちゃんの集大成を見なければ。

初演の、真矢ミキさんの『ダンディズム』が本当に大好きで、スカステの映像を何度も何度も何度も見ては、あの癖になる世界観の虜になっていました。『ネオ・ダンディズム』も良いけれど、わたしは初演『ダンディズム』派。今回の『モアー・ダンディズム』がどれだけ初演を踏襲したものになるかわからなくても、とても楽しみにしていました。初日のタイムラインを見て、心の中でガッツポーズをしちゃいました。

柳生忍法帖

3回観て、やっとお話を理解できた、ゆるい頭の持ち主で申し訳ない。何もわからなかった訳ではないのですが、ドラマを理解するのに時間がかかった。難解に受け取ったのは、ゆらの心の動きかなあ。どこで十兵衛のことを好きになったのかが読み取れず、クライマックスの展開に置いて行かれてしまった感。

でも、十兵衛先生はめちゃくちゃ格好良かったよ!ヒーローとはかくあるべしと思いましたね(CHを観た後だったから尚更)最後の「俺だけが弔ってやれる女がいる」とか、本当に格好良かった。こっちゃんの動きひとつひとつから目が離せなかった。腰を落として抜刀した時、どうしても期待に胸が高鳴るんですよね。動く前の一瞬のタメが格好いい。歌いながらの殺陣も、安定感があって格好いい。格好いい。それ以外言えない。格好いい。この公演はわたしにとって、遅れてきた礼真琴ビッグバンとなりました。こっちゃんの見方が本当に変わったよ。

ゆらは、前述した通り、ちょっとよくわからなかった。ヒロインが魅力的に感じられなかったのは残念です。

愛ちゃんの銅伯は、期待以上の迫力でした。長髪のカツラと髑髏柄の着物、人外感溢れるオーラ。どれを取っても惚れ惚れするような男役芸でした。愛ちゃんの、セリフがない時の目の芝居が好きなんですけれど、最後にそのお芝居も堪能できて嬉しかったな。悠未ひろさんがしていたような、悪役の目の芝居を愛ちゃんが受け継いでくれていることが嬉しかった。この男役芸を、今度は誰が受け継いでくれるんだろう。
黒髪の愛ちゃんも格好良かったな。あんなに長い髪で殺陣をしているのに、宙を舞う毛先の全てが美しくて、さすがだなあと思いました。
銅伯をラスボスとするなら、最後に成敗されて、もっともっと派手に倒されてほしかったですね。七本槍より先に倒されてしまうのは解せなかった。わたしが歌舞伎脳になっちゃってるのかも知れませんが。それだけ、愛ちゃんの最後の役に対する期待が大きかったのです。

堀ガールズは、セーラームーンみたいで超かわいかった。それぞれの衣装にカラーがあるのがいいよね!ちゃんと最後まで堀ガールズの復讐劇になっているのが良かった。それでも、十兵衛が主人公としてヒーローとして物語の中心に立っているのも良かった。

七本槍は、一人一人のキャラが濃すぎて。もうちょっとちゃんと見たかったです。みんなメイクも凝っていて、見ていて楽しかった。ちゃりお(碧海さりお)の「わしの目を見ろ〜〜!!」×2が面白すぎてツボった。キワミ(極美慎)のお衣装が桃太郎っぽくてツボった。あかさん(綺城ひか理)の客席に向けた拳法タイムにツボった。

大野先生の作品はいつもそうだけど、キャラクターが多くていいよね!できる限り多くの生徒に登場人物として活躍してほしいという気概を感じます。語り尽くせぬ。

【モアー・ダンディズム!】

■プロローグ
コーラスから始まる演出に鳥肌が立って、ワクワクして吐きそうになりました!映像で観たままの世界観。色彩。煌めき。そしてゴンドラに乗って登場するこっちゃん!!赤が似合う。第一声から心を掴むこっちゃんの歌声。両手を広げた時のトキメキが半端ない。ちょっと癖のある動きが、真矢みきさんを彷彿とさせて、男臭くて本当に格好いいのですよ。
ひっとん(舞空瞳)のキラキラしたソプラノも、こっちゃんの歌声とコントラストがはっきりしていて鮮やか。
もう、ここからは誰を観ていいかわからず(みんな見たいんだよ!)オペラグラスが迷う迷う。こと愛せおのトリオの場面がめちゃくちゃ好きでした。
わたしがよく「宝塚の独特のビート」と言っているものは、まさにこのビートのことを言っています。ベースが8部でリズムを刻んでいて、どっしりと頭にアクセントを置いた手拍子がハマるビートのことです。このビートに乗って、手拍子してる瞬間が、人生のうちで1番幸せな時間。

■薄紫のとばりの向こう
初見では「愛ちゃんの歌をこんなに聴かせてもらえるなんて!」と感激しっぱなしでした。決して歌の人ではなかったと思うんですよ。その愛ちゃんに、歌でこんなに魅せられる日が来るとは。
ゆったりと銀橋を歩いて、ひとりで劇場の空間を埋め尽くせるくらい、大きな男役さんになったことにも感激していました。ロマンチックな、男役らしい薄紫色のお衣装も素敵だった。

■ミッション
星組のダンスのエネルギーは、とても熱くて「ああ、星組観てるなあ」という気持ちにさせてくれるから大好き。こっちゃんとひっとんが、場面をぐいぐい引っ張っているのも、観ていて気持ちが良い。今回のレビューも良かったけれど、こういう、踊りまくり!なショーも観てみたい。

■ビューティフル・ラブ
みんな可愛くって、誰を見るか迷っている間に、場面が終わってしまう。いつもの残念なパターン(笑)
大体、くらっち(有沙瞳)か、あまね(澄華あまね)ちゃんか、下手のブルーのドレスの娘役さんを観てました。大きなツバ広帽子って、乙女の夢だよね!

■キャリオカ
こっちゃんの真矢みきリスペクトが炸裂していて、初演を見ていないのに、飛び上がりそうになるくらいに喜んだよ!インテンポよりやや遅れた、タメにタメた癖になる歌い方をしてたの。それが男クサくて本当に格好良いんですよ。黒燕尾の男役と、シンプルなドレスの娘役が勢揃いする、エレガントな場面なのに、パッションを感じる。これが星組パッションというやつなのですね!

■ゴールデン・デイズ
愛ちゃんとの一方的な思い出が、走馬灯のように脳裏に駆け巡ってくる場面。『モンテ・クリスト伯』の新人公演、『翼ある人びと』のリスト、『王妃の館』の金沢さん、A motionの思い出、『神々の土地』のラスプーチン、『天は赤い河のほとり』のマッティワザ、『WEST SIDE STORY』のベルナルド、『不滅の棘』のエロール……。想い出がいっぱいで、前楽では輝く愛ちゃんを見てズルズルに泣いてしまいました。ということで、この場面では愛ちゃん様しか見ていなかったですね。くらっちを見つめる眼差しの貴公子っぷりに惚れ惚れしました。

■ハード・ボイルド
命がいくつあっても足りないよ。守ってくれよオタクの命。どこを見ても刺激が強すぎて赤面しちゃうよ。
こっちゃんは歌のテクニックの引き出しがあんなに多いのに、歌のうまさでうたている感じが一切ないのが本当に素晴らしい。今回の公演で、礼真琴の魅力に(わたしが)覚醒しました。これからは、もっとちゃんと本気でこっちゃんの歌を聴こうと思いました。
前楽では、噂の前髪サラサラな礼真琴を拝むことができまして、噂通りのセクシーさに悲鳴をあげそうになりました。悩ましげに前髪をかき上げる仕草がたまらなかった。これが礼真琴のダンディズムか!!国宝に指定した方がいい。
伝統ある振付も、本当に格好良くて、誰を見ても赤面しちゃうくらい色気が迸っていて、ハイカロリーな場面でした。なんだあの腰遣い!特にあかさん!けしからん!国宝に指定しろ!

■ザ・ロケット!
この主題歌とても素敵なのに、あんまり使われていないんだよね。もうちょっと聴かせて欲しかったな。クルクルファンタジー

■テンプテーション!
男役のターバン姿は、宝塚ならではのスタイリングで素敵ですよね。個人的には、他の場面の味が濃すぎて、箸休め的になってしまった。
前楽では、銀橋にずらりと並んだ時に、愛ちゃんがオペラなしでも確認できるくらいに特大のウインクを、2階席に飛ばしていたのを確認して、たいへん感動しました。あれは忘れられない。

■ラ・パッション!
せお(瀬央ゆりあ)って、めちゃくちゃ景気がいいよね!なんか、見ているだけで運気が上がりそう。金運とか上がりそう。手拍子してるだけで宝くじ当たりそうだもん。
ロマンチックレビューは、ひとりのスターがたっぷり歌ってくれるのがいいですね。

■アシナヨ
泣きすぎて記憶が曖昧。
でも、「悲しさ」とか「さみしさ」よりも、しみじみと「いいなあ」と思わせてくれるトリオでした。こっちゃんと愛ちゃんの関係性が見えて、その中でひっとんがキラキラ輝いていて、本当に心から「いいなあ」って思ったんです。
お衣装も素敵だった。三人の青が印象に残っています。

■パレード
こっちゃんが降りてくるのを待っている時の「モアー、モアー」っていうコーラスのアレンジが超大好き。照明が薄暗くなって、少しメランコリックな雰囲気があって、ノスタルジックな感傷に浸れて、オルガンの音が聞こえてくる瞬間の多幸感はまるで麻薬のようでした。

【前楽クリスマススペシャル】

前楽は12月25日で、ちょうどクリスマスでした。マチネは友会貸切公演だったので、友会関連のアドリブが多かったそうですが、ソワレはクリスマススペシャルでした。
クリスマスバージョンのレポは、レポが上手な人にお任せして、わたしが如何に星組さんに狂わされたかを記しておきたいと思います。
こっちゃんがゴンドラから降りてきて、頭上にサンタ帽を確認した瞬間に「わはは」と声が漏れ出てしまったよ。ひっとん(サンタ帽)愛ちゃん(トナカイの耳)せお(トナカイの耳)が出てきた瞬間、可愛すぎて客席で暴れた。隣に座っていたお友達ごめん(笑)
ハードボイルドでこっちゃんが出てきた瞬間、客席がザワついてたけど、最初よくわかんなかったよ。白いハットにクリスマス浮かれポンチメガネがついてたよ。最後の掛け声で「受け取って…」と吐息混じりに決めてくるこっちゃんに悲鳴が出そうになったけど、我慢したよ。「グフォ」みたいな声は出た。
ラ・パッションCR瀬央ゆりあは、劇場中の「何かやってくれるに違いない」という期待を背負いながら、景気良くハイテンションに登場。特にアドリブもなく歌い出したので「あれ?何もしないのかな」と案ずる客席の期待を上回ってくるのが瀬央ゆりあという男役である。間奏でジングルベルをぶっ込み、歌って踊るという期待を上回るパフォーマンスに株価は右肩上がりだった。
しあわせで、楽しすぎて、ありがたすぎて、ずっと『5500円しか払ってないんですけど、良いんですか!?」って思いながら見ました。最高のクリスマスになりました。

【2021年観劇納め】

本年の投稿は、この記事が最後になります。今年も、たくさんの楽しい!しあわせ!をブログに残せました。その思い出を、アクセスしてくださった方と共有することが出来て、嬉しかったです。
来年も、たくさんの楽しい!しあわせ!をこのブログに残せますように。そして、来年も『すーぱーからしちゃんねる』をよろしくお願いいたします。