すーぱーからしちゃんねる

からしがみたものをまとめたものです。

新橋演舞場『流白浪燦星』

【期待】
ルパン三世といえば、カリオストロの城。あと、マモーが出てくるやつ(ルパンVS複製人間)で育ちました。テレビシリーズをちゃんと見たことがなく、漫画も読んだことはありません。あと、宝塚のルパンを見ました。あのちぎちゃん好きだったな~~。
既に宝塚でやっているから、歌舞伎化のニュースにはそんなに驚きませんでした。ここ数年で歌舞伎を見てきて、歌舞伎の懐の深さとか、どんな世界にだってなれるキャパシティーの広さを知ったので、「全然アリじゃん」と思いました。
12月は宝塚で忙しくなる予定だったのですが、いろいろあって公演中止になってしまい、心寂しくしていたところだったので、この公演があって本当に良かった。


★★★本編のネタバレがあります。ご観劇前の方はご注意下さい★★★

【全体像】
いんやー!!本当に楽しかったです!!年末に観る舞台として大正解!!派手で賑やかで軽やかで痛快。天から大判小判がざっくざくと降ってきて、頭から小判を浴びて、年末ジャンボ宝くじも当たりそうだよ!!
ルパン三世あるあると、歌舞伎あるあるが気持ちよくコラボした、極上のエンターテイメントでした。歌舞伎を観るようになって約5年、パロディの元ネタがわかるようになってきたので、最高に楽しかったです。「このセットが組まれるということは、だんまりが始まるに違いない!」とかね。
時事ネタや政府批判が含まれているのが、歌舞伎らしくて良かったです。こういうネタが古典になったとき、その作品の味とか作られた時代の粋として残っていくのだろうなと思うと、なんだかロマンを感じませんか。配膳のお仕事をするカラクリ人形を見ながら、100年後のイヤホンガイド的なやつに「令和五年は、ネコ型配膳ロボットが普及し始めた年でした」って解説されるのかも知れない。
『鎌倉殿』も『VIVANT』も笑わせてもらいました(笑)『超歌舞伎』も『ヤマトタケル』もネタが盛り込まれていて、愛を感じました。贅沢を言うと、『飛んで埼玉』ネタも欲しかったです(笑)
発端の盛り上げ方は最高だったな。愛之助さんの最初の台詞で、演舞場のお客さんみんなの心がガッチリと掴まれたのを感じたよ!盆の廻り方もワクワクしたし、あのテーマソングが流れた時はテンションがギュインと上がったのを感じた。盛り上げに盛り上げて、タイプライターの打鍵音と共に白地でサブタイトルが浮き上がった時は「Foooooooooooo!!!!!!!」と叫びたかったけど、ここはNYではなくお江戸なので我慢した。
2.5次元感がないのも良かった。.5の作風が嫌という訳じゃなくて、あくまでも歌舞伎を見に来ているので、最初から最後まで歌舞伎のコードで展開されていたのにも満足しています。
そういう意味で、お衣装は本当に素晴らしかった。原作がマンガやアニメ、ゲームの新作歌舞伎で一番楽しみにしているのが、キャラクターのビジュアルかも知れない。どうやって歌舞伎変換してくるのか、どう着こなしてキャラクターを表現するのか。今回も最高でした!
次に音楽。今回も最高だった(2回目)あの有名すぎるテーマソングを和楽器で聴いたときは鳥肌が立ったよ。「キタキタキタ!!」って。まさか銭形マーチまであるとは思っていなくてニコニコしちゃった。テレビシリーズを見たことがないので、不二子ちゃんの花魁道中のBGMがテレビ版のED曲だってことを知らなくて『なんかうるさいな』とか思っちゃってごめんなさい。でも、そういう取りこぼしたネタがいっぱいある気がする~!
シナリオもすごく面白かった。宝塚の時も、自分の陣地に作品を引き入れて、魅力的にするのが上手いなあと思ったけれど、今回も同じ事を思った。オリジナルの登場人物もみんな魅力的だったのが良かった。戸部さん、脚本書いてて楽しかっただろうな~~。歌舞伎座でよくお見かけするけど、いつも楽しそうだもんな~~。
本水も、意味も理由も無く本水なのが面白かった。コロナ前にはもっとすごい本水を見ているので、ちょっとショボいなと思ってしまいましたが。あと冬の本水は本当に寒そう。
「どうやって終わるんだろう」と思ったら、『白浪五人男』稲瀬川で終わるんですね!?夏に神谷町小歌舞伎で観たやつ!珍しく前方席に座って観たので、七三での見得もばっちり見えたし、着物の柄もじっくり観られて楽しかった。
一昔前の日本なら、忠臣蔵赤穂浪士のお話を、みんなが知っていて、年末の歌舞伎やテレビドラマでお芝居を楽しんでいたのだと思います。でも、最近の人って(わたしも含めて)ぶっちゃけ、忠臣蔵、よくわかんないじゃん。ルパン三世の方が、よく知ってるし、ポピュラーになってきてるじゃん。だから、どうでしょう、毎年、流白浪燦星を打つのは。この楽しさを、家族や歌舞伎を知らない友人に教えたいと思いましたし、かつてナウシカを見たときのわたしのように、この作品がきっかけになって、古典歌舞伎に興味を持つ人も大勢出てくると思うんです。


【キャスト】
流白浪燦星/愛之助
ルパンそのものだったね!最初に壁を突き破って出てきた瞬間からルパンだった。第一声「俺はルパァ~ンさぁんせい、泥棒さァ!」の名乗りには、「コレコレ!」っていう笑いが起きてて楽しかった。ルパンの独特の台詞回しの中にも、松嶋屋らしさがあって素敵でした。他にも、立ち方、花道で走っている姿、羽織の着こなしがとてもルパンだなと思いました。愛之助さんの洒脱で、端正なんだけどちょっとワルイオトコな雰囲気が、ルパンにぴったりでした。
ルパンは変装するから、衣装が着たきり雀にならないのも楽しい。銭形刑部に扮したときの赤い着物でピンときて、ニヤニヤするのも楽しかった。
衣装といえば、ルパンのふんどしの柄が、おなじみの青白ストライプ柄なのを確認してニヤリとしました。楽しいこだわりだよね!
それにしても、今ヒットしている映画に出ている人が、生で間近に見られちゃうって、東京は凄い場所だなあと、埼玉県民は思うのでした。

石川五右衛門後に石川五ェ門/松也
松也めっちゃ痩せたね!?めっちゃ精悍だった。美しかった。ヘアデザインがポスタービジュアルと違っていて、シルエットがより原作に近くなっていたのが良かったです。
五右衛門登場のセットがすごく豪華で迫力があった。機会を見つけて、本物も見てみたいな。
糸星との最後の場面を見ていて、松也は本当にラブシーンが上手いなあと思いました。本当に、そこに想いがあるように見えるんだよね。歌舞伎以外の松也を見たことがないので、ストプレも見てみたい。
意味も無く脱がされふんどし姿にされた五右衛門はありがたく拝ませてもらいました。いいもん見た。

峰不二子/笑也
笑也さんの不二子ちゃん、とても楽しみにしていましたが、もう期待以上でした!キュートでセクシーで小悪魔な不二子ちゃんそのもの!
まず、お化粧が素晴らしい。アイラインがキャットラインになっていて、目頭にラメが光っていて、オーバーリップで!あのリップラインに並々ならぬこだわりを感じる。
補正もすばらしい。歌舞伎にはグラマラスな女性は出てこないし、着物はおっぱいが大きいと太ったり老けたりして見えるので、女性は基本は潰すし女方も盛らないんだけど、不二子ちゃんはちゃんとおっぱいがでかい。でも、太ったり老けたりして見えない。これはすごい。
『籠釣瓶』の八つ橋の笑いがとてもミステリアスで良かったので、笑也さん八つ橋やってください。笑也さんの不二子ちゃんはとても表情豊かで魅力的でした。

次元大介/笑三郎
格好良かった。笑三郎さん声が良いんだよね。煙管を加えたまま喋っているのに、発声が明瞭なのは、すごいなって思いました。
ピストルが弾切れになっちゃって、焦っている次元もかわいかった。次元って、ハードボイルドな印象あるけど、実はちょっとかわいい系の男だったりするよね。そこを笑三郎さんがしっかり表現されているのがよかったです。
『VIVANT』ネタにも笑わせてもらいました。別班仲間の堺雅人さんにも見に来て欲しいよね~!

銭形刑部/中車
とっつぁんもとっつぁんそのものだったよね!というか、そもそも中車さんを銭形にキャスティングした時点で優勝が確約されたようなものだったのでは!?っていうくらいに、中車さん以外の銭形が考えられない。
段取りが多そうで大変そうだなと思うところもありましたが、どの場面も楽しかったです。やっぱり、銭形マーチでの花道の引っ込みが一番かな。

傾城糸星実は伊都之大王/尾上右近
宇宙人だった、っていうコト?五右衛門を亡くして、糸星が座敷から下がりたいと言う、しおしおとしたところにきゅんとしました。登美衛門と目を合わせてお互いの正体に気付くところは、頭の中で「キュピーン」って鳴った(ガンダム

長須登美衛門/鷹之資
格好良かった!まず声が溌剌としてイケメいているし、横顔がめちゃくちゃ美しい。それでいて、まだ若い男の子特有の甘やかさが残っているところが良い。
役としても面白かった。でも、途中まで『刀剣乱舞』のキャラと被るところがあったので、「また切腹したらどうしよう」とヒヤヒヤしたところはある(笑)

唐句麗屋銀座衛門/猿弥
良い小悪党でしたな~~。最後のやられ方が、めっちゃ漫画的で痛快でした。銀座衛門の衣装に、からくりの歯車のモチーフがあって、とても楽しいなと思いました。

真柴久吉/彌十郎
悪者なんだけど、なんだかちょっぴり可愛げがあるのは、やじゅさんの持ち味でもあって楽しかった。最後の引っ込みなんかきゅんとするくらい可愛かったもんな~~。


【見どころいっぱい】
そうそう、マモーが出てくるのは知ってたのですが、出てきた千壽さんのマモーがあまりにもマモーだったので爆笑してしまった。前方席からオペラグラスでまじまじとお化粧を見てしまった。
他にも、花魁道中で男衆をやっていた翔三さんがめっちゃ美しくて、笑也さんとの並びに心臓止まるかと思った。

本当に楽しかったので、是非いろんな人に見に行って欲しい作品です。