すーぱーからしちゃんねる

からしがみたものをまとめたものです。

宙組梅田芸術劇場公演『WEST SIDE STORY』

【リスペクトと覚悟】

もしかしたら、夏の梅芸で贔屓(澄輝さやとさん)が出演するかも知れないと思って、国際フォーラムのWEST SIDE STORY(以下WSS)は観ませんでした。まっさらな状態で贔屓のいる宙組WSSを体験したかった。でも、違う配役でも見てみたかったなあ!!っていう欲張り後に立たず状態です(笑)
あらすじや楽曲は、映画版WSSを観ていたので知っていました。でも、宝塚版WSSは観たことがないので、どんな感じなのかは知りません。
タカラジェンヌにヤカラ感は出せない』
これは完全にわたしの持論なんですけど。すごくオラオラしていても、いくらイキってても、すみれコードっていう存在があるし、中の人のお育ちの良さが透けて出てしまうので、どこかファンタジックで、良い意味でリアル感に欠けたヤンキーとかチンピラとか、ギャングになりがちなところがあるよね、っていうね。もちろんそれが宝塚の男役の魅力だし、良いところなんだけど、WSSでそれはちょっとシラけちゃうんじゃない?(あくまでも、わたしが)
というのも、恥ずかしながら、わたしのお育ちがあんまり良くなく、自分自身がいわゆる不良校・荒れてる学校出身で、決闘やらタイマンやらが割と身近な環境で育ったから。そういう少年たちのリアルを知っているから、ボカしたり、誤魔化したりなんかされてたらシラけちゃうんじゃないかなあ?(あくもでも、個人的な問題)
だって、宝塚の作品って、愛と夢の世界じゃん。刺されても血が出たりしない美しい世界じゃん。

でも、この公演は違いました。

殺された人の腹には血が滲んでるし、女の子は傷付けられる。WSSに対するリスペクトと、覚悟を感じた。強いメッセージを正しく伝えるために、役者ひとりひとりが真剣に外の世界と現実と向き合って、出した答えがそれなんだよね。
非行少年たちの八方塞がり感、大人に対する憎悪と未来への潔癖な恐れ。そして、客席に叩きつける現実。これを『清く正しく美しく、朗らかに』生きる世界の人たちが表現するとなれば、とてつもないエネルギーが必要だったはずでしょう。

受け取ってみたら、それはもう、とんでもないエネルギーでした。そのひとつひとつ全部を、言葉にして残せたらいいなあ〜。頑張ろう(笑)わたしもリスペクトと覚悟を持って、感想をまとめます。

【全体像】

今までWSSって、荒っぽくて力強くて、切ないお話だと思ってたんだけど、宙組WSSはとてもとても繊細なお話だった。宝塚歌劇がこれをやると、とてもなセンシティブな印象だった。アクションや殺陣が派手ではないのが効いて、心情が繊細に伝わってきました。
殴り合いと言っても、男性キャストみたいに殴られた人がぶっ飛んでいく訳でもなく、怒声も街中で聞くようなリアルなものでもなく。そういうところに注意を持って行かれない分、キャラクターの心情に心を寄せやすい。ここに、宝塚歌劇WSSを上演する意味があったんだと思っています。生徒ひとりひとりが、真正面から作品に向かい合い、その感性と読解力を使って表現していました。
一言で言えば「良かった」に尽きる。
すごく良かったので、本公演の平均観劇回数を超えました(笑)東宝では作品につき、観劇回数を大体4〜5回に抑えてるんですけれど(わたしの感性の限界がそのくらいの回数だから)2週間で6回も観てしまった。贔屓のリフがペガサストルネード級に格好良かったのもあるけれど、宙組のキャスト全員がとてもよかったし、なにより生オケっていうのが良かった。名曲を生演奏で経験出来るのは贅沢で、だいすきです!
席に関しては、すみっこでも前方がいい!っていうタイプじゃなくて、最後列でも良いからセンターが良い!っていうタイプなので、2階席でも楽しかったです。しかしながらAMの時、梅芸の3階席は懲り懲りだ…と思い知ったので(どこに座っていてもセンターブロックでも手すりが邪魔。舞台との距離が遠すぎるんだよ、オペラ使うと視野が狭くなって嫌なんだよう)運良く(?)回ってこなくて助かりました(笑)
いつも薄情な友会が友情を見せてくれ、1階のとちり席くらいのどセンに座った時は、全体を見渡せて、Tonightのシンプルなセットの中で、歌だけで魅せるキラキラした“まかまどコンビ”を見ている時は、まるでわたしまでお空を飛んでいる気分でした!そして、BWからの演出家、ジョシュア先生のお姿が見えたのも楽しかったです。男性にしてはちょっと小柄で、笑顔が可愛らしかった。幕間に稲葉先生と熱い握手を交わしていましたが、なんか言いたいことがいっぱいありそうな顔してた。先生が観劇してから、お芝居が少し変わった気がします。特に、アニータが乱暴される場面。あそこを手加減してしまうと、この作品が訴えたいメッセージが薄れてしまったり、ロミジュリ的恋愛ものに着地しかねないので、見ていて辛かったけれど、良かったと思う。さじ加減が本当に難しかったと思うけど、ジェッツのメンバーが抱いてる闇が見えてこないと、ラストシーンで読み取れるメッセージが全然違うから。
ラストシーンですごく悲しくて愛おしいのが、最後にトニーの遺体を追って行かないビッグディールと、シャークスの数人。あれが『現実の世界を見てみろよ!』と言わんばかりで、すごくしんどいんだけど、甘くなくてヒリヒリして、好きなんです。
わたしはこの作品をロミジュリのオマージュとは知っていても、恋愛ものとは捉えませんでした。真ん中の人たちは恋愛してるけれど、実は群像劇的で、社会派で、今なお沢山の人達が傷付け傷付き合っている問題と人間の苦悩を取り扱っている。パーソナルな苦悩(エニーボディーズやビッグディール…に関してはのちに語ります)も読み取れて、改めて深い作品だった。
個々のキャラクターにも解釈を深めました。っていうか、私の場合は只の妄想に近しいところもあるんですけど、読み取れるものがたくさんありすぎ!!

いいかい?長くなりますよ??


・真風涼帆/トニー
ゆりかちゃんめっっっっっちゃくちゃ可愛い恋する少年だったよね!?
本人の得意とするところは、コロンの香りが漂ってきそうな色気むんむんの大人の男なんだろうけれど、フレッシュでキラキラで、でも血気盛んな一面も垣間見得て、昨年恋敵の女とバチバチの嫌味の応酬を叩きつけていた(神々の土地)と同じ人が演じているなんて思えない!だってね、まかトニーの「お父さん好きだ!」と「おデブさん( ´ ▽ ` )」が好きすぎて。もう聞いてるだけで破顔する。かわいい。そして、結婚式ごっこで当たり前のように出てくる『ベストマン・リフ』との関係。
個人的に『まかあき』を神推ししている立場から言わせていただくと、本当にこの2人のお芝居って最高だな(因みに『あきまか』ではなく『まかあき』です。左右大事)
エリザの時から思ってたんだけど、まかあきって芝居の相性すごく良いんだよね。お互いの感情を受け取りながらお芝居してる感じがする。エリザの時は父と息子。バレンシアでは喧嘩からの友情。いつだって心の動きが見える。
今回は生まれる前から墓場まで、の関係。ドラッグストアでの絡みが、リアル男子感満載で、すごく可愛かった。リフと暮らしてた4年半が見てみたいし、想像すればどれだけでもエピソードが捏造できます(笑)そして、ランブルの場面、トニーの希望、葛藤、不安、激昂、恐怖、狂気がすごく伝わってくる。トニーはリフの刺された腹部を確認して、死を悟る。トニーが纏っていた希望の輝きが一気に消えてゆく様に涙が溢れます。ここでトニーは明らかな殺意を抱いてベルナルドを刺す。
まかあきの良いところは、普段からベタベタしないので、供給が少ないところ。WSSは供給過剰気味でなんていうかもう、まかあきをお腹いっぱい食べてこのまま冬眠したかった(真夏だったけど)これが4年半の重み、予科本科の尊さ。これからも『まかあき』を激推ししてゆきたいです(笑)
まどかちゃんとの距離も、着実に近くなっていて、ラブシーンの輝きには、目が潤んでしまいます。♪ Tonight の飛翔感、♪ somewhereに至るまでの切迫感も、どうしようもなく恋に落ちてしまった救いのなさと、マリアしか見えなくなって行くトニーも、とてもとても良かった。ていうか、初夜でふたりが見た光景が♪somewhereだってことが、美しすぎて泣ける。ふたりが愛し合って、見えるはずだった未来。みんなが手を取り合って、いつの日か辿り着ける場所が、トニーとマリアの愛の先にあった筈なんですよ…。でも、辿り着けなかった。リフのシャツには血が滲み、ベルナルドは真っ白な表情で世間を睨んでいる。
それ以上に、トニーにめちゃくちゃ泣かされる場面があるんだけど、「なにやってんだよ!俺を殺せよ!チーノ!!」と泣き叫びながら暗闇を彷徨っているところ。トニーは死ぬときまでジェッツのスタジャンを着ていた。半分脚抜けしていても、ここが彼の拠り所だったんだな。でもマリアが、リフが居なくなってしまったら、彼が縋れるのはジェッツである自分だけだったんだろうな。
一歩間違えれば『のーてんきな恋愛脳内お花畑野郎』に見えかねないトニーですが、座長であるゆりかちゃんの繊細なお芝居が、WSSを単なるRomeo must die.的な物語に至らしめる事を、許さなかった一因だったのではないでしょうか。


・星風まどか/マリア
前回の公演を見ていないのでなんとも言えませんが、ご自身の課題をとするところを全てクリアーして、クオリティをガツンと上げて舞台に立っている人の、自信とオーラを感じました。大劇場御披露目公演で『なんとかなるといいな』という部分が改善されていて、その成長を見せてくれて良かった。まどかちゃんが、楽しそうに、嬉しそうに歌ったり踊ったりしている様が大好きなので、これからも胸を張って舞台に立ち続けて欲しいです。なんといっても、初の宙組生え抜きのトップ娘役なんだから!
シャークスの女子は、いつもエネルギッシュで、元気で、まだアメリカに夢を見ている初々しさが輝いていて。まどかちゃんが発するフレッシュな輝きが、マリアそのものでした。ずんちゃん(桜木みなと)のアニータとの『あと1インチ!』のやりとりで、たまに漏れ出てくるスペイン語のキュートさといったら!『こんなの赤ちゃんみたい』と不貞腐れるマリアも、『アメリカのレディになるの!』と目を輝かせるマリアも、純粋で可憐。
台詞ひとつひとつに愛を込めて、愛おしさでいっぱいで、まどかちゃんがマリアを生きている、トニーに恋している、活気に満ちた姿に涙が滲みました。なんか、マリアが活き活きしてるだけで、泣けてくるんだよね。そういうお年頃なのでしょうか(笑)
I Feel Prettyなんて、その極みなんですよね。リフが死んで、トニーがベルナルドを殺したことを、まだマリアは知らない。『かわいくなっちゃった気がする!』と歌い踊るマリアの姿に泣けて泣けて。可愛いから、笑顔で観ながら泣いていました。
その後のチノとのコントラストもまた心にクる。マリアが元気でも泣けるし、絶望していても泣ける(ずっと泣いてる)まどかちゃんの、役を通しての感情のぶつけ合いが素晴らしい。『神々の土地』での、アレクサンドラとオリガの芝居も、心の広がり・役としての成長が見えて大好きだったのですが、アニータとの掛け合いI Have A Loveも大好きです。とてもとても苦しい場面だけど。女役に対する、娘役としての立ち居方は素晴らしく、彼女の芝居の個性であるとも言えるんじゃないかな。
ラストシーンのマリアはまるで、聖母のようでありながら、叩きつける憎しみと許しがとても沁みる。いや、マリアは許せているんだろうか。憎しみを抱えて生きるのかも知れない。今日もなお人間が克服できていない苦悩を抱えて、彼女は生きるのかもしれない。マリアの台詞が全部こころに突き刺さる。本当に素晴らしいマリアでした。
カーテンコールのまどかちゃんがとても好きで。わたしは、踊るまどかちゃんが大好きなので、その姿が見れて嬉しかったです。あの、明るいエネルギーが大好きなんですよね。歌だってもちろん素晴らしいんだけれど、わたしはまどかちゃんのダンスが好きです。


・愛月ひかる/ベルナルド
愛ちゃんの男役の美学が全部詰まっていた!映画に忠実なビジュアル、プロローグでエイラブを通せんぼした瞬間の『こいつには敵わねえ感』、終始イケメンで彼に愛されたら体力要りそうだなぁ(笑)って感じが好き。「エトセトラ(吐息」の色気がやばい。そこで鋭いウインクかますのもやばい。想像力働く。
歌でソロがある訳でもなく、場面の中心になるダンスシーンがあるわけでもないのに、この存在感。さすが愛ちゃんさま。やっぱりお芝居も細かくて、リフと仲良しのフリをしたり、リフと握手した(0コンマ数秒の一瞬でウケるw)後に即、手を吹く様なんか、とてもツボでした。トニーに喧嘩を売るベルナルドも凄く好きで、あの丁々発止感がたまらなく格好良かった。ジェッツの面々よりも、シャークスの方がお兄さんっぽく見えるのも好きでした。
ベルナルドがリフを刺した後、すごく狼狽えてる姿を見て『リフの死は事故だったんだな』と思いました。ベルナルドだって、リフのことが嫌いだと言ってはいながら、殺してやりたい程ではなかった。ベルナルドが憎んでいたのは、人種差別だった。社会だった。
あの短い出番で、この役を表現するのは難しかっただろうと思いますが、宝塚の男役らしいベルナルドでした。男役らしくセクシーでした。


・桜木みなと/アニータ
手足が長い!手足が長くてお顔が小さいずんちゃんが、最高にイイ女として踊っている姿に惚れ惚れしました。マリアに対してもお姉さんっぽくて、ベルナルドの恋人だから、というだけではなくて、彼女のことを愛して大切にしてるんだなぁと思えました。
とても辛い場面が最後に待っているけれど、アニータの場面はどれも好きです。体育館のダンスパーティーで、ヴェルマを見下して鼻で笑うアニータ。ベルナルドにエスコートされて胸を張るアニータ。アメリカの女アニータ。アメリカへの憧れを歌うアニータ。あんなに元気いっぱいで、愛に溢れたアニータが、おとこたちに罵倒されて、男達に乱暴されるのは、本当に許せないし、悲しいし、つらい。乱暴されたアニータがあまり生々しくないのが救いでした。もっと叫ばれたり、泣かれたりされたら、本当に辛かった。この舞台上では体格が良く見える、男役のアニータでなければ、更に辛かった。やっぱりアニータは男役さんじゃないと無理なんだなと思いました。
ずんちゃんはやっぱり、笑顔がいいよね。笑顔で踊ってるずんちゃんが好きです。


・澄輝さやと/リフ
ちょっとどうしよう!?どこから語ろうか!?ふんふん!!(落ち着け)
配役発表の時には、声を出して喜んだことを覚えています(笑)ご本人がWSSに出たがっていたのも知っていたし、是非ともリフを演じてほしいと思っていたから。でも、『タカラジェンヌにヤカラ感は出せない』と、一番心配していたのは、何を隠そうあっきーのことでした。もっと贔屓を信じろよって話なんですが、どうにもあの下町感っていうか裏通り感っているか、不良感を出せるんだろうか、なんちゃってっぽくてわたしがシラけちゃったらどうしようと思っていました。ごめんなさい。どの役でも、わたしの想像や予想を超えたものを見せてくれるに違いないという絶対的な信頼はあるので、そんな風に思っていながらも期待はしていました。
そして、やっぱり期待以上のものを見せてくれた!!
リフは、声のトーンが低く太く、骨太なリーダー格。がなったり、どなったりしていても、隠しきれないノーブルさと聡明さが輝いていた。孤児だけどもともと地頭の良い子なんだろうな。お勉強だってやれば出来たんだろう。でも、ご両親に恵まれず、叔父貴ともうまくやれず、そこで出会ったのがトニーだったのかな。孤児ながら、胸を張って生きる為に、たくさんの大人たちを観察して、生きて行くための知恵を得たんだろうな。だって賢そうだったから。この叔父貴っていうのも、リフに生きることを悪い意味で教え込んだ大人なんだろうな。明るく強く、少年らしさ可愛らしさのあるリフだったけれど、その基盤には闇が見えた。その闇が見えるのが、ベルナルドにトニーを貶され、キレてジャケットを脱いだ瞬間のリフの目です。リフはヒーローのように見えてヒーローではない。だって、戦争会議で武器を決めたくせに、ナイフ出しちゃうんだから。もうベルナルドを負かしてやる事しか頭にない、完全にキレちゃってる目が、ホンモノでした。彼もまた、闇を抱えた少年なんです。病んでいるのではない。ジェッツのリーダーだったり、主人公の親友だったりで、白く見えてしまいそうになるリフに、どっしりと闇のスパイスを効かせた役作りは素晴らしかった。大人(シュランク)を睨み付ける彼のには、大人への憎悪と軽蔑が浮かんでいて、彼の本当の敵はシャークスではなく大人たちであったことを物語っています。somewhereでのリフの表情は、ぞっとするほど真っ白で、世界を睨みつけているようで、これが彼のベースにある闇なのかもしれないと思いました。
でもね、めっっっっっっっっっっちゃくちゃ可愛いところもあるんだよ。卑怯だ!!あきリフのかわいさ炸裂してると思うのが「叔父貴と暮らすのか嫌だからだよ!!叔父貴とぉ〜!!」と、トニーの作った看板を「カッコいいよ」と褒めてあげるところ。ジェッツにいると兄貴風吹かせてるくせに、トニーに対しては犬のじゃれ合いになっちゃうのがかわいい。かわいいんだよぉ。そのギャップがたまらんキャラクターでした。
そして歌とダンスですよ。こんなにずっと真ん中でイイんですか!?ってくらい真ん中でしたよね!!冒頭のジェッツのダンスが大好きなんですけど、WSSのダンスって古典的っていうかちょっとバレエっぽいニュアンスがあって、それがあっきーに似合っていて素晴らしかったです。役としてもジェッツを引っ張っていたけれど、ダンスでもグイグイ引っ張ってましたよね。わたしはまじでダンスに関して素養がないので、どう言い表したらいいのかわからなくてもどかしいです。体育館のヴェルマとのダンスを、オペラグラスで見たい気持ちと、二人のキレキレでスピード感半端ないダンスが場面を仕切ってる全体を見たい気持ちとのせめぎ合いも楽しくて興奮しました。そしてCoolですよ。あの有名な場面の真ん中で指パッチンしてるあっきーが、めちゃくちゃに格好良くてオペラグラスも上げられませんでした。そもそも男性が踊るあのダンスを、グイグイ引っ張って踊りまくる姿の格好いいこと。格好いいとしか言えない。あと10億回くらい格好いいって言いたい。ジャケットを脱いだリフの背中が、ドンピシャにタイプなフォルムで本当にもう!!薄黄色のワイシャツがね!!肩から背中のラインがもう!!!!!男役じゃなくても好きです!!!!んもうっ!!!!!って感じ(言語化の限界)(若干意味不明)
Jet Songの無敵感も、クインテットの無敵感もとてもとても好き。あっきーの歌は、技術で聴かせる歌ではなく、伝える歌、光を操る歌で好きなのですが、今回もわたしのわくわく感を見事に煽ってくれて、これぞミュージカル!!っていう鳥肌が立ちまくりました。
あまりに素晴らしくって、澄輝さやとのリフが大好き過ぎて、おかわりが止まりませんでした。とても美味しゅうございました。ご馳走様でした。


英真なおき/ドク
トニーを殴った後の、ドクの目に溜まった涙が忘れられない。ドクの言ってることが全部綺麗事に聞こえて、そりゃアクションも苛立つよねと思ってしまう。じゃあ、どうしたらと言われても。わたしだったら、対話を選ぶかなぁ…(至極、対人援助に就いてる人間のきれい事的発想よね)ドクみたいな大人、結構いるんじゃないかな。自分も含めて。『私にはマリアはいなかった』という台詞が読み解けなくて、いまだに消化できずにいます。


寿つかさ/シュランク
ああ!なんて嫌な大人なんだろう!お前たちのためだと言いながら、お前のたちの味方だという顔をして、自分の為だけに子どもに関わってくる大人が、わたしは大嫌いだった。シャークスに対する酷い言い方に、この世界での人種差別の酷さが見えてくる。目の前の人間を人間と認めないその態度。すっしーさんのお芝居は流石でした。


・凜城きら/クラプキ巡査
ちゃんと走ってて安心した(笑)シュランクの腰巾着感がとても良かった。でも、りんきらにこの役はちょっと小さ過ぎないかい?


・花音舞/ロザリア
頭足りてない天真爛漫さが可愛かったー!ていうか、シャークスの女子がキャッキャしてる場面は全部好きだよ!!もし自分が娘役だったら、シャークスの女になりたい。
もしかしたら、このお話の後、ロザリアはプエルトリコに帰っちゃうかも知れないな、とラストシーンを見て思ったりしました。


・綾瀬あきな/ヴェルマ
空前絶後のーーーー真夏のーーーーーあきえびまつりーーーーーーーーー!!!!!!!
でしたね。でも、あきえびとしてではなく、ちゃんとリフとヴェルマとして見られたのが、自分がまだ冷静だったということで、安心しました(?)えびちゃんのスピード感半端ないダンスも素晴らしいんだけど、結構お芝居が深いところもあって、流石上級生娘役だな、と思ったんです。
ダンスパーティーで、シャークスの女に挟まれて歩いてる時、すんごく嫌そうな顔して、鼻をつまんで歩いてたんですよ(毎回じゃなかったけど)個人的にそれがかなりショッキングで、ヴェルマの物凄い差別意識を感じてゾッとしました。人を臭いもの扱いするって、かなりの嫌悪感がないと出来ないし、かなりの侮辱ですよ?ただ、ジェッツのボスの女ってだけで、こんな振る舞いは出来ないはずです。
そして、『おっ断りぃ〜』の後、ドラッグストアを出て行くところ。最初に見たときはなんでキャーキャー言ってんのか分からなかったんだけど、後半に見たときには『ヤダ!汚い!触りたくない!!』っていう、シャークスを汚いもの扱いしてヒャーヒャー言っている感じがしたんです。これもまたゾッとしました。
最後、ヴェルマはトニーの遺体について行かなかった。彼女はリフが殺された事を許せていないし、トニーを殺したチノは捕まって当然だと思っているんだろう。その差別意識を深めてしまったのかも知れない。


・蒼羽りく/チノ
いやー、泣かされました。チノがあまりに絶望的な顔をして舞台を去るのに、フィナーレではキラッキラの笑顔で輝いてて、素敵なんだけどテンションが追いつけなかった。号泣しながら拍手してた(笑)
蒼羽さんの男役さんの温もり?というか、あたたかさ?って、一体何なんでしょうね。凄く優しくて、あったかいの。ご本人の優しさが役に表れているのかな。
りくチノが、ぶっちぎりでかわいいところといえば「女の人の店だろ?」ですよ。かわいい。ベルナルドはそんなチノの純粋さと真面目さを知っていて、マリアの結婚相手にと両親に紹介したんだろうなー。で、ナルド的には『チノを男にしてやらねば』っていう気持ちもあったのでは。チノってきっと『結婚するまではダメに決まってるでしょ?』ってタイプだろうし。
トニーを撃った後のチノの感情の流れ。表情の変化。纏う雰囲気と、ドス暗くなってゆく色。絶望と無。素晴らしいお芝居でした。そんなん、泣くに決まってる。チノがこの後、まともな裁判を受けられる予感がしないのにも、更に泣けてしまうんです。


・風馬翔/ディーゼル
かける先輩の安定感半端ない(笑)絶対強いし、絶対に卑怯なことしなさそう。喧嘩しても、致命傷は負わせなさそう。ちょっと頭足りなさそうな感じ(掛け算出来なさそう…って褒め言葉だよ!)とか、口数が少なくて、ちょっとまわりに流されちゃいそうな感じが愛おしかったです。なんとなく、リフがいないと何にも出来ないヤツなんだろうなって感じがする(笑)

・美月遥/ぺぺ
素晴らしい罵声でしたね!!(褒めてます)ジェッツを罵る怒声の迫力が半端なかったです。ベルナルドより強そう(笑)
トニーの遺体を運ぶとき、身を乗り出し、手を伸ばしたぺぺの心の動き。彼が踏み出した一歩の、尊さと重さといったら。このお話に救いを見いだすとしたら、さおちゃんぺぺが最後に差し出した手、だと思う。あそこで毎回涙腺が盛大に決壊しちゃうんだ。


・星月梨旺/ビッグディール
りおくんのビッグディールは、すごく深かった。彼が抱えてる闇が一番深いんじゃないかってくらいに、こわい存在だった。
ビッグディール、絶対にリフのこと好きだったでしょ。実は好きだったでしょ。いやあの、『そういう意味で』好きだったでしょ。自分でもわかってないんでしょうけど、好きだったでしょ。だから最後、シャークスとは並んで歩けなかったんじゃないかな。許せない気持ちがあって、その場から動けなかったんじゃないかな。
やたらと女のフリをしたり、アニータへの当たりが一番キツくて酷いあたりに、女性に対するコンプレックスを感じました。ほかのジェッツのメンバーと、ちょっとだけ違う雰囲気なのも、りおくんのお芝居の妙が効いていました。すごく深かった。


・瑠依蒔世/アクション
あーちゃんのアクションは想像通りだった。良い意味では安定感があり、悪い意味では驚きや再発見がない。もう少し飛び越えて来て欲しかった。技術は高いのに、いま一歩足りない気がしてもどかしかったです。でも、アクションのクレイジーさと救いようの無さは凄く良かった。
クラプキー巡査おちょくりソング(そんなタイトルじゃない)が楽しくて大好きなんですけど、あの場面クレイジー過ぎるよ。兄貴と、ライバルのボスが目の前で死んでしまったショックから、自分たちを正当化している少年たちの歌だよねあれ。あの場面があってから、ドラッグストアに至ると思うとすごく怖くてしんどいよ、あの歌。結構エグいし辛辣だよね。楽しいんだけどね。楽しくなっちゃうわたし自身も怖いよ。まともに自己分析出来てるくせに、正当化しちゃうし更に狂っちゃうんだよ?『こんな世界しか知らない』って言い返せちゃう救いようの無さ。
最後、アクションはマリアの黒いストールを見て、何を思ったんだろう。そして、彼の世界は変わったんだろうか。


・秋音光/ベイビージョン
わたしは、あきも君にMVPを差し上げたい。本当にうまい。切ないくらいにうまい。なんていうかさ、彼もかなりの被害者な訳じゃん。何を憎めば良いのかってくらいに、彼も傷付けられた訳じゃん。そして、最後マリアに黒いショールを掛けてあげる、彼の説得力たるや。なんかもう、全てが上手いの。お芝居も歌もダンスも。しかも、調和的なうまさなの。突飛なうまさではないの。本当にうまいよ彼は。
Coolで、リフの目をじっと見て、彼の話(歌だけどさ)を聞いてるベイビージョンの真っ直ぐな顔が、ジェッツの色をすごく表してる。きっと彼はリフからいろんな事を教わってきて、心から慕ってて憧れてて、頼りにしてるんだろうなぁ。で、同じくらいにトニーのことも慕ってるはず。彼にとってリフは、どんな大人よりも頼りになる存在で、格好良くて、言葉にならないモヤモヤを全部受け止めてくれる、兄貴だったんだろう。


小春乃さよ/コンスエーロ
さよちゃんの影コーラスは、『うたかたの恋』の時からすんばらしいと思っていましたが、今回も素晴らしかった。Somewhereの歌い出しから泣いてたもん。なんてピュアな歌声なんだろう。愛に溢れてて、さよちゃんって女神様なのかな!?この歌が聴けるだけでもしあわせな公演だった。
コンスエーロ的には、ぺぺを『それはあんたでしょこのブタ野郎!』と罵ってビンタするところが好きでした(笑)


・夢白あや/エニボディーズ
不思議な存在だよね。多分、エニボディーズ自身も、自分が何者なのか、何になりたいのか、わかってないんじゃないかなぁ。自分で『これだ!』と思ったことを目指しても仲間に入れてもらえないし、女の子たちには『しっしっ』って払われちゃうし。男でありたい訳でもないし、女として生きるのもなんか違うし、どこにも居場所がない。トニーに『お前女なんだろ?だったら女でいろよ!』と言われた時の、絶望というか、怯えというか、なんとも捉えがたい表情をしていたのが印象的でした。そして、その表情について、なにひとつとしてわかったところがない。私にはエニボディーズがわかりませんでした。

【平成最後の夏】

よかった!なんとかまとめられました!まとめられたつもりです。
どうしても今日中にまとめたかったので。

最後に、もと不良少女より。

当時、何より嬉しかったのが、幼い頃から同じように、毎日「おはよう」「おかえり」「おやすみなさい」と挨拶をしてくれた、近所のおばさんです。見た目がどんどん変わっていって、腫れ物に触るように接して来る先生たちより、やたらと親しげに近付いてくるカウンセラーなんかより、おばさんの挨拶がよっぽど嬉しかった。なんでもない、ただのひとりの人間として接してくれるのが嬉しかった。
だから、わたしに出来ることと言えば、マンションのエレベーターですれ違う子どもたちに「おはよー」と挨拶すること。外国からやってきた人たちに「こんにちは」と微笑むこと。困っている人に、「大丈夫?」と声をかけること。すべての人に対して、人間として接する態度を、持ち続けることだと思います。

説教くさくなって終わりますが、これがわたしの、宙組WSSのメッセージに対する、ひとつのちっぽけな答えです。