すーぱーからしちゃんねる

からしがみたものをまとめたものです。

シアターコクーン『天日坊』

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【期待】

初演を映像で見たことがあります。宮藤官九郎のテンポ良い台詞と、格好いい音楽、張り詰めるような緊張感のあるラストシーンに、手に汗握ったのを覚えています。印象は『現代的古典』です。黙阿弥作の古典なんだけれど、作品の筋を走っているテーマが、割と現代的に感じられたんです。個性を強く求められる現代と、江戸時代の日本人とでは、己の在り方についての叫び方が違うんじゃないかと思うんですね。実際にあった事件を元に作られた作品というのもとても興味深くて、実はこういった叫びは、時代関係なくあるものなんじゃないか。そんな印象を抱きつつ、実際に劇場でこの作品を観て、経験して、何を感じるんだろうといった期待がありました。
わたしにとっては二度目のコクーン歌舞伎です。土曜日の渋谷は人が多かったけれど、心なしかいつもよりひっそりとしていた気がしました。こんな状況でも幕を上げてくれることに感謝です。

【全体像】

脚本がクドカンなので、所々現代語が飛ぶテンポの良いお芝居でした。初演より30分カットされており『ああ、ここをカットしたのね勿体ない!』と思うところこそあれど、役者の仁と表現力に任せた部分も強くて、そこは面白く感じました。偉そうに言うとギミックのインパクトには欠けるかも。
『天日坊』の面白さは、最終的にめちゃくちゃ不安定なものの中にドカッと着地するところにあると思う。どうしたら良いかわからない。孤独でどうしようもない、みたいな。人間そんなに整合性のあるもんじゃないよねっていう。カチッとした正解を求めがちな自分の感性にデコピン喰らった感じがしました。
いろんな解釈ができる余白がどっしりとしてあるのも良かった。それがあるだけで、芝居に痺れた感覚が長く持続するから。最後の場面で振り返る男は頼朝なのか義仲なのか(プログラムで串田さんは勘三郎さんに頼朝で、と言ったようですが、今回はわからんよね!)父親が歌舞伎役者であったがために、人生が定められてしまう運命に生まれた歌舞伎役者にあの場面を用意するのも、めちゃくちゃ良い。ある意味とってもエグい。このメタのエグさがたまらない。
その孤独さと不安定さ、人間のあやふやさを格好良く表現しているバンドの演奏が素晴らしかった。特に、このお芝居でのトランペットは、とても孤独だ。このトランペットが聞こえてくるから、人は道を踏み外すよねっていう説得力があった。サントラほしい。トランペットのうねりが、法策の不安定な心と叫びのように鳴っていた。初演のように、ラストシーンの大立ち回りで、舞台上にズラリとトランペット隊が並ぶことはなかったけれど(実はいちばん観たかった場面)舞台から一段降りた客席側にバンドのピットがあるのもなかなか良かった。ちょうど舞台と客席の境界線上から音が鳴っているのが良かった。


【キャスト】

中村勘九郎/法策 後に 天日坊
勘九郎さんの17歳のお芝居がとても自然体で良かった。突然降ってきた運命に、どんどん顔色が変わってゆく様も良かったです。お三婆さんを殺す場面は、見ていて悲しかったです。「南無阿弥陀仏」の叫びが悲鳴のようにも聞こえました。
そしてもちろん、大詰めの殺陣!ゾワゾワした!鳥肌が舞台の方から波のように襲って来るのを感じました。ふと我に返って震える姿にリアリティが垣間見える。天日坊から、ただの法策に戻る瞬間のお芝居が素晴らしかった。

中村七之助/人丸お六
七之助さんは今回も強くてお綺麗でした。脚が綺麗なんだな。特筆すべきは大詰めの殺陣ですよ。あんなに動き回る女形って、他にいる!?お引きずりの着物の裾を常に捌きながら、刀を振り回しまくるのに、一切男が出ないその技に、惚れ惚れしましたよ。髑髏尽くしのお衣装も素敵でした。大詰めのために、わざわざ引っ込んで、着替えてくるのもよし。

中村獅童/地雷太郎
獅堂さんは、亀蔵さんとひたすらデカい声でバカな会話を続ける場面を超楽しみにしてましたが、めちゃくちゃ笑った。ただ声がデカいだけで笑えるという幼稚園児現象。殺陣も迫力があった。派手派手な衣装の着こなしもさすがで、ひとつひとつのキメが格好良かった。

市村萬次郎/猫間光義
萬次郎さん好きなので、お姿が拝見できただけでも嬉しかった。声がいいんだよねえ。高貴さが溢れている。

片岡亀蔵/観音院、赤星大八
亀蔵さんの観音院は、いやらしさの中に可愛らしさがあって、これこそ役者の仁だよなあと思いました。お布団敷いてあげようかなって思ったもん(笑)もっと、こちら側が嫌悪感を抱くレベルまでいやらしさを出してもいいのかなとは思いました。「あんな生臭坊主、殺されてもいいよね」と言う気持ちにはならなかったです(褒めている)
赤星は最高だった。太郎との大声合戦も爆笑したし、法策にお着物をぶん投げて来るのにも笑った。勘九郎さん飛んで行っちゃうかと思った。

中村虎之介/北条時貞
チャラ男時貞。みっくんの時貞にも「なんだこいつ笑」と思ったけど、虎之介くんにも「なんだこいつ笑」って思った。斬られた高窓との芝居が良かった。鶴松くんとの並びがいいよね。

中村鶴松/高窓太夫
お歯黒が可愛かった〜。時貞とのバカップル場面で、歯を出して笑っているのがチャーミングでとても可愛かったです。身重の高窓は必ずしも斬られる必要がなかった人物だと思う。歌舞伎はすぐに人殺を殺すから、そんなもんかなと割り切っちゃう自分の感覚がいやだな。高窓を斬った後の太郎のバツの悪そうな様が印象的です。

小松和重/越前の平蔵
大人計画の小松さん。今回が歌舞伎初出演だと、2幕の幕開きのフリー芝居で仰っていました。どこかで見たことあるなあと思っていましたが、ドラマにたくさん出ている人でした。実は〇〇と言った役所でしたが、匂わせ場面で薄すぎず濃すぎずの芝居をしていたのが印象的でした。

笹野高史/お三婆、鳴澤隼人
笹野さんのお三婆さん、すごく期待してたんですよ!この作品って、お三が殺されるまで、ほぼコントじゃないですか。そのコントの(コントじゃない)中心になって回しているのがお三婆さんなので、笹野さんにはとても期待していました。その期待を裏切らない笹野さん、最高でした。客席が使えない分、めちゃくちゃ動きがスローなおばあちゃんボケをどうやってくれるのかを楽しみにしていましたが、すでに「いる」だけで笑わせて来るのは流石。笹野さんはとても小さくて小柄なおばあちゃんだったので、法策に殺される場面の理不尽さと悲惨さが半端なかったです。
隼人は、時貞高窓のバカップルノリに一生懸命ついて行こうとする姿に泣けました(そういう芝居じゃない)

中村扇雀/久助
扇雀さんには、隠しきれないロイヤルみがあるので、匂わせ場面がめちゃくちゃ匂っていて、面白かったです。久助の匂わせ場面が結構カットされていたように思うのですが、扇雀さんの仁というか、芝居の説得力でねじ伏せた感があったかなあと思います。法策にとって、兄弟のように慕っていた久助の存在は、とても大きかったと思うので、芝居の要なんじゃないかなと思うんです。そこら辺を割愛しても成立させられるのは、扇雀さんの役者の技量なんだろうなと思いました。

【13人】

珍しく今期の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』にハマって、毎週見ています。アニメの『平家物語』も見ていて、この時代のあれこれって、歌舞伎のお芝居のモチーフになっていることが多いので、面白く見ています。『天日坊』もその辺りの人物関係が被って来るので、より面白かったです。
『天日坊』はきっと、観るたびに感じるものが変化しそうだし、役者が年を重ねてこそ出せる味がありそうだなと思ったので、何年かおきにやってほしいなと思いました。コクーンシアターがなくなっても、コクーン歌舞伎やってほしいです。

月組大劇場公演『今夜、ロマンス劇場で/FULL SWING!』

【期待】

れいこちゃん(月城かなと)とうみちゃん(海乃美月)のお披露目公演です。とっても楽しみにしていました。博多座の『川霧の橋/Dream Chaser-新たな夢へ-』を配信で見て、2人の雰囲気がとても美しく、芝居の息もあっているのを知って、お披露目公演への期待は最高潮に高まっていました。れこうみコンビが、ちなつ(鳳月杏)を2番手に、雪組から彩みちるちゃんを迎えた新生月組、書いているだけでもわくわくします!

1週間前に花組を見る予定で(初宝塚の男友達をアテンドする予定だった)いたのに、公演中止になってしまい、全身が震えるほど悲しかったです。しくしく泣いた。このご時世、突然公演が中止になる可能性は十分ある。
この状況下でも遠征を諦めなかったのは、SS席が当たっていたからです。SS席のセンターなんて、なかなか座れる席じゃあない!正直、客席に座って開演のブザーを聞くまで、安心できませんでした。往来の新幹線は土曜日なのに、空いていました。ちゃちゃと日帰り遠征をキメて来ました。
行って良かった。見られて良かった。ヅカヲタ人生第3章の扉も開きかけている。遠征から数日経ちますが、お陰様で毎日が楽しいです。今回は、そんなテンションですが、どうかウザがらずにお付き合い下されば幸いです。

演目の発表があってから、原作映画をアマプラで見ました。綾瀬はるかが可愛く美しく、特に衣装が可愛かったのが印象的でした。ここは宝塚のお衣装部の腕が鳴るところですよね。お話もロマンチックで、派手さはないのだけれど、ラストシーンにはじんわりと涙を流せる、知る人ぞ知る素敵な邦画だったなあといった印象です。
配役発表も楽しかった記憶があります。原作映画と役を照らし合わせてみたり、映画にない役を見つけて面白がったり。特にありちゃん(暁千星)の大蛇丸。君は穢土転生して優勝するタイプの大蛇丸かい?
小柳先生は、『Shall We Dance?』での実績もありますし(わたしはこの公演でれいこちゃんの顔とお名前を覚えました)不安なところは一つもありませんでした。自分の性壁と相容れないタイプの萌えがあったらイヤだな、と思ったくらいです(あるんじゃん)

ショーは、久しぶりの三木先生。ヅカヲタビギナー時代は三木先生のショーで育てられたので、久しぶりに見られるのが嬉しかったです。初日からTLに流れてくる『客席の手拍子が合わない』というレポも気になっていて、どんな変拍子でも鬼のテンポキープに絶対の自信があるわたしは、なぜか手拍子を間違いなく打つことに使命感を抱いておりました。裏拍手って、慣れていないと難しいよね。スカ仕込みの裏拍子をご披露する時がやってきたぜ!!

さて、今回の記事では、特にお芝居のネタバレに触れています。映画をご覧になっている方にとっても、重大なネタバレだと思います。ぜひ、真っ新な状態で観劇して頂きたいので、観劇のご予定のある方は、今作をご覧になってからお読みになる事をお勧めします。


今夜、ロマンス劇場で

英題は『Color me true.』ということなんですけど、なるほどそういうことなのかー!って思って泣いた(ちゃんと説明して)

映画版では、モノクロの色彩のまま現実世界に飛び出てきた美雪が、化粧をすることで色を得ていたので、舞台ではどうするんだろうと思っていました。ラストシーンの大詰めで、映画の世界の人たちが色を得る。現実世界の人たちが各々の人生を終えて、ファンタジーの世界の人たちとひとつになる。触れ合えるようになる。気持ちを最高潮に盛り上げて迎えるラストシーンに、涙がドバドバ流れて止まりませんでした。コンタクト流れるかと思った。
このひと場面だけに色付きの衣装やかつらを用意する宝塚歌劇の、潤沢な資源にも感動した。ラストシーンの花吹雪までレインボーだったもん!この作品は、色が印象的に使われていて、それが明るく華やかで、お正月公演に相応しい気分だったと思います。
映画という2次元の世界が、うまく3次元になっていたなあと思うのです。スクリーンセーバーとか、カラオケの画面みたいな映像じゃなくて、ちゃんと意味のある、効果的な映像の使い方も良かった。視覚的なところだけではなく、芝居も立体的になっていたのが良かった。特に、映画版では一切触れられずに終わってしまった、映画の世界に残された人たちが描かれているのが楽しかった。
年老いた健司も同一の役者が演じているのが、舞台的でとても良かった。映画では別の俳優さんだったので。同一の役者が一生を演じきった後にラストシーンへ向かう盛り上がりが、涙を誘うのよね。れいこちゃんのお芝居もよかった。年を重ねる健司と、年老いない美雪を、同時に見せて、様々なカップルが踊って演じるのも良かった。彩音星凪くん格好良かった。
月組は芝居が全体的に緻密なのが素晴らしいよね。特に感心したのが、師長役の姫咲美礼さん。健司が息を引き取った後に、両手を重ねてあげて、頭を下げていたのがとても印象的でした。ただのお小言上司になっておらず、看護師長としての説得力があった。

れいこちゃんの健司は、派手になりすぎず、純朴だけど美しい主人公になっていた。宝塚で演じられる日本人男性って、少し珍しい感じがして大好物なのはわたしだけでしょうか。健司の髪型が、良い感じに床屋で切った感があって萌えた。後頭部がかわいいんよ…。お披露目だし、もう少したくさん衣装を着て欲しかったけど、そういう役じゃないから、次回作に期待。あと、れいこちゃんは声がいいよね。声が立っている。台詞が優しくまろやかに聞こえる。お人柄が滲み出ている気がする。

うみちゃんは、お披露目に相応しく、きゃわいいお衣装を取っ替え引っ替え着せられていて、目が嬉しかった。ドレス捌きやお衣装の着こなし、浮ついたところのない立ち姿は、さすがだなあと思いました。れこうみコンビには、落ち着いたしっとりした魅力があると思うのです。老年の健司と向き合う時のお芝居が本当に素晴らしくて、涙が止まりませんでした。

ちなつの俊藤さんに関しては、語り出したら止まらない。俊藤さんの自己肯定感の高さを見習いたいです。原作映画の北村一輝もぶっ飛んでいたけれど、それを上回るちなつの俊藤さん。プログラムのインタビューでも語っていたように『宝塚では突然歌い出したり踊り出したりするのは普通のこと』なのに、俊藤さんが踊り出すと突然シュールな場面になっちゃうのは、ちなつの技術だと思う!!本来ちゃんと踊れる人なのに、めちゃくちゃ顔で踊っているし、レッツ輪廻⭐︎って歌っているし、どういうリアクションを取ればいいかわからず、スペースキャットみたいな顔してたと思う(笑)脚を組むために座って、一瞬で立ち上がるところとか、本当に好き。なにこの無駄なモーションwww 俊藤さんの女なのか、その関係性が非常に気になる白雪さち花ちゃんもめっちゃ好き。相手役なのに、なんで連獅子やんのwww なんでさち花ちゃんが親獅子なのwww どういうハンサムガイ企画なのwww 連獅子のお衣装も当然のように持っている宝塚歌劇団ほんとっょぃ

ありちゃんの大蛇丸にも笑いました。押入れから出てくるなんて反則すぎる。エリザベートのパロディめっちゃ笑った。曲者なのに、可愛らしいところもあって、おとぎの物語の住人らしく、憎めないキャラクターになっていて、愛せる!と思いました。従者のふたりとの小芝居ももっとちゃんと見たい。狭霧の礼華はるくん、大きくていいよね。最後の場面、雨霧ちゃんがいなくて寂しかった。なんとかなりませんか(それはちょっと難しそうです)

おだちんの山中は、原作だと結構激しく健司とぶつかっていた印象があるんだけど、その辺がマイルドになっていて良かった。喧嘩して欲しくないふたり。

彩みちるちゃん、社長令嬢としての在り方が完全に優勝していた!儚い砂糖菓子のような輝き!

忘れちゃいけないのが三獣士の3人!原作映画であんな一瞬しか出てこないキャラクターを、こんなに愛らしく大活躍させてくれて、小柳先生どうもありがとう!電話ボックスから出入りする3人めっちゃ可愛かった。わたしが見た日は、蓮つかさくんはお芝居だけ出演されていたので、狸吉はれんこんでした。お髭がとっても可愛かった〜。しっかり養生して、また可愛い狸吉を見せてくださいね。鳩三郎の柊木絢斗くん、覚えた。いちばん美味しい役だったね!

セブンカラーズの面々も可愛くってデレデレしちゃったよ!結愛かれんちゃんを見ながら、白河りりちゃんを見ていた。

印象的な登場人物が多すぎて、語り尽くせないんですけど、東京公演ではもっと視界が広がっているはず(多分)なので、東京公演を楽しみに待ちます。

【FULL SWING!】

ノーブルで大人っぽい雰囲気のショーで、とっても楽しかったです!初見でSS席だったので、視界は狭いし、途中から視点は固定されるしで、全体的なことは全然わからないまま終わっちゃったんですけど、非常に楽しかったです。
噂になっていた手拍子も、わたしが見た日には揃っていたように思います。主題歌はとてもおしゃれで、宝塚独特のビート感が控えめだから、裏拍を取るのが難しいのかな。でも、この主題歌には裏拍だよね!手拍子していて楽しかったです。欲を言えば、もう少し手拍子を入れて欲しいかな。もっともっと盛り上がれると思うんです。

れいこちゃんが美しすぎて発光していたことは、言うまでもないし、その美しさに負けずに輝いていたうみちゃんも素晴らしい。ちなつは足が50メートルあるし、途中で俊藤さん出てきちゃったと思ったらジゴロだった。ウインクばしばし飛ばしていて頼もしさすらあった。ありちゃんは踊らせておけばいいみたいな扱いは良くないと思います!勿体無い!おだちんは、貫禄がありながらも、背伸びしない等身大の姿で場面をグイグイ引っ張っていた。みちるちゃんが、1人で銀橋を渡っていたのが良かった。My Wayのコーラスのピュアなエネルギーに涙した。ネコちゃんのロケットも斬新で可愛かった。デュエットダンスは、れこうみだけで見たかったけれど、出ている人はみんな好きだ。エトワールは、白河りりちゃんときよら羽龍ちゃんが声量も大きくてツヨツヨだったので、最後に歌い出すおだちんのことが心配になりましたが、更にツヨツヨな上にコブシまで効いていたので取り越し苦労でした。今回のエトワールはツヨツヨのツヨ。おはねちゃん、お怪我早く治るといいね。

こんな感じで、駆け足でショーを振り替えなければならないのは、中盤でとんでもないものを目撃してしまって、記憶は飛ぶし視点は固定されちゃうしで、大変な目に遭ったからなんですよ。
終演後「ありちゃん格好良かった」としか言えなくなってたんですよね。ありちゃんが、わたしの隣の人を一本釣りしていたのですよ。指差ししてウインクするという、「お前を逃さない」的な見事な一本釣りをしていたんですよね。それにつられて釣れちゃいそうになったのが、このわたしってワケ!
最近の良くない癖で、舞台を見ながら『ブログに○○って書こう』と思いながら見てしまう、あまり没頭できていない楽しみ方をしちゃってたんですよね。でも、この日は違った。語彙を無くすというか、感じたことを言語化する余裕がないくらいに、舞台に没頭していたし、ありちゃんを目で追っていた。
『It's all right with me.』のありちゃん格好良すぎて5回くらい心拍止まった。
前に月組さんをSS席で拝んだ時は、ありちゃんはまだ下級生で可愛い雰囲気のほうが強めで、ショーでは顔に汗をだくだくかいて、それはそれはかわいかったんじゃよ。しかし、この日のありちゃんは涼しい顔で爆踊りをしても息も切らさずに、前髪をかき上げていた。この成長を目撃できた喜び。尊……。今では初舞台から成長を見守ってこれたことに感謝し始めている。もうダメかも知れない。

【ヅカヲタ第3期スタートなるか?】

ありちゃんが「おとなになった僕を見て」って言ってた。※言ってません。
あと一押しされたら、沼にドボン!と落ちると思います。お茶会があったら一発だった。今回はストンと着水せずに、ジタバタもがいて沈んでゆく感じなのかもしれないし、沈みそうで沈まないのかもしれない。膝まで浸かったままで終わるかもしれない。でも、津波とか洪水って、膝まで浸かったらもう助からないって言うじゃないですか。どうなんですか。来るんですか。来ないんですか。
押すなよ押すなよの茶番をお友達と繰り広げながらも、お祝いのメールを頂いたりして、ヅカヲタ第3期スタートの予感で毎日とても楽しいです。キャトルで『暁』だらけのレシートの買い物をしたり、書きなれない漢字なので宛名のために練習したり。
自分で書きながら思ったけど、こいつもう相当ダメじゃん(笑)
夢の花束を差し出されても、素直に受け取らない展開なのかもしれない。そうか、ポスターカレンダーのありちゃんはフラグだったのかも知れない!これはこれで、面白いし楽しい。
東京公演でも一桁列どセンター席が当たってしまったので、運にまで背中を押されてしまったとなると、もう逃げようがないのかもしれない。もう、どう転がっても面白いし楽しい予感しかない。
今年は面白い年になりそうです。

歌舞伎座『壽初春大歌舞伎』-義経千本桜(川連法眼館の場)-

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【主な配役】

佐藤忠信実は源九郎狐/市川猿之助
義経/市川門之助
静御前/中村雀右衛門

【所感】

川連法眼館の場、通称『四の切』が憧れの演目であることは、こちらの記事で言及しています。
karashi-channnel.hatenablog.com

2020年の12月に、歌舞伎座中村獅童さんの源九郎狐を観ています。今思い返せば、こちらは宝塚で言うところの新人公演のようなパッションが溢れた演目だったのだなあ。同じ演目なのに、全くの別物でした。澤瀉屋の演出である宙乗りがあるからではなくて、役そのもののあり方というか、カラーというか、質感が全然違う。いずれも素晴らしい観劇体験だったけれど、胸に残るカタルシスというべきか、ぬくもりが全くの別物だったのです。またひとつ、歌舞伎を観る楽しさに目覚めたような気がします。こうやって役者の表現の違いを楽しむのね。

猿之助さんの狐が楽しみだったのは、『弥次喜多』で「ここで必ず足を踏ん張るんだ!俺は何百回もやってるからわかるんだよ!」と言っていたので、本当に出の時に定位置に足を置いて踏ん張っているか観たかったから(ちゃんと踏ん張っていた)でもやっぱり、レジェンドになりつつある、その評判を聞いていたから、憧れていたんだろうな。『ワンピース』の時に大怪我をされて、もう観られないんじゃないかって思っていたから、猿之助さんの狐に会えたのが嬉しかった。

忠信の落ち着き、佇まい。存在しているだけでも放たれている鮮やかなオーラ。スターのオーラでした。こんな人物に化けようとした狐の意地らしさ可愛らしさが微笑ましくてニコニコしてしまう。

狐って、素人が見てもわかるくらいに超絶技巧の連続で、やることがたくさんあるのに、猿之助さんの狐には、ハクハクしたところが一切ないのが素晴らしい。本当に魔法なんじゃないの?ってくらいに全てが滞りなく鮮やかでスピーディー。大人の目も騙されるようなケレンの連続にワクワクしっ放し。
派手な演出だけではなくて、お芝居もとても繊細だった。狐が鼓をもらって喜んでいる姿、コロコロと鼓を転がして戯れている姿を見て、昔飼っていたお犬を思い出して泣きそうになった。心から「良かったね」、という想いが湧き出て溢れてくるような。

宙乗りを下から見上げるお席でした。吉野の山に嬉しそうに帰ってゆく姿を見守りながら、拍手をしている時に、お腹の中が温かくなって、いろんなものに感謝したくなるような気持ちが湧き上がってきました。この時のわたしは、しあわせが湧き出てくる瞬間を知覚しながら、お芝居の世界と一体になっていたのだと思います。狐が見えなくなって、桜吹雪が舞っているのが見えた時、お腹の中にあったモヤモヤとか、憂さみたいなものが、パッと晴れたのがよくわかりました。終演後、チケットを取ってくれたお友達に、目に涙を溜めて、精一杯のお礼を伝えていました。

あとさ!!猿之助さんウィンクしてきたんだが!!がっつり被弾したんだが!!好き!!!!
猿之助さんのウインクがどれだけ破壊力があったかというと、明日からガードしちゃうくらい凄かった。東銀座でスクワットだ!!(ヅカヲタならわかるよなっ!?)

雀右衛門さんの静御前は、当然落ち着きがあって、姫姫しさと気高さがあって、芝居に厚みがありました。ラストシーン、吉野の山に帰ってゆく狐を見上げるやさしいお姫様の表情が良かった。
門之助さんの義経は、威厳と力強さがあって、狐に鼓をあげるところで、彼の優しさを何倍にも感じられた。こちらも、芝居に厚みがあった。

【他の演目】

第一部の『一条大倉物語』『祝春元禄花見踊』と第三部の『岩戸の景清』も観劇しました。
『一条大倉物語』は、以前に見たことがあって、ストーリーは頭に入っているものの、どうにも時代物のテンポが肌に合わず、楽しみ方がわからなかった。面白いと感じるところはあるのですが。これから歌舞伎を見続けてゆくうちに、きっと時代物の面白さに目覚める日が来ると信じているので、その日を楽しみに待ちます。

『祝春元禄花見踊』は、小川陽喜くんの初お目見得でしたね。初お目見得というものを初めて見ました。幕が開く前から「おはようございます!よろしくお願いします!」のかわいい声が。陽喜くんの奴さん、おもちゃみたいに小さかったけど、キビキビしてた!殺陣もやってた!でも、刀がなかなか鞘に収まらなくて、黒子さんが大活躍だった。へえ〜、これが初お目見得ってやつですか。3歳の子が舞台に立っているのは、もちろんかわいいとは思うのだけど、心が痛むところもあった。本人が楽しくやってるなら良いのだけど、まだまだイヤイヤする時期だと思うし、ほんと無理させないでほしい。『本日ぐずっている為休演します』とかあっても良いと思う気持ち。

第三部の『岩戸の景清』はお芝居仕立てのショーって感じだった。まるると隼人さんを組ませた人にお年賀をあげたい。

【今年もよろしくお願いします】

宝塚ばかり見ている人の歌舞伎の感想記事ですが、検索からアクセスして下さる方も多く、こんなど素人ブログに足を運んでいただけるなんてと、大変恐縮しております。

当たり前の事なんだけど、映像で何百回観る舞台よりも、1回きりでも生で観る舞台に勝る物はないですよね。どんなに技術が進歩しても、時間と空間と経験は、肉体以外の器には保存できない。できっこない。主客が交じり合う空間が劇場というもので、わたしはそれを愛しています。

そんな感じで愛しているものを、今年も楽しく綴ってゆけたらいいなと思っております。

本年もよろしくお願いいたします。