すーぱーからしちゃんねる

からしがみたものをまとめたものです。

新橋演舞場『新作歌舞伎 NARUTOーナルトー』

【期待】

『スーパーⅡ歌舞伎ワンピース』を、シネマ歌舞伎で観たんですよ。ONE PIECEの魅せ方とかコマ割りって歌舞伎っぽいところがあるから、歌舞伎と合うだろうなと思っていました。楽しかったです。歌舞伎のことを良く知らなくても「うわあ、歌舞伎っぽい!」と感じられる演出と、歌舞伎役者が本気で表現するブッとんだキャラクターが楽しかった。
映像で見たので、生の迫力まで経験できず。もし再演されるなら観に行きたいと思っていたのに、市川猿之助さんが休演されたり、役替わりが激しすぎて日程調整について行けなかったりでチャンスを逃してしまいました。
シネマ歌舞伎では、ロロノア・ゾロとボン・クレー、スクアードの3役を演じていた市川巳之助さんと、サンジとイナズマを演じていた中村隼人さんの、顔とお名前を覚えました。巳之助さんは、少年ジャンプの世界観を体現する陽のエネルギーが印象的で(オカマ六方は生で見たかったなあ)隼人さんは、顔がめっちゃ好き。ごめん、まずは本当に顔が好き(笑)お二人が大滝の場面で、めちゃくちゃに格好良く、これでもかと推されているように見えたので『この2人が若手のホープで、推したいんだろうなあ』と思いながらお家に帰りました。

ちょっと余談でしかも自慢なんだけど、宝塚大劇場宙組を見に行った時、たまたま近くの席に中村隼人さんが座っていて、めっちゃハクハクしながら贔屓の女役を観る…という奇妙な経験をしたことがあります(笑)巳之助さんも居たかもしれない。でも、隼人さんしか見えなかった。隼人さんはやっぱり顔が良かった。カジュアルなお洋服でも格好良かった。そして若者だった(若者だしね)

相変わらず前置きがなげーよ!NARUTOの話をしろよ!笑

NARUTO週刊少年ジャンプの連載開始時から、暁が出てくるあたりまでリアルタイムで読んでいました。でもねー、わたしって何故だか、漫画のストーリーを覚えていられないんですよ。5回くらい繰り返して読まないと、内容をすぐに忘れちゃうんですよ。どうしてなんだろう(笑)漫画自体は面白く読めるのに。そんなことだから、悠未ひろさんが大蛇丸を演じた『ライブスペクタクル NARUTO』(以下ナルステ)を観に行く前には、必死に漫画喫茶に通って全巻読み直しました。それだって数年前の出来事なのに、ストーリーはなんとなく覚えていても、細かいディテールは覚えてない。そんなレベルの人が書く感想なんで、その程度なんだなと思って読んでください(笑)
スーパー歌舞伎Ⅱワンピース』の上演が決まった時、「どっちかというとNARUTOの方が歌舞伎向きなんじゃないの?海外人気もあるし。ネルケでやっちゃったから、やれないのかな。」と思ってた。NARUTOって、世界観が和風で、忍が出てきたり、キャラクターデザインが歌舞伎っぽいから、意外性がなかったのだろうか。
『新作歌舞伎NARUTO』の制作が発表された時、主演のおふたりも知っていたし、ぜひ歌舞伎で観たいと思っていた演目だしで、観に行けたらいいな〜と思っていたら、お食事付き桟敷席のチケットが降ってきたので、「っしゃー!んなろー!」と行ってきました。初歌舞伎・初新橋演舞場・初桟敷席の初体験尽くし。同じく初体験尽くしの母を連れて。

【シナリオ】

まあ、そんな程度の原作愛なので、軽く読み流してください。とても良くまとまっていたと思います。原作が一度きちんと幕を下ろしているだけあって、しっかり着地していたのも良かった。連載当初のアカデミーのエピソードをごっそり削った分、ナルトとサスケの持っている光と闇のキャラクターが際立っていてドラマチックだった。でも、わたしは中忍者試験あたりが好きなんですよね…ハンター×ハンターとお話が似たり寄ったりだけど…。
愛されている・人気のあるキャラクターを出せないのは致し方ないにしても、なんとか台詞だけでも再不斬を登場させたところに、サービス精神を感じました(笑)
3幕あるのですが、それぞれのクライマックスに大きな見せ場があるのが最高。特に1幕ラストの三忍の口寄せの術、からの全員の見得はとってもとっても格好良かった!ここの場面こそセンターで見たかった!3幕の本水を使った大滝の場面も、目に焼きつくほど格好良かった。

【演出】

ストーリーのさわりを義太夫に語らせるのが、とても格好良くて渋くて、それだけで世界観に浸れるのが、わくわくした。耳から入るもののうち、半分が古典的で、半分が現代的で、そのリミックス加減がたまらんね。
多少うるさく感じた主題歌やBGMも、囃子方がいい仕事をしていたので、重厚感がありました。しかし、こういう2.5次元ものは、芝居中にも激しいBGMを流していなければ間が持たないんですかね。アニメの影響なのかな?マイクありきの芝居になっちゃうから、歌舞伎を観に来たのにちょっと勿体無く感じた。
台詞も原作のものを使って、歌舞伎らしい節回しになっても、少年ジャンプ感が損なわれずに聞こえたのがストレスフリーでした。『まじで』『やばい』『バカヤロー』『ウスラトンカチ』等々の平成ことばが、歌舞伎の板の上から聞こえてきても、薄っぺらく聞こえないのは流石です。というかむしろ痛快で。リアルな言葉を使っても格好良く見えるんだからすげーな。
技の名前を叫びながらのアクションが、2.5次元ものの好きなところなんですが、ナルトもサスケも、大蛇丸も猿飛先生もイタチも、術の名前を叫んで格好つけてから動くので楽しかったです。あと、忍がわらわら出てくるとめっちゃテンション上がる(笑)
ラーメンが美味しそうだった。セリがあるのは知ってたけど、盆が回るとは思っておらず、びっくりした(笑)
ワンピース歌舞伎みたいに、『最後はみんなで歌って踊ろうぜ!』みたいなやつが無くて安心した。ああいうやつは苦手なんです。

【キャスト】

うずまきナルト坂東巳之助
お日様のようなナルトだったね!エネルギーが陽!暖色系!明るい!朗らか!
少年漫画の主人公らしさ、素直さ愚直さ、おバカさに屈託のない笑顔がぴったり。憎めないっていうか、みんなが好きになる感じ。若さだけで押し切った感じもない。九尾に乗っ取られそうになった時の目の色が、人外感はんぱなくて、ゾクゾクしました。ちょっとワクワクもした。
サスケとの親友感もとても良くて、お互い嫌いあったりぶつかり合ったりしても、根本ではお互いをすごく大切にしてるんだろうなあっていう感じがあるので、最後の大滝での決闘も、『このふたりには必要な喧嘩なんだろうな、よくわからんけど』っていう『あー、男子って意味不明でめんどくせー(笑)』みたいな爽快さがあった。
巳之助さんはナルトの父・ミナト役もされていて、これがまた超爽やかで軽やかなのにチャラくないイイ男でした。帰り道、からし母が「ナルトのお父さんは誰がやっていたの?」と筋書をめくってました(笑)


うちはサスケ中村隼人
やっぱり顔が良かった(まだ言う)あと、あのどっしりしてるのにシュッとしてる立姿っていうの?スタイル?フィジカル?が、すんごく好きなんですよ(伝われ)
もう認めますけどね、完全にハマった。
その瞬間も覚えているので書いとこう。
大滝の場面、本水を使っているのでマジで滝なんですけれど、そこでナルトの巳之助さんとサスケの隼人さんが、「らせんがん!!」とか「ちどり!!」とか叫びながら素手で殴り合うんですよ。滝には打たれるわ流されるわ、水にはダイブするわで、びっしょびしょのバシャバシャなんですよ。もちろん、そこで文字通りの水も滴る良い男の爆誕ですよ。ここのサスケが見たくて見に行ったようなもんなんですが。
そこで隼人さんが勢いよく頭を後ろに振って、髪をバサァって払ったんですよ!!!!
や ば か っ た ! ! ! ! ! !
カツラが濡れて、髪が顔に張り付くんでしょうね。しかもナルトを睨んだまま髪を払ったから、目がマジなの。その瞬間をオペラグラスで見てしまったわたしは、自分が何かに引きずり込まれたのを自覚いたしました。もう揖保乃糸以外のお素麺は食べられないです。
本水での立回りで、水を激しく跳ね上げてダイブし、更に水の中で派手に暴れて客席に涼をお届けしている姿(要は客席に水を掛けまくっている)にも、サービス精神を感じて『そんなの好きになるしかないじゃん』って思いました。
殺陣とかめっちゃ格好良かったはずなのに、その辺りで全部記憶がすっ飛んだ。
で、最後にとんでもなく萌えてしまって、桟敷席の隣に座っている母をどつきそうになってしまったのが、サクラちゃんへのデコトンですよ。歌舞伎を観に行ってこんなにときめいて、ハクハクして、萌えるとは思わなかった。右側に座っていたので、ふたりの表情を見ることは叶わなかったのですが、サスケがとても嬉しそうな顔をしていて、『お前そこ代われよ』と思いました(えっ?そっち??)サスケをそデレさせたサクラちゃんの顔を見せろよー!!歌舞伎シネマで映像化するなら、どっちも見せてくださいまじでお願いします。


綱手市川笑也
わたしはこういう、強くて弱いところもあって、身体の大きい女が好きなので綱手姫が好きです。笑也さんは背も高くて、ハイテンションな役にもクールな、落ち着いたお芝居をされているのが好印象でした。ノリで押し切っていないから説得力が半端ない。女方には、古典的な台詞と大きな着物と袂に魔法が掛かっているのかなと思っていましたが、どうやらそんなことはなかった。怒鳴っても壁を殴っても、笑也さんは女でした。
客席登場で、お近くで拝見できたのも嬉しかったー。眼差しとか横顔が、とても綺麗だったの。


大蛇丸市川笑三郎
ナルステのともち丸が密林に潜む大蛇なら、笑三郎さんの大蛇丸は砂漠にいるガラガラヘビの様な大蛇でした。でも、やっぱりねっとりしているの!ぬるぬるはしてなさそうだけれど!
ご本人が超ノリノリで悪を演じられているのも感じられて、気持ちが良かったです。あの、アニメ版にそっくりなハスキーボイスは、確かに再現率半端ない!普段は女方が多い笑三郎さんに大蛇丸を当てたキャスティングが効いてましたね。
笑三郎さんは、ナルトの母・クシナも演じていたのですが、最後まで気が付きませんでした(笑)別の方だと思ってた。しかも、渾身の出産シーンが結構衝撃的だった(しかも、そこの産婆さんの説得力半端なかった。あなた出産したことあんのかよってくらい)


春野サクラ中村梅丸
ねえほんと、ほんっっっっっっっっとうに可愛かったんだよ!!!!!!
あんなに可愛いなんて。聞いてはいたけど、それ以上に可愛かった。走ったり立回りの中でも終始『女の子』で、やっぱり古典的な言葉・袂の所作を封印されても、女方の魔法は溶けていなかった!まるっと入れたピンク色の頬紅と、梅丸さんの丸顔がはちゃめちゃに可愛くって。隼人さん目当てに観に行ったのに、途中から梅丸さんに視線が吸い込まれて行きました。だって可愛いんだもん!!ビジュアルも可愛いんだけど、台詞回しも可愛かったんだよ〜。ガサツにもなりすぎず、カマトトっぽかったりぶりっ子っぽくもなく、たまに出てくる内なるサクラちゃんも、ガチっぽくて(笑)キュートで。
髪の毛を切って弟子入り志願するところもやってくれて嬉しかった。デコトンは後ろ姿しか見えなかったのを根に持つほどに、梅丸さんのサクラちゃんは可愛かったのでした。


うちはイタチ/市瀬秀和
市瀬さんの格好いい殺陣が健在でよかったです…!!そしてやっぱりエエ声。好きな俳優さん同士の共演が見られて胸熱でした。永遠のアニキでいて欲しい。


自来也市川猿
土台がしっかりしているから、どんなに崩しても形なしにはならない。歌舞伎的な知識も経験も乏しいので、そんな人の感想だと思ってください。伝統的な手法を用いて、新しいことをやってやろう、というサービス精神をとても感じられる存在。しっかり笑いも取ってくれるんだけれど、しっかり歌舞伎も見せてくれたなあと思いました。


・うちはマダラ/市川猿之助
ワンピースを観た時に、『猿之助さんにルフィは貫禄がありすぎる。シャンクスの方がその存在感に合ってるし、しっくり来る気がする』と感じていました。ですので、マダラくらいのラスボスが本当にぴったりでした!マダラの自分を悪だと思っていないが故の恐ろしさ、猿之助さんのなんかちょっとイっちゃってる感じがすごく良かった。早着替えも仏倒れも迫力があって、『キタコレ!こういうの見たかったんだよー!!』っていう気持ちが満たされました。
わたしは原作を知っていたので、冒頭で仮面を付けたマダラが宙吊りにされているのを見て『猿之助さんだ!』と思ってたんですが、原作をご存知でなさそうな方々があんまりにも注目してない感じが面白かったです(笑)
マダラは片岡愛之助さんとの役替りだったのですが、愛之助さんのマダラも観たかった。母が「猿之助さんが出る日に行きたい」と言うので、その日程でお席を取ったのに、終演直後「やっぱり愛之助さんのマダラも見たい」とか言ってました(笑)


新橋演舞場・桟敷席の覚書】

ここからは只の日記です。
桟敷席なんてはじめての経験で、まずは何を着て行くべきか悩む母娘(笑)「右側だから花道から遠いけど、誰かに見られるかもしれないので(誰かって誰よw)綺麗めの白ブラウス」でキメた母。「古典じゃないし、逆に何が起きるかわからない。闇に紛れたくて黒ずくめ」の娘。そして「下駄箱に小汚いスニーカーがならんでたら恥ずかしいよね」と、綺麗なパンプスを履いた。警戒し過ぎ(笑)田舎者感丸出しである。実際には下駄箱は外から丸見えにならないし、ロングブーツも置けちゃうくらい広かった。桟敷席だからって、キメキメな人もおらず、結構カジュアルだった。演目のせいなのか、良い意味で雑多な雰囲気で、2.5次元ファンみたいな人、痛バッグを肩から提げてるひと、若い子も大人もいて、居心地良かったです。中日を過ぎたあたりに行ったので、「大蛇丸の再現率が〜」みたいな会話も聞こえてきて、アウェイ感もなかった。


まず、お弁当引換券をどうしたらいいかわからず、劇場の人に丁寧に案内してもらう。1幕と2幕の間に、席まで届けてくれるらしい。すげー。席の後ろに配膳棚があって、そこに1幕の最後あたりに届けてくれるんだけど、これが意外にガタゴトいう。しかも割といい場面で。すごく気を付けて届けてくれてるのが感じられるのに、ガタゴトいってて、ちょっと可愛くて笑った。
お弁当というか、公演の特別御前はとても豪勢で、幕間休憩中に食べきるのはかなりハードでした。ちょっとしたフードファイトだった…(笑)


桟敷席には座椅子とお座布団が用意されているのだけれど、このお座布団がまた愛おしくなるくらいに薄っぺらいので、坐骨と尾てい骨がピンチになる。痩せてる人は痛いだろうな。
意外に舞台が見切れず、見易いお席でした。右側は花道の芝居も見易い。
テーブルがあるので、お茶を飲み飲み観劇できるのと(お茶セットが用意してある)芝居見物感があるのが良かったです。




次は歌舞伎座で、古典を観に行きたいと思います。歌舞伎の時間が一定に流れていないところ、時間のながれの緩急がとても好きです。あの緩急の渦に巻き込まれながらワクワクしてると、なんともいえない興奮が湧いてくる。
少年漫画と歌舞伎の相性の良さは十分わかったので、次は少女漫画に挑戦して欲しい。歌舞伎の『ベルサイユのばら』とか『ポーの一族』とか、洋物を歌舞伎の所作や演出でやっても、面白いと思うんだけどなー。松竹さん、やってみませんか?だめ??