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歌舞伎座四月大歌舞伎『桜姫東文章』上の巻

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筋書にも相関図がありました。

【期待】

いろんな書籍を読んだりネットの海を泳いだりしながら、観劇の日を指折り楽しみにしていました。Twitterで見かけたあらすじ紹介漫画に興味を持ち「怒濤の展開過ぎる。設定盛りすぎ。江戸時代の腐女子はこれを見て寿命を伸ばしていたに違いない」等々。そしていつか観てみたい演目となりました。
昨年の春、明治座中村屋の『桜姫』を観る予定でチケットを取っていたので、コロナの影響で初日が延び延びになり、ついに幕が上がることがなかったのがとても悔しかったです。『中村屋ファミリー』でお稽古の様子が流れていましたが、仁左様の色気がはんぱなくって絶句しました。わたしが観劇した日、ロビーで勘九郎さんをお見かけしたので「是非、リベンジしてください」と念を送っておきました(ただの変な人)
歌舞伎座に通うようになって、「いつかは観てみたい」と思っていた『桜姫』です。しかも、片岡仁左衛門様と坂東玉三郎様の、歌舞伎界のトップコンビによる再演!前回の上演は昭和60年って、わたしが生まれる前(ぎりぎり昭和生まれです)じゃないの!未だにざたまを知らずに生きてきたわたしですが、シネマ歌舞伎で『牡丹灯籠』の息ぴったりな夫婦役は観たことがあります。そこからの、ほとんど憧れに近い気持ち。そういう憧れの演目ってありませんか?

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このまんまでした・・・

【所感】

すっっっっっっっごいえっちだった。
聞いてはいたけれど、すっっっっっっっごいえっちだった。
人間国宝×2がすっっっっっっごいえっちって、日本やばいですね。最高ですね。流石、江戸の大衆文化。再演されはじめたのが昭和30年代っていうのも、納得で。えっちなんですけれど、俗っぽくないんですよ。
筋書で歌六さんが仰っていましたが、『江戸の歌舞伎のエログロナンセンスの匂い』がする演目でした。わたし、歌舞伎のこういうところ大好き~~。元々、演劇文化に興味を持ったのが、寺山修司のアングラ劇からだったので、エログロナンセンスは、大変好みのエッセンスです。今回の上の巻では、グロさよりエロさの方が強いですが(下の巻も楽しみ!6月までわくわくして待てるっているのも乙ですよね)その凄艶さに頭がおかしくなりそうでした。

『発端』
稚児・白菊丸の玉さま、長谷寺の僧侶・清玄の仁左様が寄り添って花道を歩いてくるのですが、白菊丸のお膝をさわさわ撫でる清玄に、開演3分でぷぎゃりました。容赦ねえ。そして、白菊丸は男の子だから、片膝ついたときに、膝をガッと開くんですよね。それに信じられないくらいに萌えた。のっけから、こんなんで耐えられるんだろうかと心配になりました。
セットも美しかったです。白鷺が飛び去るのも暗示的で良いよね。
どんだけ『そういう眼で観てんだ』って突っ込まれそうですけど、そういう眼でしか観られません!己の欲望に忠実なのがオタクだからね。

『新清水の場』
ちょんぱ。清水寺のセットが美しく、迫力がありました。知っているお寺だから、書き割りをじっくり観るのも楽しかった。
そして、お姫様の玉さま。本当に17歳にしか見えない。左手が開くときの指、一本一本が美しかった。
桜姫の弟・松若の千之助さんは、姿も声も美しく、美貌の桜姫の弟という説得力があった。眼福でした。
この場面はまぶしいほどの美。思わず目を細めてうっとりしてしまうので、情報量の多い台詞を聞き逃さないようにするのが大変でした。
悪五郎の鴈治郎さんは、っていうか悪五郎って凄い名前ですね南北先生!?別に最も悪い役でもないのに悪五郎。鴈治郎さんの悪五郎はちょっとコミカルで、笑い声も聞かれました。わたしにはラブリーに見えました。かわいい小悪党枠。
清玄からの早変わりで登場する仁左様の権助。着流し姿の仁左様があまりにも格好良くって、焦ってオペラグラスを膝に落としましたよ。ただしゃがむ男があんなに格好良いってどういうことなんだ。小咄は仁左様があまりにも色男なので、全く頭に入ってこず。誰か何話してたか教えて(笑)そして息をするようにすぐ人を殺す。江戸の歌舞伎はすぐに殺すんだから~~~。『女殺油地獄』でも思ったけどさ、人殺しが色っぽいってどういうことなんだ。

『桜谷庵の場』
結構ツボったのが、桜姫の「その手紙は捨ててちょうだい」とお姫様言葉で言うところ。「~~してたも」みたいな。本当にかわいくって、あまりにも姫姫しくって、ツボった。権助に自分の腕に入れた『釣鐘に桜』の刺青をみせるところも、姫姫しくって可愛いのに、自分を犯した上に孕ませた男に惚れちゃって、お揃いの刺青を入れちゃうクレイジーさのギャップがツボでした。そして「たった一回で!?」と驚く権助よ。お前なら一発だ。
桜姫と権助の濡れ場はなまめかしいのに上品であった。熟練したコンビが魅せる場面だった。背中合わせになったふたりの艶めいた姿。ここからの歌舞伎座の客席は、本当に桃色のため息で溢れていた。
権助の「久しぶりだなあ」も、すっごくいやらしいのに下品でない。男の足があんなにエロいことありますか!?
自分で帯を解く桜姫が驚くほど大胆で、すっごいえろかった。宝塚のラブシーンでも思うんだけど、性的に倒錯した世界観が表現するエロって、どうしてこんなにエロいんだろう。『濡れ場』っていう呼び名からしてエロ。ほんものよりもほんものらしくて、なまめかしいのはどうしてなんだろう。この際どさにオペラは曇るし生唾は飲み込んでしまうし、幕間に友だちに「えっちでした」とLINEを送らなければ正気を保てなくなるほど凄まじかったです・・・。しかもお寺ですからね、場所。
恍惚に燃えるふたりに拍手しながら「ここで拍手入るんだw」と思ったのは内緒です。わたしも御簾の中を覗きたかったですね!みんな覗きたかったと思うんですけれど。このお話に出てくる人たちは己の情欲に忠実で良いな。特にお坊さんが。一体、局とどんなキスしたんだよって思った。そんなんだから、局は桜姫の妊娠にも刺青にも気が付かないんだぞ(若しくは、気付いていて隠し通したか)
再度、早変わりで登場する清玄。高潔な僧侶(後に狂人)と極悪人の一人二役って最高だよね。南北先生は、一体どんな役者に出会ってこんな本を書こうと思ったんだか。
桜姫の着物の乱れ方が絶妙でとても良かった。

『稲瀬川の場』
一幕の興奮を引きずったままだったので、なかなかお話が頭に入ってこなかった。ほとんどの人がそうだと思うぞ。
いきなり結婚を迫ってくる清玄は、桜姫にとっては頭のおかしなお坊さんでしかないし、ここの清玄の謎の迫力は何なんだ。白菊丸が可哀想だ。

『三囲の場』
絵のような場面だった。絵というか、漫画のようだった。ひとつずつの絵が物語りを進行させるような。どこを切り取っても美しい一枚の絵のようであった。
お人形の赤子が、なかなか良い芝居をする。良いところでかなり泣く。


【凄艶】

己を鼓舞して、すばらしい演劇体験を、なんとかして文章化しようとする試みがこのブログではありますが、「やばい」「すごい」の連発で語彙力がやばい。ですので、語彙力を鍛えようと辞典を買いました。新しく覚えた熟語が『凄艶』です。
片岡仁左衛門様と坂東玉三郎様のコンビは、まさに凄艶でありました。こんなに美しい人たちを知らずに、わたしは今までのうのうと生きていたのか。こんなに美しい人たちが、この世にいるのか。しかもお二人は70代。信じられない。このお芝居は、コロナ禍でなければ打たれなかっただろうと思います。そんな、貴重な舞台を観ることが出来た。しあわせなことです。

6月の下の巻も、楽しみに待っています。


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