すーぱーからしちゃんねる

からしがみたものをまとめたものです。

宙組東京宝塚劇場公演『NEVER SAY GOODBYE』

【期待】

タカハナ時代の宝塚を知らないので、初演を知りません。すごく長期で人気のあったトップコンビのサヨナラ公演で、ゆりかちゃん(真風涼帆)の初舞台公演だということくらいしか知りません。スカステの放送を観たことはありますが、最後まで寝落ちずに観られたことがない…といった印象の作品です。ワイルドホーン作曲の楽曲は、イベントなどで歌い継がれているので、耳馴染みはありました。
本当は一回くらいムラで見たかったのですが、なかなか初日が開かず、タイミングを逃してしまいました。まかかののラブストーリーでの相性の良さと、宙組のコーラスをお目当てに遠征したいと思っていたのだけど。東京での観劇も、珍しく1回きりです。チケットに恵まれませんでした。でも、それで良かったです。
戦争のニュースが日常になっている今、そんなに遠い昔でもないスペイン内戦を扱った作品に、どんな感想を抱くのだろうと思いながら見ました。

【全体像】

なるほど、ネバセイってこういう話だったのか!一度も最後まで観たことがなかったので、オリーブの木の伏線が回収できずにいたので、そういうことだったのね、と合点がいきました。そんなレベルの感想で申し訳ない。
物語には二つの芯があって、ひとつはジョルジュとキャサリンのラブ、もうひとつはスペイン内戦だと思います。前者は芯がしっかりしているのですが、後者がわたしにはしっくりきませんでした。同じような構図の物語に『誰がために鐘は鳴る』があると思うんですけれど、ネバセイにはスペイン内戦を扱うほどのメッセージ性を感じられなかったのが残念でした。『ロバート・キャパ』もスペイン内戦を扱っていますが、戦争に反対し、平和を願う強いメッセージが語られています。「戦争なんてくだらねえ!」それだけで、シンプルなメッセージがひとつあるだけでいいのです。今だからこそ上演することに意味がある、というのはよくわかります。これを愉しむことが出来ないのは、わたしの感性の問題です。メッセージよりも、ラブストーリーの方を強く受け取ってしまったんだと思います。この作品を、どういう気持ちで見れば良いのかわからなくなりました。フィナーレは楽しかったよ。それでも、1回でよかったです。
今の気分では、戦争をエンタメとして消費する気になれなかったのもある。少年が銃を持つ場面は本当に受け付けませんでした。歌詞もしんどかった。顔が引き攣ったよ。イケコ、正気か?
その上、毎日ニュースで見てるじゃないですか、本当の戦争を。なので、内戦の場面は、本当に怖くなってしまって、涙が出ました。
ラブストーリーはとても良かった。素敵だった。お互いの気持ちが逸れちゃいそうになる歌がすごく良かった。ジョルジュが「これは男のエゴなのか」って歌うところ。
宙組のコーラスも素晴らしかった。フィナーレも最高だった。宙を舞うマントに魅了された。デュエットダンスも本当に素敵だった。
ワイルドホーンの楽曲が偉大だなと思うのは、観劇の翌日にずっとメロディが頭の中で鳴り響いていたからなんですよね。それだけ、体に馴染みやすい。思い出にすっと馴染んで一緒にいてくれる感じ。そうでした、これはサヨナラ公演なのでした。

【キャスト】

主なキャストと、気になる生徒について。物語にはピンと来なくても、宙組のことは大好きなんです。

ジョルジュ・マルロー/真風涼帆
何せ、1回しか見れないもんで、あっちこっちとオペラグラスを動かしまくってしまい、ゆりかちゃんの格好いいところの数パーセントも見れていないと思う。宙組は見るべき人がいっぱいいるんじゃ。
ジョルジュが1番格好よく見えたのが、キャサリンと別れるところかな。フィルムを渡すところ。あそこの愛の深さと覚悟の重さと、キャサリンへの信頼がよく表れていて、ジョルジュがスペインに来て根無草じゃなくなったんだな、とわかるところが良い。あと、やっぱり主題歌が良い。沁みる。
フィナーレのマントをぐるぐる回すところ、銀橋に1人立って、せめてくるところは、あまりにも格好良いんで、叫びそうになった。わたしは雌牛なのか。デュエットダンスも、たっぷりしていて素敵だった。ゆりかちゃんのこんなデュエットダンスが見たかった〜。リフト至上主義ではありませんが、まかかのでリフトが見れたのも嬉しかったです。

キャサリン・マクレガー/潤花
しっかりとした思想のあるクレバーな女性に見えて、素敵でした。あまりにも線が細いと、キャンキャンして見えちゃいそうな役だけど、潤花ちゃんのキャサリンはきちんと頭で考えて物を言う女だった。潤花ちゃんの地に足がついた女役像が大好きです。歌も良かった。「愛の真実」は特に良かった。劇場全体の色を、ゆっくり染め替えてゆくような世界観があった。
デュエットダンスの最後のポーズがめちゃくちゃすごい。あんな命懸けの振りを、満面の笑顔で出来ちゃう潤花ちゃん本当にすごい。ゆりかさんへの信頼感マックスよね。コンビの信頼関係が見えるデュエットダンスが好きです。

ヴィセント・ロメロ/芹香斗亜
格好いい〜〜!!銀橋のソロ、めちゃくちゃ格好良い〜!!歌唱指導も素敵だったけれど、お芝居の銀橋ソロの方が好きです。キキちゃんはますますお歌に深みが増したよね。その上、マタドールのお衣装がめちゃくちゃ似合う。マタドールたちの芝居も熱くて、好きでした。

アギラール/桜木みなと
鎮静剤をキャサリンに使ってモノにしてやると言い出した時は「出た〜〜クズ野郎ずんちゃんんん」と思ってニタニタした。オーシャンズ11のベネディクトの時に比べると、存在のあり方、説得力が増し増しになったと思います。お芝居に迷いがなかった。

ラ・パッショナリア/留衣蒔世
あーちゃん強い。声の存在感が圧倒的。高い音を出しても全然声が細くならないの!わたしが見た日は、りっつと並んで歌う場面で、マイクトラブルでマイクが入らず、ワンフレーズ生歌というアクシデントがありました。それでも、堂々とした、さすがの歌唱でしたよ。素晴らしかった。

ビル・グラント/瑠風輝
なんか気がつくと視界に飛び込んでくるもえこちゃん。初演で贔屓(悠未ひろさん)がやっていたお役だから、自然と目で追ってしまうんだわ。フィナーレのもえこちゃんを見ていて思ったんだけど、彼女の粋な抜け感って、和希そらちゃんから引き継いだものじゃないかね。そのまま芸に磨きをかけてほしい。

エレン・パーカー/天彩峰里
すごくすごく上手かった!「私よりあの女のどこがいいの」と絶唱できるじゅっちゃんの強さと美しさ。エレンがただのバカに見えないのもすごく良かった。エレンはひとつの価値観なのであって、決して愚かなのではないのよね。

瀬戸花まり、せとぅーは今作で卒業。占い師の歌が印象的でした。開演中のお願いアナウンスも、これで聞き納めかーと、思いながら耳に染み込ませました。

春瀬央季、かなこ様も今作で卒業。あんなに金髪が似合って美しい男役さんはなかなかいません。餞別のお役だったのかな。

若翔りつ、りっつ市長。お友達と「当確!当確!」と大騒ぎするほど、市長としての説得力がものすごいりっつ市長。歌えるし芝居もできる人だしで、信頼していましたが、その信頼度も鰻登りで、再選確実です!よ!大統領!

真名瀬みら、まなちゃんは、1番目を見張る成長っぷりでした。青のマタドールの人は、真名瀬みらです!芝居も熱いし、線が逞しくなったし、声も太くなっていて、男役としての成長期真っ只中です!って感じでした。贔屓目なしにね。

水音志保、しほちゃんはキキちゃんの恋人役。美しいし、ショー場面では光るし目を引く。でも、お芝居は少し物足りなかった。キャラクターが見えてこない。ヴィセントの恋人という枠に収められている感じがしたのは、イケコの指導なのでしょうか。

亜音有星、あのんくんはオペラを覗くたびにそこにいるので、自分でもびっくりした(笑)あれだけ目立つ役をしっかり務めていて、期待に応えられるスターになってて凄いなあと思いました。

宙組が好きだよ】

いまいちピントが合わず、大絶賛することができなかったネバセイですが、わたしは今日も宙組のことが大好きです。新人公演もご縁あって観に行ける予定なので、楽しみにしています。