すーぱーからしちゃんねる

からしがみたものをまとめたものです。

花組神奈川芸術劇場『銀ちゃんの恋』

【期待】

宙組が好きなので、映像で何度も見ていますが、実際に観に行くのは今回が初めてです。『蒲田行進曲』は観たことないです。『銀恋』はわりと好きな作品で、お芝居が得意な生徒での再演を望んでいた作品です。わたしはこの作品を『暴力と依存の群像劇』だと思っていて、昭和レトロのファンタジーだと割り切れているから、楽しく見ることが出来るのだと思います。でも、石田昌也のセンスは嫌いです。楽曲の趣味は好きなんだけどな・・・。

銀ちゃんは芝居の人がやるっていうイメージだったので、マイティー(水美舞斗)の主演作になるのは意外でした。マイティーに芝居のイメージがなくて、どちらかというとダンスの人のイメージだったから。銀ちゃんは顔で踊るし(笑)ポスターのトンデモ衣装も着こなして見える(GUCCIっぽいと思った)し、どんな銀ちゃんを創ってくるんだろうという期待がありました。

小夏役の星空美咲ちゃんは、あまりよく知りませんでした。『ちゃぴに似てる』って言われていた子ですよね。最近スカイステージも見られていないので、勉強不足ですみません。105期生なんですね。つい最近初舞台で「ジャンプ!」ってやってたのにもうヒロインですか!娘役さんは抜擢と成長がはやいはやい。

キャストが発表される前から楽しみにしていた、飛龍つかさくんのヤス!絶対、上手いに決まってる。『銀恋』の芝居の肝はヤスの存在だと思っているので、キャストが発表になった時は「観たい観たい」と大騒ぎしてしまった。

帆純まひろくんの橘も「あんなにいい人オーラ全開に出してるホッティーが、どんな橘を見せてくれるんだろう」と楽しみだったし、航琉ひびきくんの「専務は普通の専務なのか、様子のおかしい専務なのか」とか、花組に帰ってきたあおいちゃん(美風舞良)の中山ちゃんはどれだけ暴れるのか、とか。

映像で何度も観た作品なだけに、期待値は高かったと思います。

【所感】

ありがたいことに、頂いたご縁で千秋楽を観ることが出来ました。KAATの2階席も、とても見やすかった。そして、音響がイイ!
「石田作品だから(という見方しか出来なくて申し訳ないんだけど、どうしても身構えてしまいます)モヤモヤしたり、台詞の端々に腹を立てるに違いない」と思っていましたが、そんなに気にならなかったです。昭和ってこんなに遠い時代になってしまったんだなあと思った。30年以上も前のことなんだもんね。演者のほとんどが平成生まれだから、っていうのもあるかも知れない。みんな自分の知らない時代をやっているわけで、良い意味でリアリティがない。これはダメだなと思うところはあったんだけど(お祭りの場面で小夏にやたらとベタベタするおっさん達とか)もっと強烈に嫌悪感を抱くかと思ったんだけど、そこまでではなかった。
実感したのはやはり、映像で観るのと生のお芝居で観るのとでは、感じ方も見えるものも全然違う。ということです。舞台からビシバシと飛んでくるものが、いっぱいあったんですよ。

【キャスト】

倉丘銀四郎/水美舞斗
よっ!三代目!銀ちゃんのとんでもコーデを着こなしてしまうマイティー。マイティーの持ち味で銀ちゃんの破天荒さって、想像が付かなかったのです。銀ちゃんの魅力って、ジャイアン的な、バイキンマン的なチャーミングさだと思っていて、それに対してマイティーは食パンマン的な端正さが魅力だと思っていたので。でも、「これはマイティーの銀ちゃんだな」と納得させられました。小夏にプロポーズする銀ちゃんの格好悪い愛おしさが、なんとも新鮮に感じたんです。後半に掛けて輝いていたと思う。前半より、後半の方が銀ちゃんの人間くささが出るからかな。
ダンスの人だと思い込んでいたマイティーだけど、これからは花組の2番手男役として魅力のある役でいろんなお芝居を見せて欲しいなと思いました。

小夏/星空美
彼女の個性はどこにあるのかな、と探りながら観ていました。花組は2回新人公演が飛んでしまったので、みさきちゃんの持ち味を見出す機会が無かったんですよね。だから、今回はどんな生徒さんなのかを小夏で知ることになりました。
小夏、難しいよね。わたしにはどうにも、野々すみ花っぽさを感じてしまって、みさきちゃんの個性がよく見えませんでした。お芝居のスタイルは好きなんだけどなあ。時々、大人っぽさが見えるのは好きでした。でも、小夏は一貫して年増の女優であってほしいんですよね。 

ヤス/飛龍つかさ
期待値は高かったけれど、それを何倍も上回ってきてくれたよ。間もテンポも歌もうまい。特に、小夏へのDV場面は、上手いが故にヒリヒリしたよ。せつなくて、くるしくて、かわいそうで、わたしはあの場にいるくまちゃんになってヤスを慰めてやりたかった。ヤスがいいやつであればあるほど、せつないんだよね。
女性経験が乏しいヤスのこと、ちょっと気持ち悪い系の男なのかなって思ってたけど、つかさくんのヤスは全然そんなこと無かった。むしろ、めっちゃいい奴を極めてるから、そういう事になっちゃってるんだと思ったよ。
最後、階段落ちの前、心が揺れているヤスの姿も痛々しくってヒリヒリした。つかさくんのヤスが見られて良かったです。良いお芝居だった。

橘/帆純まひろ
ホッティーも橘は、銀ちゃんよりちょっとお兄さんって感じに見えました。余裕や落ち着きを感じたんですよね。その余裕があっての、ウエメセって感じが印象的でした。
終盤、スポンサーのことを殴っちゃう橘が好きなんですけど、ホッティーも良い怒りっぷりで、見応えがありました。あそこで橘がキレてくれるから、こちらの気持ちもちょっとだけ慰められるのよね。
劇中のショー場面のギラギラオラオラした感じも好きです。格好良い!
好き!

ヤスの母/京三紗
ヤスのお母さんと小夏のお芝居が好きです。みさきちゃんの小夏をぐいぐい引っ張って芝居を引き締めているのを感じて、流石だなあと思いました。

監督/悠真倫
監督って結構シリアスなお芝居を担当してるよね。「昔のスターさんには命掛けられる子分のひとりやふたり~」と発破をかけるところが好きです。監督もひとりの映画馬鹿なんだよね。

秘書/美風舞良
スポンサーを接待する中山ちゃんが大好きなんですけど、あおいちゃんの中山ちゃんも最高だった。ちょっと嫌味っぽいのが良いんですよね。
千秋楽だったので、あおいちゃんの副組長のご挨拶も聞けました。これからの花組も、ぐいぐい引っ張ってくれるのを期待しています~~!

専務/航琉ひびき
幕開きからあのハイテンションは素晴らしい(笑)でも、わりと普通の専務だったな。映画馬鹿の歌、好きだったんだけどな~~。しかし、どうしてWSSなの?ウルトラマンよりはまともだと思うけど(笑)生徒に罪はありません。
スポンサーを殴っちゃう専務が大好きです。

ジミー/侑輝大弥
フェミニンな男の子だけど、ジミーには目指す映画俳優像があって、それが銀ちゃんのような男で、芯から憧れているから子分やってて、それが楽しくて仕方ない!っていうジミーだったな。あと、わたしはだいやくんの顔が好きだな。これからも活躍してほしいな。楽しみ!

助監督/希波らいと
あまりにもスタイルがいい!ジーパンの脚が長すぎる!ので、どうしても目で追ってしまった。助監督をさせておくのが勿体ないくらいよ。助監督をさせるには王子様過ぎない?(褒めてます)って思った。

朋子/都姫ここ
ことかちゃんはお顔が好きで認識していたのですが、朋子さんのトンデモファッションもぶっ飛びぶりっ子もかわいかった~。ちゃらんぽらんなキャラクターだけど、地に足ついた感じがあるのは、危なげなところがなかったからかな。安定感がありました。お歌も聴いてみたかったな~。

【カーテンコール】

千秋楽は、とてもとても暖かいカテコで、この懐かしい雰囲気に心が暖かくなって泣いてしまいました。お茶会みたいな雰囲気だったんです。客席と舞台が愛で繋がっている、みたいな。ここのところ、気持ちが殺伐とすることが多かったから、マイティーはじめ、花組の皆様に癒やして頂きました。マイティーが何度も「みなさまの健康を祈っています」「みなさまが苦しむことのないように」と言っていたのが印象的でした。やさしい人が、健康でありますように。苦しい思いをすることがありませんように。

いまや観劇も、安心安全とは言い難く、リスクが伴うレジャーとなってしまいましたが、引き続き感染予防につとめて、夢の世界を楽しみたいと思います。