すーぱーからしちゃんねる

からしがみたものをまとめたものです。

歌舞伎座五月大歌舞伎『三人吉三巴白浪』『土蜘』

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【期待】

歌舞伎を見るようになってまだ日が浅いのですが、いつか観に行きたいのが『浅草新春歌舞伎』です。若手の俳優さん中心に出演される、宝塚でいうところの(なんでも混ぜたがる)新人公演やバウホール公演みたいなものなんじゃないかと思っています。今年のお正月は、コロナで中止になってしまったんですよね。今回の『三人吉三』は、その『浅草新春歌舞伎』で活躍しているメンバーが抜擢されています。『NARUTO』や『風の谷のナウシカ』で歌舞伎に興味を持ったわたしみたいなのが、大喜びする面子です。その上、シネマ歌舞伎で『三人吉三』を見て、歌舞伎の世話物の面白さに目覚めた身でもあります。見ないわけにいかない。『土蜘蛛』は映像で見たことがありますし、昨年の顔見世での『蜘蛛の絲宿直噺』を観たので、ストーリーもなんとなく知っています。
絶対に観たい公演だから、早めに観ておこ!ということで、初日にチケットを取りました。が、緊急事態宣言の発令により公演中止。焦ってチケットを取り直して、千秋楽近くの観劇が叶いました。

三人吉三巴白浪】

まず三人の吉三の配役発表があって、しれっと莟玉さんのおとせが発表になりましたね。観る前から似合ってるって確信していましたけれども、似合ってた。あんなにかわいい娘に夜鷹なんてさせちゃだめだ。白粉を塗ったお姫様なまるるも好きですが、素朴な女の子のまるるも好きです。秒でお嬢に突き落とされててウケた。川の中に一瞬で消えてびっくりした。この先のおたかの運命はとても可哀想なんだけど、その先まで見てみたい。

尾上右近さんのお嬢吉三は、とにかくエッジの効いた澄んだ声が美しくて、あの有名な「月も朧に白魚の・・・」の台詞が格好良くキマっていました。仕事が上手くいって調子に乗ったヤンキーが、粋ってる感じがあって、若々しくって良い。男が出る場面では笑いも。茶目っ気がありました。この茶目っ気というか、不二子ちゃん的なキャラクターが、この先のストーリーで良い味出してくると思うので、この先のお話も見たい。

籠が気になりすぎて、出てくる前からオペラを構えていた中村隼人さんのお坊。出てきた瞬間の台詞の渋み深みが今までとは格段に良くなっていてたまげました。わたしは隼人さんの顔ファンを堂々と名乗るくらいに顔が好きなんですけど、このお役で声も好きになった!隼人さんはいつも、台詞の出だしが裏返ったり、がなってしまうのがちょっと残念だなあと思っていたのですが、今回は本当に良かった。仁左衛門様にお稽古付けてもらって、努力されたのでしょう。なんか新人公演を見ている時のような、うれしい気持ちでした。お嬢にいきなり「金出せや」的なことを言ってくるお坊もなかなかぶっ飛んでますよね。血盃を交わすために自分の腕を切る時の前腕と節目がめっちゃ格好良かった。自分にさらしを巻く時の全部が格好良かった。でも、お嬢と和尚に仲間はずれにされて(違)自分で手当てするしかないお坊が、かわいそうでかわいかった。悪人とはいえ、おぼっちゃんらしさが滲んでいるのがいいなあ。これからの隼人お坊も見たいし、右近お嬢とのラブも見たいので、この先のお話もやって欲しい。

巳之助さんの和尚は、思ってた以上に兄貴だったね。絶対に似合うと思っていたけれど、本当にお似合いだったね。ちゃっかりした悪党って感じも良かった。しかし、あまりにも短すぎるんだわ。この先のお話を知っているからこそ、この先を見たくなる。凄絶な場面を、みっくんがどんなお芝居で魅せてくれるだろうって期待してしまう。なかなか通しでやるのは難しいと思うのだけど、なんとかならないのかなあ。声を上げていると、なんとかなるかもしれないので言います。続きが!見たいよ!!

【土蜘】

松緑さんは叡山の僧の段階で、タダ者じゃない感があって圧倒的だった。土蜘では、全く瞬きをしないから、いつまでしないのかな?とずっとオペラグラスで見張ってたんだけど、1回しかしてなかった!すごい!あんなにずっと目を見開いてたら、涙出てきちゃうよ・・・。いやいや、凄い目力。背後霊とか一発でやっつけてくれそう。

とにかく猿之助さんには華がある。立っているだけで華があるのだ。頼光は動きの多い役ではなかったけれど、少しの動きで空気が動く。目が吸い込まれてゆく。来月の日蓮もチケットを取ったので楽しみです。

久しぶりに見た新悟さんは、やっぱりスラリと背が高くて、美しいですね。しかも、胡蝶には踊りがしっかりあって、見応えがありました。

寺嶋眞秀くんの太刀持、鮮やかで格好良かったです。賢そうで、隙がない小姓さんだった。怪しいお坊さんの正体に気が付いたのは、子どもならではの勘の良さからだったのかな。長袴捌きはとても鮮やかでした。でもなんか、自分の芝居ではないところでは、そわそわしているなあ、お疲れなのかなあと思っていたら、カツラが痛かったんですね(寺島しのぶさんのブログより)子どもが痛みを我慢して舞台に立っているのを見るなんて、心が痛くて複雑です。ただ子役かわいさに、彼らの人生を消費しないように気をつけたいです。

花道にずらりと並んだ四天王、格好良かったですね。板東亀蔵さんの保昌も、衣装が大きくて格好良かった。四天王が揃って刀を抜く場面も格好良かった。出演者の人数が徐々に増えてきてうれしいな。中村福之助くんが、背も高くシャープなお顔立ちが格好良いのでずっと見てましたね。声も格好良いよね。

蜘蛛が出てくるお話で楽しみなのは、後見さんの綿あめ職人っぷりです。蜘蛛が放つ、半紙を細く千切った蜘蛛の糸を模したものを、鮮やかな手さばきで、ぐるぐるとまとめてお片付けする様が、綿あめを作っているように見えるのです。今回も堪能しました。綿あめ職人体験教室があったら、是非参加してみたい。蜘蛛の糸が刀に綺麗に巻き付くようにしているのか、綺麗に見えるようにしているのか、役者さんがひょいっとスナップさせるのも好きです。

【まわし者】

三人吉三巴白浪』と『土蜘』は、NHKで放送の予定があるようです。BSでは、中村隼人さん主演の『大富豪同心2』の放送もはじまるよ~~。たのしみ!!