すーぱーからしちゃんねる

からしがみたものをまとめたものです。

月組東京宝塚劇場『WELCOME TO TAKARAZUKA』『ピガール狂騒曲』

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玉さまと珠さま(だいぶピンボケ)

【期待】

10月。Twitterのタイムラインから流れてくる楽しそうな、ウキウキした雰囲気の言葉たちをたくさん目にしていた。
「めちゃくちゃウェルカムしてくれるらしい」「お芝居のレポが多くて、とっても楽しそう!」と、月担さんたちの盛り上がりを肌で感じていました。106期生の初舞台口上とロケットもあり、大劇場に観に行きたかったのですが、激務に忙殺されており、感染症への懸念もあり、見送らざるを得ませんでした。
さて、わたしは初観劇が和物レビューだったのもあり(宝塚花の踊り絵巻ー秋の踊りー)もともと日本物のレビューが好きです。今回のレビューへの期待も高く、なにより『監修・坂東玉三郎』に胸が高鳴りました。歌舞伎の世界に少し触れ、玉さまの美意識をなんとなく捉え始めていた頃、心の中に浮いて出る「そんなに期待しちゃって。植爺(植田神爾)演出だよ?」というネガティヴな意見に「でも、玉さまの監修だし、トンチキなことにはならないはず!」と反論していました。松本悠里先生の退団公演となるのも「観ておかなければ!」と、想いを熱くさせる一因でした。
そして月組の観劇が、結構久しぶりだったんですよ。最後に観たのが『カンパニー/BADDY』で2018年だったので、なんと2年ぶり!?あなおそろしや。なんと、さくらちゃん(美園さくら)がトップになってからの月組を知らなかったのである。珠城りょうと美園さくらのコンビを観るのも楽しみでした。
お芝居は、シェイクスピアの『十二夜』を知らないので、真っ白な状態で挑みました。ポスターが、とってもおしゃれだよね。こういうところから、世界観を盛り上げてくれるのっていいよね。


【WELCOME TO TAKARAZUKA】

とてもシンプルに纏まっていて、わかりやすくて、良かったです。きっと、オリンピックの季節に、インバウンド向けに構成された作品だったのでしょう。めっちゃWelcomeされる。
主題歌『それが宝塚』の華やかさと、シンプルな美しさが、この殺伐とした時代に生きる心身に刺さる。歌詞が泣けるほどに美しい。このセンスは、戦後生まれにはなかなか持てるものではないよ。夢や希望を命がけで渇望した時代を生きたからこそ書ける詩だと思う。式典やタカスペで、ことあるごとに歌ってほしい。チョンパの瞬間から心奪われ、主題歌に心つかまれ、月組にめっちゃWelcomeされた。
2年ぶりの珠城さんは、本当に大きくなっていた。銀橋をするすると歩く姿はスマートで雅。扇子で口元を隠し、夢を歌う姿は上品で、その視線の温もりに、円熟されたトップスターの姿で魅せてくれた。劇場の隅から隅まで、ひとりひとりを視線で触れ、空間を満たしてゆく様が神々しかった。
トップになってから、はじめて観るさくらちゃんは、とっても元気なスマイルでハキハキと踊るので、こっちまで笑顔になってしまった。現代的な女性っぽい踊りを感じられて良かった。芯がある。
れいこちゃん(月城かなと)の『越天楽』は、疫病退散の祈りの舞であって、神聖な気持ちになる場面。れいこちゃんの美しさも相まって、合掌したくなるほどの美しさ。美しい人が祈ったり舞ったりすることで、世の中の災いを鎮められるというのは、あながち間違ってはいないと思う。見るものの心が清らかになる。舞台写真が欲しいんだけど、いつも売り切れなんですよね~。
『雪の巻』、ミエコ先生(松本悠里)の場面。白雪さち花ちゃんのカゲソロの中、真っ赤な大振り袖のミエコ先生が、THE娘役!であった。かわいらしいのだけど、大人っぽいところもあって、真っ赤な大振り袖の女が待ち続ける時間を想像したくなる。ただ通り過ぎてゆくだけの千海華蘭、春海ゆう、蘭尚樹にも、キャラクターがあって、それぞれのエピソードを想像したくなる。わかりやすい楽曲選択もよかった。ヴィヴァルディの「冬」。
『月の巻』、光と影のコントラストが美しい。坂東玉三郎の美意識を感じられる。この公演を見る前に、歌舞伎座で『鷺娘』を観たのですが、氏の美意識というのは、光と影にあるんだなあと感じていた。どちらかといえば、影の中の静寂に繊細な美があるような。一糸乱れぬ群舞に、ぞぞぞ、と鳥肌を立てながら、「月光」のボレロの渦に身を埋めてゆく感覚。衣装が黒地なのにキラキラしていて、宝塚っぽくて好きです。
『花の巻』、バレエの曲で日舞を踊るって面白いなあ。チャイコフスキーの「花のワルツ」。おだちん(風間柚乃)はやっぱりすごい。何でも出来てすごい。お芝居でもすごいな(笑)って思ったんだけど、この華は一体何なんだ。遺伝子からスターってこういうことなのか。引き抜きがあったり、華やかな舞台転換があったりと、外連味があってよい。
フィナーレのミエコ先生の踊りに、泣けてしまった。『我が心 宝塚』と名付けられた場面にも泣けるし、なにより、今までの宝塚人生を語るような踊りに泣けてしまった。ムラでは階段降りやご挨拶がなかったようだけど、ミエコ先生はこの場面で、最後の挨拶をしているのだなあと思った。


【ピガール狂騒曲】

笑えて楽しくて、面白いお話だったんだけど、風呂敷のたたみ方が雑だなあと思った。脚本的には「今まで良い感じだったのに、どうしてそこで手を抜いちゃったんだ!?」って感じ。多くの人が語っているように、わたしもヴィクトールの身体にベタベタ触るマルセル(触り方が嫌なんだよね。おっぱいがない女だっているぞ)と、女言葉で言い直すジャンヌに違和感を感じて、っていうかむしろ嫌だった。「終わりよければすべてよし♪」みたいな雰囲気でフィナーレに突入したことに唖然としてしまった。いやいや、よくねーよ!と思いながらも、男役だらけのオラオラしたロケットにニヤニヤしていたんだから、チョロくて嫌だわ。黒燕尾も素敵だったし・・・。役者のファインプレーに甘えて、脚本や演出の質が上がらないのは、なんとかして欲しいです。結局、啓蒙的な台詞もただのポーズだったんだなあと思ってしまった。お話の本筋は面白かったのになあ。

気を取り直して、以下、キャストやキャラクターについての感想。

珠城さんといえば、世界の新郎っていうか、結婚したい男役No.1じゃないですか。その珠城さんが、男装の麗人でっていうドリーム。一見さんお断り過ぎない?っていう充て書きだけど、楽しけりゃそれでいいんじゃ。初見は入れ替わりのタイミングがわからなくって、純粋に驚いたり、早着替えの多さに「すごい!」と興奮しました。コメディが出来る組って、いいよね。さくらちゃんとのお芝居も、新鮮で、がっつりラブな関係ではなかったけれど、笑えて良かったです。

さくらちゃんは、台詞回しが素敵!クレバーなガブリエルそのもの。往年の映画女優の吹き替えのような、大人っぽい声に魅了されました。お衣装も素敵だったなあ~~。でも、脚本的なキャラクターのブレがあって、演ずる方は大変だろうなあと思った。いくら気持ちが盛り上がったからといって、キスを迫っちゃダメだろう。

「2番手が一番格好いい現象」がここでも発生致しまして、シャルルめっちゃくちゃ良かった~~~!!おひげのれいこちゃんがただ格好いいっていうこともあるんだけど、それに加えて面白い。お願いソングのロングトーンもすごいし笑わせてくるし、「もうあなたがムーランルージュの舞台に立てば?」と言いたくなる(笑)いつかレット・バトラーやってください。待っています。

格好いい面白おじさんが多い『ピガール狂騒曲』ですが、足が長すぎるのも、もはや面白くなってしまうちなつ(鳳月杏)のウィリー。からんちゃんとのアドリブは笑いました。あと、ボリスとのやりとり(笑)

ありちゃん(暁千星)、ダンスはもちろん素晴らしかったんだけど、もうちょっとお芝居が観たかったなあと思うのは贅沢なのでしょうか。

おだちんはすごい。ボリスから目が離せなかった・・・(笑)なんであんなに綺麗なのに。こんなに面白いのだ風間柚乃よ。弁護士にしては踊れている方だと思うよボリス(笑)

もうちょっと、娘役の役があるといいなあ~と思いました。踊り子の海乃美月ちゃんも天紫珠李ちゃんもよかったけれど、その他大勢感があったので。

存在感があって好きだなあと思ったのが、彩音星凪くん。おとめを見たら、なんとびっくり!わたしとお誕生日が同じでした(6月21日生)こういうところに運命感じちゃうので、応援したいと思います(チョロ)


【観劇納め】

今年の宝塚歌劇観劇納めは、月組さんでした。本当はもっと通いたかったけれど、なかなか安心して劇場へ行ける状況ではなかった。年が明けてからも、この世界が健やかに美しく、輝いていますように。そして、来年もたくさん、夢と輝きの世界に会えますように。