すーぱーからしちゃんねる

からしがみたものをまとめたものです。

うちのエンタメ-その2-

【長いお休み】

コロナ禍で世の中大変なことになっている最中、過労で倒れた。世間様に申し訳ねえという思いを抱きながら、自宅療養中である。心身共に疲弊するくらいにバリンバリンに働いていたときとは違った環境で、やっと手にすることが出来たのが、本棚に飾られてきただけの文庫本たち。俗に言う積読というやつ。西加奈子村田沙耶香が好きで、文庫をぽつぽつと集めては、本棚に並べるだけだったここ数年間。ガツガツと貪るように本が読めるようになったのが本当にうれしい。好きだった本を読み返したり、自分の本棚の整理をして、新しい本を迎え入れたり、お気に入りの本棚に作り替えたり。
年末年始、帰省も旅行も控え、うちの中で過ごす方も多かろうと思います。そんな方の、本選びの参考になれば此れ幸い。と、はじめてのブックレビューをしてみます。



【こころ編】

「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる  「繊細さん」の本

■『「繊細さん」の本』武田友紀・著
本屋さんのエンド棚に平積みされているということは、めっちゃ売れているんだと思う。平積みされている本は、書店パトロールの時にちょろっと立ち読みするんだけど『うわぁ、コレわたしのことじゃん…』と思って、レジまで持っていくエネルギーが湧かなかった。だって、仮に自分が「繊細さん」だったとしても、自分はこれからも生きていかなくちゃならないわけだし、「だからなんだっつーんだ、このやろー」と思っていた(完全なる独り相撲)
倒れてから『読んでみるか』と思い立ち、おそるおそるページをめくってみると、自分のような感性(わたしはここまでじゃないなーと思うこともありつつも)が、どのような考え方や視点を持てば、限りなくストレスフリーに生きられるかが書かれていて、新たな叡智を得た気分になった。わたしは人見知りはしないけれど、人の好き嫌いが激しく、誰とでも仲良くなれるタイプではないと自己分析しているのですが、「繊細さん」の嫌いセンサーみたいなものが発動して、うまくやれないことが多々あるのだと思います。でも自称はしたくない!繊細アピールはしたくない!笑
「自分、面倒くさいんで」というタイプの人は、もしかしたら「繊細さん」かもしれない。人間関係で腹が立ちまくるのはどうしてなのか、この本が教えてくれました。そういう人におすすめ。


今日も明日も「いいこと」がみつかる 「繊細さん」の幸せリスト

■『「繊細さん」の幸せリスト』武田友紀・著
いやまた「繊細さん」の本買ってるじゃねーの。っていう突っ込みを、とりあえず自分でしておきますね。元気だった頃の自分は、概ねこのような生き方をしていたように思います。自分の感性に正直に、自分が「いい」と思ったものを最上位にしていた。この本を読んで、「どうやって自分を立て直したらよいか」のイメージがなんとなく掴めた気がします。
「ブログを書きましょう」って書いてあったので、これからも『すーぱーからしちゃんねる』を大切にしていきたいと思いました。
自分の感性を大切にして生きたい人におすすめ。


怠けてるのではなく、充電中です。 昨日も今日も無気力なあなたのための心の充電法

■「怠けているのではなく、充電中です。」ダンシング・スネイル・著/生田美保・訳
倒れてすぐ、身も心もよわよわに弱っていたときに手に取った本。イラストと文章が半々で、文字を追う目が滑ってしまう時でもかろうじて読むことが出来た。ああ、韓国の人も大変なんだなあ、しんどいんだなあ。と思うことが出来て、自分のしんどさがみみっちくて下らなくてちっぽけなものでもない、ということを感じて気楽になれた。バリバリ働きウーマンだった頃には『自分を変えろ!働け!気持ちを強く持て!』みたいな本ばっかり読んでいたので、『生きてるだけでいーよ』みたいなユルいメッセージに救われた。
身も心もよわりがちマンにおすすめ。


私は私のままで生きることにした

■「私は私のままで生きることにした」キム・スヒョン・著/吉川南・訳
「怠けているのではなく~」の近くに置かれていたので、一緒に手に取った本。ああ、やっぱり韓国の人もしんどいんだなあああ。と思った。こちらの方が文章多め。『自分らしく生きる』って、難しい。でも、きっとそれが幸福への道だし、人間が目指す人生だよなあと思った。
道に迷ったらまた読みたい本。


セルフケアの道具箱

■「セルフケアの道具箱ーストレスと上手に付き合う100のワークー」伊藤絵美・著/細川貂々・イラスト
ストレスケアについて、心理学に基づいたより本格的で具体的な方法が書かれています。わたしがしんどくなったとき、実際に行っているワークが『好きな人、好きだった人、あこがれの人の名前をかき集め、イメージする』です。ご贔屓、好きなアーティスト、タレント、俳優、アニメのキャラクター、スポーツ選手…。ひとりひとりを思い出してゆくと、気持ちが落ち着きます。時に、勇気も湧いてきます。
心へのダメージが気になる方におすすめの本。



西加奈子編】

i (ポプラ文庫)

■「iーアイー」西加奈子・著
わたし、西加奈子の感受性と、登場人物の自意識がとてもとても好きなんですね。この作品の主人公も、ひとつひとつの出来事をスルーできない感受性の持ち主で、ひとつひとつに傷ついて意味を求めながら生きている。そして、世の中の出来事をこんな風に切り抜いて、作品にしてゆけるのは西加奈子だけよねえと思う。激動の時代を生きている実感がある今だからこそ、感じるものがあるんじゃないかと思います。これだけ感度の高い世界観を構築していながら「やったるで!」という力強さを感じさせてくれる西さんの大阪女らしい発破が大好き。


白いしるし (新潮文庫)

■「白いしるし」西加奈子・著
うわああああああ!!これこそ恋愛!!これこそ恋だ!!と、忘れかけていた、使っていなかった感覚が覚醒した。わたしはラブストーリーがあまり好きじゃなくて、ただ恋愛してるだけの作品が苦手なんですけど、この作品は「ただ恋愛してるだけ」なのに、ゾッとするし甘い気分にもなるし、全裸で寒空の中「恋だーー!!」と叫びながら走り出したくなるような気持ちになりました。甘くて苦いだけじゃない。魚の臓物みたいな味もお好きな方には是非読んで頂いて、全裸で叫びたくなる気分を共有できたらうれしいです。


窓の魚 (新潮文庫)

■「窓の魚」西加奈子・著
ただただ、この余韻。読後の余韻。ミステリーっぽい雰囲気があるんですけど、ミステリーじゃないんですよ。とても弱い人間たちの、繊細でか細い糸で結ばれて成立している恋愛模様って感じです。
読後の贅沢な余韻に浸りたい人におすすめ。



村田沙耶香編】

コンビニ人間 (文春文庫)

■「コンビニ人間村田沙耶香・著
芥川賞受賞作。あまりにも有名ですが、あらすじを読んで、共感してしまいそうだったから、危険図書扱いしていたのですが、読んでしまった!妹に泣かれる場面に、心当たりがありすぎてお風呂で溺れるかと思った(湯船に浸かりながらの読書が大好きです)面白かったけれど、やっぱりしんどかったですね。めちゃくちゃ繊細で、感受性も高く、世の中を真っ直ぐに冷静に見ているのに、絶望的にズレている。読んだ後、頭を抱えてしまった。これを面白おかしく読める余裕がなかった。
はあ、もうどうしよう。


殺人出産 (講談社文庫)

■「殺人出産」村田沙耶香・著
短編集。表題作は、ディストピアSFっぽい雰囲気と、ラストシーンの美しさが印象的で、結構好きだな、って思った。『死に人』を弔うため、全身白装束で葬儀に向かう場面が、贔屓の卒業を見守る宝塚ファンみたいでなんか面白かった。


授乳 (講談社文庫)

■「授乳」村田沙耶香・著
短編集。表題作の「授乳」はあまり刺さらなかったのだけど、村田沙耶香の描く少女の性欲って、とても加虐的で、そういう匂いのする女の子が実際にクラスに居たことを思い出してハッとする。他二編のうち「コイビト」がクレイジーで好きでした。


しろいろの街の、その骨の体温の

■「しろいろの街の、その骨の体温の」村田沙耶香・著
ものすごくエグい青春小説だった。女子の狂暴な性欲と醜い自尊心を、ここまで主体的に、しかもリアリティをもって書けるなんて、本当に文芸に対して真摯じゃないと出来ない。スクールカーストがしんどいだけの話かと思ったら、人間の醜さむき出しでエグくて、でもその成長は美しくて、しんどかった。



【その他の作家編】

JR上野駅公園口 (河出文庫)

■「JR上野駅公園口」柳美里・著
話題作だし、と思って手に取った本。報われない救われない、そんな気持ちの人ばかりではないと思うけれど。そう思いたいだけなんだろうな。柳美里の作品を読むのは久しぶりだった。学生以来だったと思う。


星がひとつほしいとの祈り (実業之日本社文庫)

■「星がひとつほしいとの祈り」原田マハ・著
短編集。表題作は、とてもロマンチックなお話でした。そしてほんのりファンタジー。他編では、いろんな境遇の女性たちが描かれています。最期の「沈下橋」が好きでした。


美しい星 (新潮文庫)

■「美しい星」三島由紀夫・著
文体はとても美しく、現代批判に充ちた思想が飛び交う作品なんだけど、設定もストーリーも、完全に今日のラノベじみていておかしみがあった。上京してきた連中に『鰯売恋曳網』について「三島由紀夫みたいな流行作家が書いた芝居なんて見る価値ない」的なことを言わせててウケた。



【うちのエンタメ】

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ポメラニアンになりました。

特に文芸作品をエンタメって言っちゃっていいのかなあと悩みましたが、わたしにとってエンタメとは「自分を楽しくさせてくれるもの」だと思っているので、まあいっか。って感じです。
あと、この記事はポメラで書いた。学生時代、才能あるお友達が折りたたみ式のポメラを使っていて憧れたものでした。通知が入ったりしないので、文章を書くことだけに専念できていいですね。あとは、予測変換がないので、自分の文章の癖がいい意味でも悪い意味でも生きるのがいいな。
元気な日には本を読んで、またこんな記事が書けたら楽しいなと思いました。





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